その結婚、ちょっと待った!

 俺は菊池圭輔。幸せの瞬間が修羅場になった事で困惑している男だ。

 俺は今、結婚式に新郎として参加している。

 結婚相手は会社の同期の子の真鍋友美。俺からアタックをして、この間プロポーズしたのだ。

 そして今、俺達は教会にいる。

 神父がこちらに話しかける。

 「新郎は、新婦を健やかなる時も、病める時も、豊かな時も、貧しい時も、あなたを愛し、あなたをなぐさめ、命ある限り、真心尽くす事を誓いますか?」

 「誓います」

 「新婦は、新郎を健やかなる時も、病める時も、豊かな時も、貧しい時も、あなたを愛し、あなたをなぐさめ、命ある限り、真心尽くす事を誓いますか?」

 「誓います」

 「では、誓いのキスを」

 そして、俺と友美が唇を近づけようとした時。教会に1人の叫び声が響いた。

 「その結婚、ちょっと待った!」

 俺が声の方に向くと、そこには、優男風の男がこちらを睨みつけていた。

 「だ、誰だ!」

 そして、男はこちらに近づいてきた。

 「友美さん!やっぱり、僕はあなたを諦められません!」

 「だ、誰だ!お前は!」

 「僕の名は、岩城和人!友美の元カレだ!」

 「も、元カレ?」

 「あぁ、そうだ!数年前、僕は仕事の都合で外国に行く事になったから別れたんだ!でも、友人から友美が結婚する事を知って、外国から戻ってきた!友美!僕とまた、付き合ってくれ!」

 俺は困惑した。まさか元カレが来るなんて思ってもいなかったからだ。というより、友美に元カレがいる事に驚いたのだが。

 「和人くん…」

 「ちょっ、ちょっと、友美!なんで、元カレの方に惚れてんの!?」

 「友美!俺とまた、付き合ってく」

 「ちょっと待った!!」

 「!?」

 俺達3人は驚いた。

 そこにはサングラスを掛けた男がこちらに迫ってきた。

 「だ、誰だ!お前!」

 「誰です?」

 「お前らこそ誰だ!俺はな!友子の夫になる筈だった男だ!」

 もう訳がわからなかった。すると、友子が口を開いた。

 「あなた…誰ですか?」

 そう、俺だけではなく、友子も知らないのだ。

 「えっ!?俺を知らないのかい?俺は梶正明。覚えてるかい?あの十年前の事を!」

 「あっ!もしかして、梶くん?」

 「あぁ、思い出してくれたか!十年前、怪我をした俺に、消毒と絆創膏を貼ってくれたじゃないか!?」

 「へ?」

 奴の言っている事はどうでも良かった。

 「俺は、あの時の事を忘れていない!だから、僕と結婚」

 「ちょっと待った」

 「!?」

 その言葉を言ったのは、まさかの神父だった。

 「まさか、友美、私とは遊びだったのかね?」

 「え?」

 もう状況がカオスだ。まさか、外国人とも付き合っているだなんて。

 「友美、こんな男ども達と決別して、海外に行こう。パパは上院議員だ。だから…」

 「いや、神父さん。私は…この人と結婚するの!」

 すると、友美が俺に抱きついてきた。

 「と…友美…」

 「私はね…この人と生涯を共にするわ!だから、あなた達!もう、私達には近づかないで!」

 「友美…」

 俺は泣けてきた。まさか、こんないい人を貰うなんて。夢にも見なかった。

 「じゃ…じゃあ…改めて、誓いのキスを」

 改めて、俺と友美は唇を近づけようとした……………その時!教会に女の声が響いた。

 「その結婚、ちょっと待った!」

 俺達が声がする方を向くと、そこには、見たことがある顔がいた。

 「圭輔さん!やっぱり、私…諦められない!」

 「しょ…翔子…」

 そこには、数年前、別れたはずの元カノ、翔子がいた。





 その後、修羅場になったのは言うまでもない。

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