友人の友人

 俺は藤宮巧。ちょっとした友人がいるサラリーマンだ。

 その友人の名は柴田瑛太。俺が勤めている会社の同僚で、趣味の映画鑑賞が合い、ちょうどいい付き合いである。

 そんなある日の事、休憩室で柴田が話しかけてきた。

 「なぁなぁ」

 「ん、どうしたよ」

 「今度さ、映画見ない?」

 「まぁ、いいけど」

 「その代わりさぁ、3人でいい?」

 「3人?それってどう言う事?」

 「あぁ、今度さ、同じく映画好きの友人が、こっちに来るんだよ。だから一緒に行っていいかなぁって…」

 「……別に良いけど…」

 「おっ!ありがとう!じゃあ、今週の土曜日の、倉富駅の4時半ね」

 「おう、わかった」

 俺はその場を離れ、自動販売機で缶コーヒーを買い、それを飲みながら思った。

 (これって…いわゆる友達の友達ってやつだよなぁ…ううむ…何かアレだよなぁ…)




 それから土曜日の4時半、俺は倉富駅の入口で待っていると、2人の男がこちらに向かって来た。

 こちらに来ているのは、柴田と、その友人だ。

 「お待たせ。待った?」

 「いやいや、待ってねぇよ。それで、その人は?」

 すると、柴田の友人が口を開いた。

 「どうも、いつも柴田がお世話になっています。佐伯隆太郎と言います。宜しくお願いします…」

 「まぁ、佐伯は良い奴だから。よろしく」

 「お、おぉ…よろしく…(なんか、初々しい奴だなぁ…)」

 俺達は映画館に向かい、映画を見た。

 無論、映画は面白しろかった。面白かったんだが…佐伯に集中してしまい。あまり映画に夢中になれなかった。(勿論、佐伯が悪い訳じゃ無いのだが)

 俺達は映画館を出ると、感想を言い合った。

 「どうだった、アレ!」

 「あぁ、面白かったなぁ。まさか、ヒロインが黒幕だなんて思ってもいなかったよ。まぁ、伏線がちゃんと張っていたから分かってたけど」

 「しかも、次回作出るんだってよ!すげぇよな!」

 「そ、そうだな…」

 俺は微妙な事しか、言えなかった。

 それから数分後、ある居酒屋に入った。

 「2人共、何飲む?」

 「ビールでいいわ」

 「俺も」

 「すいませ~ん」

 すると、店員が来た。

 「はい」

 「ビール3つで」

 「はい。注文繰り返します。ビール3つですね」

 それから数分後、3杯のビールが届いた。

 「それじゃあ、かんぱ〜い!」

 俺達はジョッキを当て、ビールを飲んだ。

 それから俺達はツマミを頼み。雑談をし始めた。

 「それでさぁ、佐伯、そっちではどうよ」

 「いやさぁ、部下のいじりがひどくてさぁ…」

 「へぇ…」

 「柴田の方は?」

 「うちもさ、部長が嫁自慢、子供自慢しててさぁ、お前は自慢できることないないだろ!って突っ込みたくなるんだよ」

 「はぁ…」

 俺は2人の相打ちしかできず、どんどんと時間は過ぎていった。

 それから数分後、柴田が席を立った。

 「あっ、スマン。トイレ行って来るわ」

 「おう」

 そして、俺と佐伯だけが残ってしまった。

 「ど、どうも…」

 「そ、そういえば、名前聞いていませんでしたね。お名前は…」

 「藤宮と申します…」

 「ふ、藤宮ですか…いい、お名前ですね…」

 佐伯は作り笑いでこちらを向く。

 俺は思った。

 (気まずい…気まずすぎる!)

 そう、友達の友達といる時の空間ほど、気まずいものは無いのだ。

 「あの…」

 「はい…」

 「藤宮さんの好きな映画のジャンルって何ですかね…」

 「えっと…SFかな…」

 「SFですか…SFって良いですよね…なんか…こう…近未来的なというかなんというか…」

 「えぇ…はい…(早く帰ってきてくれ!柴田!)」

 しかし、俺の心の叫びも虚しく、柴田はまだ来なかった。

 「…………藤宮さんって…好きな映画ってなんですか?」

 「えっと…『ジャックローの冒険』…ですかね…」

 「へぇ…そうですか…僕は、『気まぐれ猫』ですかね…」

 話すこともなく、また数分が経ち、やっと、柴田は戻ってきた。

 「お待たせ…って、どうしたの!そんなクタクタになっちゃって」

 「あぁ、スマンスマン…」

 「じゃあ、もうそろそろ帰るか」

 そして、俺は帰路についていた。

 「はぁ…友人の友人ってのは難しいなぁ…今度会うときは、しっかりしないと…」

 すると!電話が掛かってきた。相手は柴田だ。

 「今日はゴメンな。俺の友人連れてきちゃって」

 「いやいや、いいさ。別に」

 「それでさぁ、また明日、3人で映画見ない?」

 「へっ?」

 「実は佐伯が映画のチケットを取っちゃってさ。3人分。だから、また明日来てくんない?」

 「わ、わかった…」

 「そんじゃあ、また明日、倉富駅、4時半で」

 そして、柴田は電話を切った。




 家に着き、俺はテレビを付けた。すると、ちょうど、テレビではとある大企業のCMが入っていた。そして、俺は驚いた。

 何故なら、そこにはガッツポーズをして、会社の思念を言っている佐伯がいた。

 「我が社では、利益だけではなく、会社内での仲の良さが売りです!」

 俺は開いた口が塞がらなかった。

 「俺、こんな奴が友達の友達だったのか…」

 俺はその場に取り残されたのようにその場に固まっていた。

 次の日、俺は駅に向かうと、柴田と佐伯ともう1人の男がいた。

 「えっ、3人じゃ無かったっけ…」

 「スマン、佐伯が4人分のチケット予約しててさ、間違えてたわ、すまん!」

 「それで、その人は…」

 「どうも、佐伯がお世話になってます。難波和馬と言います!」

 「この人、佐伯の友人なんだわ」

 「へ、へぇ…(友人の友人の友人かよォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!)」

 「ということでよろしく…って、藤宮、オーイ、藤宮、どうしたんだよ、急に固まっちゃって」

 俺は友人の友人の友人という事により、俺はその場から動けなくなっていた。

 (あぁ、穴があったら入りたい……………)

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