カカシ



■十年前のカカシ

 当然、洋は航の船に行くもんだと思われてたが、何でか洋を引き取ったのは、カカシの爺さんだった。

 つっても知らねえわな。魚々島で一番歳食ってるジジイさ。

 こいつも洋の同類でな。片足でろくに泳げねえから、周りに食わせてもらってたクチだ。こいつは頭領と仲がよくてな。昔の恩があるとか言ってたが、甘やかすから陸亀にもならねえ。

 大人は手土産もって、夜な夜なカカシの船に行くのさ。

 ありゃあ酒かバクチだな。オレもこの歳になって、やっとわかったわ。

 オレらガキや若い衆は、カカシを嫌って近づきもしなかったが、航は例外だった。カカシのちっこい船に入り浸ってる時期もあったな。最初から洋を押し付ける腹づもりだったのかもしれねえ。

            ──【番外】松羽 烏京 —陸亀、かく語りき— 其の二

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る