道々の輩(ともがら)とは


🔳道々の輩(ともがら)

網野史観を下敷きにしている。道々の者とも。



 道々の者、道々のともがらとは、古来より日本に存在する漂泊民の総称である。

 職人歌合しょくにんうたあわせに残された輩の職業とは、例えば鋳物師いもじ、鍛冶、巫覡ふげき、陰陽師。遊女、山人、猿楽、傀儡くぐつ師。道々とは職人としての道、彼らの住まう路を意味する。いわば和製のジプシーである。

 非農民の職能である彼らの起源は諸説あるが、封建社会において法の支配を拒み、時の権力に従わず在り続けたのは共通している。天皇のみを頂きと認め、法の届かぬ天領や市井と交差する辻端で商売を行う。政府に疎まれ、民には差別され、人外として扱われることも多かった。表の歴史に彼らの名が乏しい所以ゆえんである。 

 明治以降、道々の輩は徐々に減った。戦後には加速度的に減った。社会構造が激変し、西洋文明が押し寄せ、輩はおろか武士すら姿を消した。文化も誇りも、魔法のような独自技術も、その多くが失われた。

 忍野は思う──確かにそれは、歴史の必然ではあった。

 しかし、彼らは絶滅などしなかった。

              ──【開幕】《神風天覧試合》、始まりの儀 其の五

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