🔳┳プロフィール・洋


魚々島一族の代表。

魚々島について。経歴。住居。


🔳魚々島について

日夜、鯨や鮫と戦い続ける、幻の海洋民族。《海坊主》とも。

道々のともがらでも最強の一族として、山の畔に並ぶ存在。


「前にも言ったが、魚々島ってのは船上で生活する道々のともがら、その末裔だ」

 給湯室で湯を沸かしながら、洋はコーヒーサーバーを用意する。

「日本列島、津々浦々を回遊して、陸には必要最低限しか接触しない。

 漁じゃなく力のためにしてきた筋金入りの戦闘民族、それが魚々島だ。

 《海坊主》なんてあだ名がついてた時代もある」

                    ──【序幕】魚々島 洋 ―海と山と―


「海の生まれだからな」

「漁師か?」

「似てるが違う。魚々島は海に住んでるんだ」

「住むて。住んでどうすんねん」

「鍛えるんだよ。生まれた時から山籠もりならぬ《海籠り》さ。

 先祖代々何百年も、サメやクジラを相手にしてな。

 日本近海を回遊する知られざる海洋民族。それが《魚々島》だ。

 荒唐無稽な話だし、信じなくても別に構わねぇけどな」

                ──【番外】魚々島 洋 —潜窟の夜— 其の三


■元寇を退けた伝承

 鎌倉幕府は元軍に劣勢となるも、奇跡的に二度の神風が吹き、勝利する。

 だが少なくとも、オレらに伝わる歴史はそうじゃない。

 神風なんざ、ちくとも吹いちゃいなかった。

 元軍を潰したのは、海上の船を夜襲した魚々島と畔だったのさ。

 証拠もねえ、一族の口伝だけどな」

                    ──【序幕】魚々島 洋 —海と山と—


■昔から雑

 戦いになったのは、たまたま鉢合わせたってだけだ。

 大昔から雑なんだよ、魚々島は」

                    ──【序幕】魚々島 洋 —海と山と—


■初代の《神風》

 歴史的な勝利だったが、歴史に記されることはなかった。

 幕府、寺社、道々の輩、全員に都合が悪いんだから当然だ。

 影働きは《神風》の手柄になり、寺社がかっさらった。

 だが、魚々島と畔の武名は時の天皇まで届き、《神風》の称号を拝領した」

「もう一つの《神風》というところですね」

「こっちが元祖なんだよ。少なくともオレらの歴史じゃな」

                    ──【序幕】魚々島 洋 —海と山と—


■畔と血縁関係

 何より互いの強さを認めた結果、両者は交わることにした」

「交わる……試合とかですか?」

「文字通りの意味さ。

 魚々島は男系民族で、畔は女系なんだぜ。

 お互いを認めりゃ、こた一つだ。

 定期的に交流の場を設けて、子作りに励むんだ。

 試合もやるが、それもつがいの品定めの為だな」

「えらく脳筋な婚活ですねえ」

                    ──【序幕】魚々島 洋 —海と山と—


■「敵は魚と思え」

 魚々島じゃガキの頃から、『敵は魚と思え』って教えられんだ。

 人なんざ手足の生えたマグロってなもんだ。

 血も内蔵も毎日触ってりゃ慣れちまう。それが《魚々島》なんだよ」

                    ──【序幕】選抜、魚々島 洋 其の五


■水かきがある

「そう言えば、洋殿には《水かき》がありませんね」

 《魚々島》の民は、手足に水かきがあるという。忍野の指摘はそれだ。

「ありゃあ陸に上がると、一年くらいで消えちまうんだよ。

 海に戻れば、また生えてくるらしいがな」 

                         ──【序幕】選抜、畔 蓮葉


■武器と情報は畔頼み

 海という狭い世界で生きる魚々島が、道具や武器、情報の入手を畔に頼るようになって久しい。特に情報に関しては、あらゆる組織に一人はいるという畔の眷属のネットワークなしでは、目鼻も効かないのが実情だ。

                  ──【開幕】《神風天覧試合》、始まりの儀


■両利き

「何故、左手を使わなかった。

 魚々島は全員、両利きのはずだ」

                 ──【後幕】魚々島 洋 VS 松羽 烏京 其の四


■何を知られようと勝つのが魚々島

・「敵は魚」同様、洋の口癖。


「ああ、オレの情報はいくら回してもいいぜ。

 何を知られようと勝つのが魚々島だからよ」

 手を上げ、立ち去る洋の背を見ながら、文殊はしばし動けなかった。

                ──【幕間】魚々島 洋  ー千客万来ー 其の二


🔳経歴

五年前、魚々島 から陸に上がる。

四年間を東北で過ごし、殺し屋稼業で軍資金を貯めた。


「一年待たされた、洋くんのですね」

「陸に上がってからは五年だ。それでもギリ間に合ったってとこだが……」

                ──【序幕】魚々島 洋 ─海と山と─ 其の二


 金があるのは嘘ではない。《天覧試合》に備えて、大阪に来るまでの四年間、合法非合法問わず貯めた軍資金だ。蓮葉の面倒を見ながらでも、数年は遊んで暮らせる額である。

               ──【序幕】魚々島 洋、畔 蓮葉を調える 其の二


「大阪に来る前は殺しで稼いでた。二桁は越えてるぜ。

 人が殺せるかってテストなら、実績には十分だろ。

                    ──【序幕】選抜、魚々島 洋 其の五


🔳住居:廃スタンド

洋と蓮葉のアジト。

一年前、《審判邪眼》の占拠から奪還したことで、文殊との因縁が生まれる。

スタンドとしては大きくないが、工夫して生活している。


 そこはガソリンスタンドだった。個人経営なのか、さして広くはない。四角に張り出した屋根、中央に太い円柱、給油機は二つ。ともに錆と埃が目立ち、長く人の手が触れた気配がない。何より三方を囲う工事用フェンスが、この店の状況を物語る。廃業後に放置された建物。ガソリンスタンドの廃墟であれば納得がいく。

                    ──【番外】魚々島 洋 —潜窟の夜—


■住所

 洋たちが住む廃スタンドは、大阪北港に位置する。人工島に渡る橋を除けば、三方を海に囲まれた出島であり、一帯はほぼ工場地帯だ。住人が少ないため電車の路線はなく、バスは一時間に一本。コンビニすらない都会の僻地である。

                   ──【序幕】魚々島 洋、畔 蓮葉を調える


■洗車機の倉庫

「なんせガスタは手狭でな。

 水回りの道具はこっちに置いてんだ」

 見れば、洗濯機や乾燥機といった白物家電だ。給水を確保した倉庫として使っているようだが、錆び切った洗車機の中に最新型の家電が並ぶ景色はなかなかシュールなものだった。

                         ──【序幕】選抜、畔 蓮葉


■台所は手狭

 台所は給湯室を改造したもので、見るからに手狭だった。冷蔵庫や棚を廊下に出してなお、人二人並ぶのがやっとだ。

                         ──【序幕】選抜、畔 蓮葉


■蓮葉抜きの内緒話は外で

 もっとも、さして問題はなかった。鷹揚な気質の兄は、知られて困るプライバシーもないと開き直り、従順な気質の妹は知り得たことを表に出さない。蓮葉の謎に限ってだけは、忍野とそうしたように秘密にすると決めたが、それ以外では不便もなく、洋は蓮葉と暮らしていた。選抜試合の凄惨な顛末の後ではなおのこと、片時も離れなかった。

                  ──【開幕】《神風天覧試合》、始まりの儀

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