第38話 決闘

側近達はクレシーの指示を待っていた。


「それよりも大勇者クレシー様??ジャン・リヒターにはどう対応すればよろしいですか??」


「そんなもんこっちが聞きたいわ??この大勇者クレシー様はどうすればいいんだ??おい!!お前達、何かいい手を考えろ!!」


クレシーは具体的な解決策を持っておらず、側近達に知恵を絞らせたのだった。


すると一人の側近がこう言ったのだった。


「そうだ、ホルキス王国軍に加勢を頼んではどうでしょうか?」


「そうだ、あそこにつ立っている王国軍に攻めさせればよいのだ。よしすぐに王国軍にこの大勇者クレシー様の加勢をするように伝えてこい。」


クレシーはすぐに王国軍に伝令を送ったのだった。


クレシーは自分が命令を出したので王国軍がすぐにも加勢にくると考えていたが、クレシーの期待は裏切られたのだった。


「大勇者クレシー様大変です。王国軍はこれよりみんなで弁当を食べるのでクレシー様への加勢はできないとの事です。」


クレシーが大声で叫んだ。


「こんな一大事に弁当だと??ふざけやがって!!」


実はホルキス王国軍ははなからジャン達と戦うつもりはなかったのであった。


ホルキス王国軍はクレシーに命令されて渋々やってきただけの上に、ホルキス王国軍の指揮官であるバルバス伯爵はジャン達に全く非が無い事をよく理解していた。


なので王国軍はクレシーの使者がきても、弁当を食うから加勢できないと嘘をついてクレシーの使者を追い返したのであった。


そうこうしている間にもジャンは隊列を突破していき、クレシーの本陣近くまでやってきていたのだった。


「あそこがクレシーの本陣だな!!」


ジャンが大きな声でクレシ-の本陣に向けて叫んだのだった。


「クレシー出てこい!!ジャン・リヒターが来てやったぞ!!」


一方のクレシー達はパニックになっていた。


クレシーはまさかジャンが自分の本陣まで突破してくるとは露ほどにも考えておらず慌てふためいたのだった。


「ヒエー??まさかここに来てしまうとは!!」


「10列の備えを突破してここまで来たというのか!!ジャン・リヒターなんて奴だ!!」


「ここまでにいったい何人を配置していたと思っているのだ??強すぎるだろうジャン・リヒター!!」


すると側近の一人がクレシーにこう言ったのだった。


「大勇者クレシー様??こうなったらジャン・リヒターと決闘をお願い致します。」


クレシーが驚いた。


「なんだと??」


「恐れながら今のジャン・リヒターは手強くございます。ジャン・リヒターに敵う者がいるとすれば大勇者クレシー様を置いて他にはいないかと。」


「そうだな、大勇者クレシー様に決闘でジャン・リヒターを倒してもらえばよいのだ。大勇者クレシー様がジャン・リヒターに負けるわけないからな。」


「確かに、そうだな。」


そして側近の一人が勝手に本陣の外に向かって言ったのだった。


「ジャン・リヒター??これより大勇者クレシー様がお前と決闘を行う!!お前とてクレシー様とは戦いたいだろう??だから少し時間をよこせ。」


本陣の外からジャンの声が返ってきた。


「クレシーと決闘をしろだと??よしいいだろう!!さっさと支度をして出てこい。」


ジャンの声を確認した側近達がクレシーの装備の準備を始めたのだった。


「ささ、大勇者クレシー様!!すぐに装備品の準備を致します。」


クレシーの側近たちはクレシーに決闘をしてもらう事で事態を打開しようと考えていた。


だが当のクレシーはジャンの凄まじい活躍を見せつけられて明らかにビビッていたのだった。


「なあ?別にこの大勇者クレシー様が戦わなくてもいいんじゃないか?」


「なにを仰います!!大勇者クレシー様の力をあの調子に乗っているジャン・リヒターに知らしめてやるべきでございしょう。」


「ジャン・リヒターをこれ以上調子に乗らせてはならないかと。」


クレシーは側近達に言った。


「だが、ジャンリヒターに勢いがあるのだろう?この大勇者クレシー様があんな竜にまたがる無能に負けることなど、まずありえない事だがもしかしたら負けてしまう事もあるかもしれん。」


「そんな事はありえません。ジャン・リヒターという男は大勇者クレシー様の足元にも及ばない無能なのでございますよ。どんなやり方かは分かりませんが、何かインチキをしていたのでしょう。たくさんインチキをしてあんな活躍ができていたのでしょう。」


これを聞いたクレシーは安堵したのだった。


「そうか、そうだよな!!ジャン・リヒターのような竜にまたがるだけの無能があんな大活躍ができる訳がない。ジャン・リヒターがインチキをしてあんな活躍ができたというなら納得がいく。」


ジャンがこのグリーロ川の会戦で活躍できたのは全てはジャンの実力によるもので、ジャンはインチキなどまったくしていなかった。だがクレシーや側近達はジャンの実力を見誤って、インチキをして活躍したという考えに至ってしまったのだった。


「ですが大勇者クレシー様にはジャン・リヒターのせこいインチキなど通用しません。」


「うむ、この大勇者クレシー様の前ではインチキなど通用しない。この大勇者クレシー様の実力が高すぎてインチキなどすぐに見破ってしまうからな。」


「その通りでございます、大勇者クレシー様!!大勇者クレシー様は世界最強で最高の実力を持っておられます。大勇者クレシー様がジャン・リヒターに負ける要素などどこにもないのです。」


クレシーは高らかに笑うと再び自信を取り戻したのだった。


「よし!!これより大勇者クレシー様がジャン・リヒターを軽やかに倒してやるとしよう!!この大勇者クレシー様の優雅な戦いぶりをちゃんと見ておけよ!!」


「はっ!!」


クレシーは意気揚々と装備を整えて、そのままジャンの待ち受ける本陣の外へと出たのだった。

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