第36話 作戦会議
俺達はその日の夕刻、冒険者ギルドで作戦会議を開いたのだった。
さきほどのクレシーの魔導通信を受けて、団長やテリーゼ姫も冒険者ギルドに駆けつけてきたのだった。
「クレシーがグリンダムに攻め込むって言ってるけど、本気かな?」
「恐らく本気じゃろうな。あの後すぐに何人かにホルキス王国との国境に偵察に出てもらったが、迷いの森から国境の町カリーナに向けて冒険者達が向かってきておるそうじゃ。向かってきている冒険者の総数はおよそ5千人と報告してきおった。」
「ならやっぱりクレシーの野郎は本気ですね。カリーナはそんなに大きな町ではないし、冒険者ギルドもないから、普通なら冒険者達が5千人も大挙して移動する理由がありませんからね。」
「しかし、何で冒険者達は迷いの森から移動してきてるんですか?」
すると団長に代わってテリーゼ姫が俺に答えてくれた。
「それは私からご説明します。勇者クレシーは3週間前からホルキスの冒険者達を総動員して迷いの森の攻略を行っていたのです。そして勇者クレシーの命令でそのままカリーナに移動しているようです。」
「実は一つジャンさんにお話ししておかなければならない事がございまして。」
「なんですか?」
「それがクレシーがホルキス王国軍1万を派遣するようにお父様に命令を出してきたのです。」
「王国軍に援軍を出すように命令してきているんですか?」
「はい、そうです。」
ナタリーがみんなに尋ねた。
「それってまずくない?」
「非常にまずいのう。王国軍が援軍を出すとすればクレシーの率いる冒険者達と合わせると1万5千になってしまうからのう。」
するとテリーゼ姫が俺に頭を下げたのだった。
「ジャンさん、何もできずに申し訳ありません。」
「いやテリーゼ姫の責任ではありません。気にしないでください。」
テリーゼ姫は頭を上げて俺に言った。
「ジャンさん、ありがとうございます。」
「ねえ?ところで私達はどれくらいの数を集められるの?」
「グリンダムの冒険者ギルドに所属する冒険者達が400人を少し超すぐらいの人数、そして竜騎士団の人数がおよそ100人。両方合わせてなんとか500人。これがグリンダム側が用意できる最大戦力。」
「対するクレシーの軍勢はホルキス王国軍と合わせて1万5千じゃ。」
他の冒険者達も同じ意見のようだった。
「たった500人でどうやって1万5千人に勝てるって言うんだ?」
「一人当たり30人倒さなきゃいけないんだぞ??勝てるわけがない。」
「こんなの無理だ、死に行くようなもんじゃないか。」
だが俺は焦らずにみんなに言った。
「みんな!!落ち着いてくれ!!確かにクレシーが連れてくる人数は多い。だけどクレシーが引き連れている人達はみんな嫌々クレシーに従っているだけだ。とてもではないがクレシーが率いている冒険者達の戦意が高いとはとても思えない。一人一人の質なら間違いなく俺達の方が上だ。」
俺はみんなに続けた。
「それに今クレシーの奴からグリンダムの人々を守れるのは俺達だけだ。みんなで守ろうぜ、このグリンダムを!!あんなクレシーなんかには絶対に好き勝手させちゃいけない!!」
ソフィア達もみんなを励ましたのだった。
「そうよ、みんな!!せっかくジャン様があのラズバーから私達を解放してくれたのに、今度はクレシーに怯えるの。大丈夫よ!!私達はグリンダムの英雄ジャン様がいるのよ!!絶対に負けたりはしないわ。」
「そうです。私達にはジャン様がいるんです。クレシーに負けるなんて絶対にありえません!!」
すると冒険者達の空気が変わったのだった。
「そうだ俺達にはグリンダムの英雄がいる。クレシーなんかに負けるはずがねえ!!」
「ジャン様がいれば、私達は負けないわ。」
そして冒険者達の動揺は収まったのだった。
「ではジャン?どこでクレシーの軍を迎え撃つべきだと思う??」
「都市国家であるグリンダムの国土はそれほど広くありません。それにクレシーはグリンダムの人々を皆殺しにすると息巻いていますからグリンダムに近づけるわけには絶対にいきません。となるとクレシー軍をグリーロ川のラインで迎え撃つしかありません。」
クレシーの野郎をグリンダムの町に近づけるのはもってのほかだし、グリーロ川を越えた先には竜騎士団の本部があるハミスブルク城もある。
となればグリーロ川での迎撃するしかないと考えていた。
「うむ、確かにグリーロ川のラインでクレシー軍を迎え撃つのが最善じゃな。」
「団長、俺に先陣を切らせてください。突破口を開いてませます。」
「それは構わんが、大丈夫か?ジャンでもさすがにきつかろう?」
「これぐらいならどうって事はありませんよ。それにクレシーの野郎が向こうからきやがったんです。今までのお礼をたっぷりしてやらないと。もちろんホルキスの冒険者の人達にはちゃんと加減はします。」
「うむ、分かった、では先陣はジャンに任せる。ジャン頼むぞ!!」
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