第35話 宣言

ロスタル塔の事件から数日後、俺はナタリーやミーシャと共に冒険者ギルドにやってきていた。


そしてソフィアやレイチェルと話をしていた。


「レイチェル?もう大丈夫なのか?」


「はい、英雄様、あの時は助けて頂いてありがとうございました。もう体調も戻りました。」


レイチェルは俺の事をいつも英雄様と呼んでいたのだ。


「別にもうそんな堅苦しい言葉を使わなくてもため口でいいぞ。俺もレイチェルって言ってるんだしな。」


するとレイチェルは慌てた様子で俺に言った。


「そんな、英雄様にため口だなんて滅相もありません。英雄様に助けて頂きましたし。私の事は呼び捨てやため口で全然構いません。でも英雄様は英雄様と呼ばせてください。どうかお願いします。」


レイチェルはそう言うと頭を下げたのだった。


レイチェルがそれでいいと言うのなら、まあ仕方ないか。


とはいえみんなに英雄だの様づけされるのはやっぱりまだ慣れないなと思っていた。


「ねえレイチェル?私はあなたを心配してたし、無事に戻ってきてくれたくれた事は嬉しいわ。でもジャン様と結ばれたいとかまさか考えてないよね??ジャン様と結ばれるのは他ならない私だからね??そこはちゃんと理解しておいてよ。」


するとレイチェルはなぜか顔を真っ赤にしてソフィアに言ったのだった。


「英雄様と結ばれたいだなんて、そんな大それた考えはもってません。」


「ならいいけど。」


「ソフィアさん、ジャンの彼女になるのは私ですよ。そこもちゃんと理解しておいてくださいね?」


ソフィアが怖い顔でマリーヌが言った。


「だからマリーヌちゃん?そういう冗談言っちゃダメって言ってるでしょ?ジャン様が困ってしまうでしょ?」


「冗談じゃありませんよ。ソフィアさんこそジャンさんと結ばれるなんて冗談言わないでくださいね?」


「ソフィアさん?マリーヌちゃん?わざわざそんな話しなくていいからね。」


またマリーヌとソフィアとナタリーが火花を散らしているように見えたのだった。


俺にはなぜ三人が火花を散らしているように見えるのかが分からなかった。


すると冒険者数人が慌てて冒険者ギルドの中に駆け込んできたのだった。


「た、大変だ!!」


「どうしたの?あなた達??」


「それが勇者クレシーがこのグリンダムに向けて広域魔導通信を流しているんです。」


「勇者クレシーが広域魔導通信を?」


「ジャン様の名前も出しておりました。」


広域魔導通信というのはたくさんの人間に向けて行う魔導通信の事で普通の魔導通信のように相互で会話をしたりする事はできなかった。


その魔導通信をクレシーがしていると聞いて、俺はどんな通信をしているのか気になった。


「ミーシャ??そのクレシーの野郎が流してる魔導通信をこっちに表示できるか?」


「うん、問題ないよ。ちょっと待ってて。」


ミーシャはドラゴンスキルを使って魔導通信を表示する準備を始めた。


そして準備が終わるとすぐに表示されたのだった。


冒険者ギルドの中にクレシーの声が響き渡ったのだった。


「聞こえているか?ジャン・リヒター??それに味方している愚か者共??大勇者クレシー様である!!いいか俺は触れを出したはずだ。竜にまたがるだけの無能は何の役にも立たない無能だとな。つまりジャン・リヒターはとんでもない無能だという事だ。よく覚えておけ!!マグレでラズバーを倒せただけだ。こんな事はもう2度と起こらない!!」



クレシーの声が響き渡った。


「ジャジャーン!!そしてお前達にいい知らせがある!!実は3日後にこの大勇者クレシー様が直々にグリンダムの浄化を行う事にした。すなわちグリンダムに攻め込んでジャン・リヒターそして味方した冒険者や市民に至るまで皆殺しにしてやるのだ!!一人残らず皆殺しだ!!ジャン・リヒターはあろう事かこの大勇者クレシー様を何度もコケにしやがった!!もう貴様らを許す事はできないのだ!!どうだ嬉しいだろう??なにせこの大勇者クレシー様に直々に殺してもらえるだからな!!はっはっは!!」


冒険者ギルドの中にクレシーの声が響き渡った。


「全く、さっさと35号の策によって死んでいれば楽に死ねたものをな。もう楽には殺してやらん!!ジャン・リヒターなんぞに味方した奴らは一人づつなぶり殺しにしてやる!!話は以上だ。それでは3日後を怯えながら待つがいい!!あっはっはっは!!いい気味だジャン・リヒター!!!」


そしてクレシーの魔導通信が終わったのだった。


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