第34話 クレシー激怒
それから一週間後、勇者クレシーは相変わらず迷いの森の攻略を続けていたが一向に迷いの森の攻略は進んでいなかった。
最もクレシー自身は迷いの森には一回も入っておらず、自分の取り巻き達と共に毎日酒宴を催して遊びほうけていただけであった。
すると迷いの森から戻ってきた冒険者がクレシーに報告にきたのだった。
「大勇者クレシー様?ただいま迷いの森より戻りました。」
するとクレシーは睨みつけながらその冒険者に尋ねた。
「今度はちゃんと盗賊達が隠したレアアイテムを見つけてきたんだろうな?」
「申し訳ありません。今回も迷いの森の攻略に失敗しました。」
「なに??また失敗しただと??」
「大勇者クレシー様、申し訳ありません。迷いの森の攻略に失敗いたしました。」
「ええい、いい加減にしろ!!この大勇者クレシー様の顔に何回泥を塗り続ければ気が済むんだ!!これで20回目の失敗だぞ!!」
「申し訳ございません。冒険者5千人で迷いの森の攻略を試みましたが、いかんせんアイテムの不足が深刻になっており、攻略を達成する事ができませんでした。もうほとんどの冒険者達の魔力も底を尽きております。ポーションはマジックポーションの手持ちもほぼ無くなっており、冒険者達は長時間の戦闘や移動で疲れ果てています。これ以上の攻略続行は不可能と思われます。どうか王都への帰還をお願い致します。」
「ふざけるな!!そんな言葉聞きたくもない!!俺がどれだけ苦労していると思っているんだ?」
「大勇者クレシー様は毎日ここで宴会をされてるだけですよね?苦労はされていないと思うのですが??」
クレシーが大声で怒鳴りつける。
「馬鹿者が!!お前らがさっさと迷いの森を攻略しないから、ここで宴会をして時間を潰すしかないんだろうが!!この大勇者クレシー様に宴会をさせているお前ら冒険者崩れ共が悪いに決まっているだろうが!!そんな事も分からないのか?」
するとその冒険者が小さな声でぼそっと言った。
「だったら、自分で行ってこいよ全く。」
クレシーが大声で怒鳴りつけた。
「ああっ??今なんか言ったか??」
その冒険者が慌てて首を横に振った。
「いえ、何も言っておりません。きっと気のせいでございます。」
「とにかく盗賊達が隠したとされる幻のレアアイテムを何んとしても見つけてこい!!そしてこの大勇者クレシー様に献上しろ!!分かったな!!」
「はっ!!」
その冒険者が外に出ていった。
クレシーが大声で怒鳴りつけた。
「全く、どいつもこいつも使えない連中ばかりだ!!」
「大勇者クレシー様より優秀な者など存在しませんからな。」
「ふん、そんな事は当然だ。この大勇者クレシー様より優秀で強い人間などいるはずがない!!だがそれでも、この大勇者クレシー様の足元に及ぶ連中が少しはいてもらわないと困る。どこ見渡してもこの大勇者クレシー様の足元にも及ばない連中ばかりだからな。」
するとさきほどとは別の冒険者がクレシーの元に報告にやってきた。
「大勇者クレシー様?失礼致します。」
クレシーが不機嫌そうに尋ねた。
「なんの報告だ??」
「グリンダムの件でございます。」
「やっと知らせが来たか。いついい知らせが来るかと待ちくたびれていたぞ。それで?ジャン・リヒターはどんな最期だったのだ?」
だがそれを聞いた冒険者は何もクレシーに言わないのだった。
「おい!どうした?はやく報告をしろ、ジャン・リヒターやグリンダムの奴らが悲惨な最期を遂げたのであろう?」
だが冒険者が報告したのはクレシーが期待した事とは真逆の事だった。
「大勇者クレシー様、それがどうやら35号の作戦は阻止されてしまったようです。ロスタル塔にてグリンダムの町を魔物に襲わせる準備をしている最中にジャンリヒターが現れ35号を倒し、計画を潰されてしまったとの事です。」
「なんだと??ではジャン・リヒターは??竜にまたがる無能共は??」
「申し上げにくいのですが、ジャン・リヒターも他の竜騎士もグリンダムも無傷であると思われます。」
クレシーが大声で怒鳴りつけたのだった。
「おのれ!!ふざけやがって、ジャン・リヒターめ!!こざかしい事をしやがって!!35号もなんて役立たずなんだ!!せっかくこの俺様の装備を貸してやったというのに!!」
「大勇者クレシー様の装備を借り受けながら、失敗するとは35号も存外役立たずでしたな。」
「全くだ、ジャンリヒターなどに遅れをとるとは。35号も所詮はこの大勇者クレシー様の足元にも及ばぬ無能であったな。」
「大勇者クレシー様??どうなさいますか??」
「そんなもの決まっているだろうが!!すぐに出発の準備を始めろ!!」
「出発??王都に戻られるのですか??」
クレシーが大声で側近に言った。
「違う??これよりカリーナに向かうのだ!!」
「カリーナにでございますか?」
「そうだ!!カリナーに向かいその後でグリンダムに攻め込んでやるのだ。こうなったらこの大勇者クレシー様が直々にジャン・リヒターを始末してやるのだ!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます