第33話 破滅の悪魔

「あらかじめ強力な魔物をたくさん召喚してこのロスタル塔にため込んでおく。そして数が揃ったら一斉にこの塔の出入り口を破壊して魔物達を解き放ちグリンダムを襲わせる計画だろう?違うか?」


「なぜその計画を知っている??」


「テメエはこのロスタル塔の結界をわざわざ壊して侵入している。つまりこのロスタル塔に用事があり悪だくみを考えているという事だ。そしてロスタル塔の中にいる本来いないはずの強すぎる魔物達、そしてさっきレイチェルさんが言っていたグリンダムの襲撃を企んでいるという事を総合して考えれば、十分予想できるだろう。ここの魔物達を使ってグリンダムの襲撃を企んでいるって事ぐらいな。」


マスタングが悔しそうに言った。


「くううう、まさか俺の立てた計画を看破されてしまうとは。」


「どうせ同じ事だろうが、この後お前の口から洗いざらいはいてもらうんだからな。」


「こうなったらやむおえん!!」


そう言うとマスタングは剣を手に取り自分の胸に胸に強く当てたのだった。


そしてそのまま自分でその剣を胸に貫いたのだった。


マスタングは剣を引き抜くと大量の血しぶきが周囲に飛び散った。


「お前なにしてやがる?」


苦しそうにマスタングが俺に言った。


「ジャン・リヒター、お前にはここで死んでもらうぞ。」


そしてマスタングはそのまま息絶えたのだった。


すると床には大きな魔法陣が浮かびあがってきていたのだった。


「この魔法陣は召喚術式か?」


23階の最上階は部屋などはなくただ大きな空間が広がっていた。


そして魔法陣は不気味に光りだしたのだった。


「ジャンさん??何が起こってるんですか??」


「たぶん召喚術式が発動したんだと思う。マスタングが自分の命と引き換えに強力な魔物の召喚術式を発動したんだろう。」


「きょ、強力な魔物??」


「ああ、みんな戦闘態勢だ。もうすぐ強い魔物が出てくるぞ!!」


俺の言葉で全員が身構えた。


そして最上階が大きく揺れ出したのだった。


そして最上階の床からゆっくりと巨大な魔物が姿を現したのだった。


すぐに紫色の巨大な悪魔が俺達の前に立ちはだかったのだった。


その魔物はとても大きな体をしており下の階にいたアークデーモンと比較してもその大きさは際立っていた。


俺はその魔物の姿を見て驚いたのだった。


「破滅の悪魔ベルグスタンだと??マスタングの奴、なんてものを呼びやがる!!」


「この魔物そんなに強い魔物なの?」


「破滅の悪魔ベルグスタンはかつて数多くの冒険者を亡き者にしてきた言われる強力な魔物。この破滅の悪魔ベグスタンはベスゴルドの災厄の一つにも数えられてる。」


「魔領(まりょう)ベスゴルドの最奥にいるとされている魔物だ。」


この世界にはダンジョン以外にも人が全くおらず代わりに魔物が支配している場所が存在した。


魔物が支配して人間が追い出されてしまった場所は全て魔領(まりょう)と呼ばれていた。


ベスゴルドというのはかつて人々が魔物の侵攻を受けて失った地域の事であった。


「ええ、やばいじゃん。」


「ああ、だがやるしかない!!」


俺の言葉にみんなが頷いた。


俺達は破滅の悪魔ベルグスタンとの戦闘を始めたのだった。


破滅の悪魔ベルグスタンは大きな雄たけびを上げるのだった。


「ブオオオオーン!!!ブオオオーン!!」


「みんな!!ベグスタンが終焉の霧を使ってくるまで攻撃をするな。とにかく守りを固めるんだ。」


「分かりました、ジャン様。」


俺は状態異常を防ぐ魔法壁を展開できる防御魔法リフェルフィールドを発動した。


「全ての者をその大いなる加護にてあまたの災いより、守りたまえ!!リフィルフィールド!!」


そして俺は魔法攻撃をパラメーターを上げる為に竜の躍動を発動していた。


「竜の躍動!!」


竜の躍動はドラゴンスキルの一つで魔法攻撃力を一時的に最大まで上げる事ができるスキルだった。


これで俺の魔法攻撃力を最大まで上げたのだった。


一方のソフィアやマリーヌやミーシャは俺の指示通りに守備態勢をとって守りを固めていたのだった。


その間も破滅の悪魔ベグスタンは大きな雄たけびを叫び続けていた。


雄たけびを叫び続けるベグスタンにマリーヌが困惑していた。


マリーヌが俺に心配そうに尋ねてきた。


「ジャンさん?このまま何もしなくて大丈夫なんですよね?」


「ああ、絶対に大丈夫だ。俺を信じてくれ!!マリーヌ!!」


「はい、もちろん信じます!!」


すると破滅の悪魔ベルグスタンは大きな頭を下に向けると、口からすさまじい量の霧を吐き出したのだった。


すぐに全ての空間にベルグスタンが吐き出した霧が充満したのだった。


そして紫色の霧は徐々に晴れていったのだった。


ベルグスタンの終焉の霧には混乱と石化と毒と麻痺と睡眠の全ての状態異常を引き起こしてしまう強力な効果を持っていたが、俺の補助魔法であるリフィルフィールドの効果で誰一人状態異常になる事はなかったのだった。


そして俺は破滅の悪魔ベルグスタンが終焉の霧を使ったので光属性の超級魔法であるシャイニングレイの詠唱を始めたのだった。


「この地に覆い尽くす漆黒の闇をその聖なる光で照らし尽くせ!!シャイニングレイ!!」


眩いばかりの聖なる大きな扉が天井に現れたのだった。


そしてその聖なる扉がゆっくりと開かれるとそこから強力な光が現れて破滅の悪魔ベルグスタンをその聖なる光がどんどん包み込んでいったのだった。


しかも今は竜の躍動の効果で魔法攻撃力は最大まで上がっていた。


俺のブースト状態のシャイニングレイを食らった破滅の悪魔ベルグスタンは大きな断末魔をあげたのだった。


「グギャアアアーーー!!」


そしてそのベルグスタンの紫色の巨大な体が床に倒れ込んだのだった。


俺達は破滅の悪魔ベルぐスタンを倒したのだった。


「やった、ベルグスタンまで倒してしまうなんてさすがジャンさんです!!」


「さすがジャン様!!破滅の悪魔ですらジャン様には敵わないんですね!!やっぱりジャン様は素敵です!!」


「ねえジャン?なんでベルグスタンを攻撃しちゃダメだって言ったの??」


「ベルグスタンの終焉の霧には毒や石化や麻痺状態になるだけじゃないんだ。それ以外にもう一つ厄介な効果があるんだ。ベルグスタンを攻撃した相手に回避不能の即死攻撃を食らわせるっていう効果があるのさ。」


「回避不能の即死攻撃??」


「ああ、この即死攻撃だけはリフィルフィールドでも防げないからな。」


マリーヌが感心した様子で俺に言った。


「それで、攻撃してはダメだったんですね。」


「ああ、ベルグスタンの即死攻撃を回避するには、攻撃を控えるしかないんだよ。攻撃を仕掛けたらすぐに終焉の霧をはいてくるからな。ベルグスタンの終焉の霧の恐ろしさはそこにあるんだよ。だから守りを固めたうえで一撃で勝負を決めないとダメだったんだ。」


「そこまで考えてるなんてさすがジャンさんです。」


「そこまで考えて攻撃するなって言ってたなんて、やっぱりジャンはすごいね。」


「ジャン様、本当にすごいと思います!!」


「ああ、ありがとう。」


俺は持っていた神秘の聖水をレイチェルさんに使って呪いを解いたのだった。


「英雄様、ありがとうございます。」


俺達はレイチェルさんと共に冒険者ギルドへと帰還したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る