第12話 救出

~ジャンの視点~


俺はボルシードに乗ってラズバーの大宮殿の屋上に着陸すると、ボルシードを置いてすぐにラズバーの宮殿に突入した。


俺は探索魔法のサーチを唱えて、すぐに大宮殿の中の地図を確認した。


「牢屋は地下か。ミリアさんもたぶんそこだな。」


俺はすぐに屋上の扉を開けて中に大宮殿の中に侵入した。


下へ続く階段を駆け下りていくと、宮殿の兵士達が大きな声で言った。


「見つけたぞ、侵入者だ!!」


「やっちまえ!!」


「お前らに構ってる暇はねえ。竜昇拳(りゅうしょうけん)!!」


俺は遭遇した宮殿の兵士達をかたっぱしから竜昇拳(りゅうしょうけん)で吹き飛ばしながら、階段をおりていった。


そして地下まで降りてきたのだった。


「ここが牢屋だな。」


俺はすぐに地下牢へと入った。


そして地下牢を見渡してみた。


するとそこには見知った顔の女子がいた。


その女子こそミリアさんだった。


俺はミリアさんに声をかけた。


「ミリアさん?」


ミリアさんは驚いた様子で俺に言った。


「えっ??ジャン君??」


俺はカギを探したが周囲には見当たらなかったので、強硬手段で開ける事にした。


「ミリアさん、扉から離れててください。」


ミリアさんが頷いた。


「うん。」


俺はドラゴンスキルの竜鉄拳(りゅうてつけん)を使って、力づくで開けてしまおうと考えた。


威力を最大限まで落として、牢屋の鉄格子に竜昇拳(りゅうてつけん)を放った。


「竜鉄拳!!」


そして牢の鉄格子が歪んだのだった。


俺は力一杯で扉を引っ張ると扉が開いたのだった。


「大丈夫ですか??ミリアさん??」


ミリアさんは牢屋の中から出てきた。


ミリアさんが俺の顔を見ながら言った。


「ジャン君?私を助けにきてくれたの?」


「ええそうです。」


するとミリアさんは俺に抱きついてきたのだった。


「ミリアさん??」


ミリアさんの豊満な胸が俺の体に当たっていた。


「ジャン君、怖かった、殺されてしまうかと思った。」


ミリアさんは相当つらかったようで涙目で俺に言った。


俺はミリアさんを励まそうとこう言った。


「もう大丈夫です。安心してください。」


ミリアさんが抱きついたまま俺に言った。


「ありがとう、ジャン君。」


俺は恥ずかしく感じながら、ミリアさんに言った。


「それでなんですけどミリアさん?すいません?そろそろ離してもらえませんか?」


まあミリアさんに抱きつかれて悪い気分じゃなかったが、ミリアさんの豊満な胸が俺の体に当たって相当に恥ずかしかった。


「ジャン君とずっとこうしていたいな?離れなきゃダメかな?」


だがミリアさんは俺に抱きついたままなかなか離れてくれなかった。


顔を赤くしたミリアさんが俺に言った。


「ジャン君、助けに来てくれてとっても嬉しかったんだ。ジャン君とってもかっこ良かったから。だからジャン君から離れたくないんだ。ずっとこうしていたいの。」


俺は心臓がドキマギしていた。


「ミリアさん、今はラズバーが上の階にいるんです。また落ち着いてからいくらでも付き合いますから。」


「うん、分かった。それじゃあ落ち着いたら一緒にデートにいきましょう。そして好きなだけ抱きつかせてもらうからね。約束だよ?ジャン君?」


ミリアさんはそう言うとようやく俺から離れてくれた。


「ごめん、ジャン君、任務の邪魔しちゃって。」


俺も少し恥ずかしく感じながら言った。


「あっいえ。」


「ミリアさん、それじゃあここから脱出しましょう。外でナタリーが待ってます。」


「ナタリーも来てるの??」


「はい。」


そして俺は宮殿の外にミリアさんを連れ出すと外で待機していたナタリーにミリアさんを託して、団長の元に急いだ。


団長はラズバー大宮殿の大広間で足止めされていた。


大広間の奥には避難用のシェルタールームがあり、ラズバー達はそこに駆け込んで結界システムを作動させていたのだった。


「ジャン?ミリアの救出はどうじゃった?」


「大成功です。ミリアさんはナタリーに託してきました。今頃ナタリーがミリアさんを避難させてる所ですよ。」


「まずは一安心じゃな。」


「それで団長の方はどうですか?」


「うむ、ラズバー達はこの大広間の奥にあるシェルタールームに立て籠もっておる。ジャンの予想どおりに動きじゃな。」


「今はこれでいいです。ミリアさんの救出を最優先でしたから。」


「そうじゃのう、ラズバーの奴がミリアを盾にでも使われたら面倒じゃからのう。じゃがジャン?本当にラズバーの奴は出てくるのか?」


「ええ、恐らくラズバーの奴は自分からここにやってきます。」


一方のその頃ラズバーは


一方敵襲の知らせに震えあがったラズバーは真っ先にシェルタールームへと駆け込んで結界システムを発動させていたのだった。


ラズバーが怯えた様子で一緒に逃げ込んでいた部下のゼルスに尋ねた。


「おいこの結界システムは大丈夫なのか?破られたりしないのか?」


「はっ。最上級の結界システムですので、じゅうぶん持ちこたえる事はできるでしょう。」


「ならいい。まさか冒険者達が上空を飛んできて奇襲を仕掛けてくるとは思わなかったわ。」


「大賢者ラズバー様?ひとつ宜しいですか?」


「なんだ?」


「奇襲を仕掛けてきたのは冒険者達ではありません。恐らく竜騎士、あいえ竜にまたがる無能共と思われます。」


ラズバーが驚いてカマルに言った。


「なんだと?それは本当か??」


「はい。さきほど報告しようとしましたのも竜騎士達がグリンダムの郊外で目撃されたという情報でございました。それに竜騎士達の姿をさきほどこの目で確認しておりますので、間違いないかと。」


するとラズバーは突然笑い出したのだった。


「はっはっはっ!!なんだそうだったのか!!もっとはやくそれを言え。焦ってしまったではないか全く。」


するとラズバーはゼルスにこう命令を出したのだった。


「よしゼルス、結界システムをすぐに解除しろ。」


ゼルスが驚いていた。


「はっ??」


「聞こえなかったのか??ゼルス??すぐに結界システムを解除するんだ。」


「あのう?ラズバー様??何を言われているのですか?」


「結界システムは発動は誰でもできるが、解除はゼルスお前にしかできんから命令しているのだろうが。」


「あっ?いえそういうことではなく、ここはこのまま結界システムを発動し続けてこのシェルタールームの中に立て籠もるべきであると思うのですが?」


「そんな必要はもうない。すぐに結界システムを解除するんだ。」


「大賢者ラズバー様、ゼルスの言う通りでございます。この宮殿には現在戦力がほとんど残っていません。グリンダムへの侵攻は一旦中止して魔物を呼び戻した上で、竜騎士達と戦わるべきだと考えます。」


「いいか竜にまたがる無能共にこの大賢者ラズバー様が遅れを取る事があると思うか?そんな事あり得ない。遅れを取っているのはあの竜にまたがる無能共なんだからな!!この大賢者ラズバー様の勝利は約束されているようなものではないか!!」


「ラズバー様??グリンダムの冒険者達の反乱といいこの竜騎士達の襲撃といい偶然に重なったとはとても思えません。連中は結託していると考えるのが自然です。」


「馬鹿め、竜にまたがる無能共はただの愚か者だ。あいつらにそんな事ができるはずがないだろうが。」


「大賢者ラズバー様?冷静にお考え下さい。いくら大賢者ラズバー様が大賢者でお強いとはいえど寡兵でろくに準備もできていない状態なのです。一方の竜騎士達は準備万端で襲撃を仕掛けてきているはずです。そのような状態で竜騎士達とまともに戦って勝てるとお思いですか?」


「当然勝てると思う。このラズバー様の勝利は約束されている!!」


「大賢者ラズバー様、もう一度冷静になってよーく考えてください。」


「冷静になってよーく考えた上で、この大賢者ラズバー様が勝利するという結論に至ったのだ!!」


「申し上げにくいですが大賢者ラズバー様とて負ける事はあるのです。あまりご自分のお力を過信なされませんように。一時の恥に耐える事も時に重要にございます。」


ラズバーがゼルスの言葉を聞いて激怒したのだった。


「ふざけた事を言いやがって!!」


ラズバーはゼルスに暴力をふるい始めたのだった。


ゼルスは暴力に耐えながら必死でラズバーを説得しようとした。


「大賢者ラズバー様?どうかどうか?冷静にお考え下さいませ!!」


「冷静に考えておるわ!!冷静に考えてこの大賢者ラズバー様が絶対勝つと考えたんだ!!」


ラズバーは何度も何度もゼルスを殴りつけたのだった。


ラズバーが大声で二人を怒鳴りつけた。


「ゼルス!!魔法石の取引を独占させてやるんだぞ。」


「カマル?お前の魔物を使ってやってるんだぞ??」


ゼルスもカマルも頭を下げてラズバーに言った。


「もちろん大賢者ラズバー様に感謝しております。魔法石市場が独占できれば我がゼルス商会は莫大な利益をあげる事ができます。」


「このカマルも大賢者ラズバー様には感謝しております。大賢者ラズバー様に魔物達を使役して頂ければ、我が魔物派遣も潤い大きな富を築く事ができますからな。」


ラズバーは不思議そうな顔で二人に言った。


「ゼルス??カマル??お前達は何を言っておるのだ????」


「ゼルスこれからはお前の商会の売り上げを全てこの大賢者ラズバー様に献上するのだぞ?カマル?富を築くのはこの大賢者ラズバー様だけだ。カマルが魔物派遣の費用を払うのだ。この大賢者ラズバー様は一切金は出さん。」


「大賢者ラズバー様?それでは魔法石の独占販売をする意味がないんですが?」


ラズバーがゼルスに大声で怒鳴りつけた。


「貴様!!この大賢者ラズバー様のやることは全て大きな意味があるのだ!!!」


ラズバーはまたゼルスに対して激しい暴行を加えたのだった。


ゼルスがその場に倒れ込んでしまった。


「それなのに意味がないなどとふざけた事を言いやがって!!」


「ラズバー様??なぜ魔物を派遣する私がお金まで出さなければならないんですか?それは間違っていると思うのですが?」


今度はラズバーが大声でカマルに怒鳴りつけた。


「この大賢者ラズバー様の為にお金を払う事、命を差し出すことこの世界にとっての幸せな事なのだ。つまりこのラズバー様はいつも正しいのだ!!このラズバー様が間違う事など絶対にありえないのだ!!!」


ラズバーは今度はカマルに激しい暴行を加えた。


「カマル!!ふざけた事を言ってるんじゃねえぞ!!」


「ゼルス!!倒れてないでとっとと結界システムを解除しろ!!」


ゼルスは起き上がると渋々結界システムを解除したのだった。


「ええいやっと解除したか!!どいつもこいつもふざけた事ばかり言いやがって!!お前達はこの結界の中でこのラズバー様の雄姿を目に焼き付けておけ。竜にまたがる無能共なんざあっという間に倒してきてやる!!その間にちゃんと反省しておけよ!!」


ラズバーはそう言ってシェルタールームから出て行った。


一方的に暴力を振るわれたカマルとゼラスは激高していた。


「くそ、ラズバーのやつ!!!お金を踏み倒すつもりだったのか!!」


「殴りたいだけ殴りやがって、何様のつもりだ!!」


「もう無理だ!!カマル??ラズバーを見限ろう。もう我慢の限界だ。」


「大賛成だゼルス。俺もあんな野郎の顔を見るのはもううんざりだ。もうこれ以上あんな野郎を持ち上げてやる必要はない。」


こうしてラズバーは部下達にも見放されたのだった。

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