第11話 大宮殿への侵入

それから数日後、ラズバーの大宮殿ではラズバーが地下牢の前で一人の女性に関係を迫っていた。


「ミリア??早くこのラズバー様を愛していると言え?このラズバー様と一夜を明かすんだ。そうしたらお前が犯した凶悪犯罪を帳消しにしてやるといってるんだぞ。」


地下牢に閉じ込められた女性がラズバーに言った。


「全部貴方が犯した罪じゃないですか?」


この地下牢に閉じ込められている女性こそナタリーの姉である、ミリア・レスハートであった。


ミリアは年齢は18で鮮やかな赤い髪のロングヘアーで容姿の整ったきれいな顔をしていた。


さらに大きな胸を持っていて、スタイルはとても良かった。


そのミリアはラズバーから一夜を共にするように関係を迫られていたのだった。


「はっはっは!!私は大賢者ラズバー様だぞ。どれだけ人を殺してもどれだけ盗んでも罪に問われんのだ。なにせこの大賢者ラズバー様は勇者クレシー様の次に偉いのだからな。俺が犯した罪は全て別の奴に押し付けるだけだ。」


「そんな事をしていたらいずれ報いを受けますよ?」


「はっはっはっ!!この大賢者ラズバー様が報いだと??断言してやろう!!そんな日は永遠にこない!!そんな事よりも、はやくこのラズバー様を愛していると言え!!すぐにこのラズバー様のベッドに連れてってやるぞ?」


「そんな心にもない事は言えません。」


ラズバーが苦々しく舌打ちをした。


「ちっ!!一体何日このラズバー様を待たせる気だ!!このラズバー様を愛しているというだけだろうが!!」


「ですからそんな心にもない事を言うつもりはありません。」


ラズバーが大きな声でミリアを怒鳴りつける。


「ええい!!強情な女め!!いいかミリア??お前を今日まで処刑せずにおいたのは、お前とやりたいからだ。お前のナイスな体もその綺麗な青い髪も俺の好みだからだ。だが、それを拒み続けるというなら、俺にも考えがある。」


「か、考え?」


「もしミリアがこの大賢者ラズバー様を愛していると言わないのなら、お前を全裸にした上で拷問し、公開処刑にするぞ。それでもいいのか??」


「なっ??」


ラズバーが笑いながら続けた。


「綺麗なお前が服を脱がされ拷問される姿はさぞや見ごたえがあるだろうな。」


ミリアの顔が恐怖で震えていた。


「ひっ??」


「そうされたくなければ、この大賢者ラズバー様を愛していると言え!!夕方にまた来る。その時にラズバー様を愛していると言わなければ、お前を公開処刑にする。いいな!!」


「そんな??待ってください。」


「それじゃあな。いい返事を待ってるぞ。」


ラズバーはそういうと上の階に上がっていった。


一人地下牢に囚われたミリアはボソリとこう呟いた。


「助けて、ジャン君。」


ラズバーは笑顔で2階にある大広間の前へと戻ってきたのだった。


そして大広間の扉を開け放つと大きな声で叫んだのだった。


「さあ新人冒険者のマリーヌ!!待たせたな!!この俺が大賢者ラズバー様だ。クレシー様の次にすごい偉大な大賢者様なのだ。さあ!!好きなだけその目に焼き付けておくがいい。このラズバー様の雄姿をな。はっはっは!!!」


ラズバーは大広間で新人の女子冒険者であるマリーヌが待っていると思いこんで、こう叫んだのだった。


だがラズバーを待っているはずのマリーヌの姿が大広間のどこにも見えずにラズバーは戸惑ったのだった。


「うん??」


ラズバーがキョロキョロする。


そしてラズバーは大広間にいた自分の部下のカマルの元に駆け寄ると大声で尋ねたのだった。


「おいカマル??どういう事だ??なぜ新人の冒険者のマリーヌがいないんだ?俺と一夜を共にさせる為に呼んでおけと言っておいただろうが!!マリーヌとは今日が初夜になるんだぞ!!」


ラズバーは大広間にいた部下のカマルに呼び掛けたのだが、カマルは慌てた様子でラズバーの呼びかけに答えなかったのだった。


「おい!!聞いているのかカマル!!」


カマルはそれに気がついて慌てて返答したのだった。


「大賢者ラズバー様、申し訳ございません。少し問題が発生しておりまして。」


「問題だと?」


「それが冒険者達がやってこないのです。」


「なんだと?冒険者共には毎日このラズバー大宮殿に奴隷をしにくるように命令しておいたはずだ。それを忘れた大馬鹿な冒険者がいるというのか?」


「それがほとんどの冒険者達がラズバー様の命令を無視してグリンダムの冒険者ギルドに集まって冒険者会議を開いているらしいのです。」


するとラズバーの部下であるゼルスが大広間へと入ってきた。


「大賢者ラズバー様一大事です!!」


「騒々しいぞ!!ゼルス!!」


「申し訳ありません、大賢者ラズバー様。」


「ゼルス??一体どうしたのだ??」


「それが冒険者会議にてある決議が出されたのです。」


「決議??どんな決議だ??」


「そ、それが、大賢者ラズバー様をグリンダムの冒険者のギルドマスターより解任するとの決議が出されたのです。」


「な、なんだと??」


「さらに冒険者会議ではこう宣言もされたようです。ラズバーは大賢者を自称しているが、とてもではないがラズバーは大賢者と呼ぶに値する人間ではない。ラズバーこそがとんでもない無能者であり、薄汚れた凶悪犯罪者でしかない!!との宣言が冒険者達によってなされました。町の人々から奪った物を直ちに返却して冒険者ギルドに出頭するようにとの事です。もし出頭しない場合は実力で無能な凶悪犯罪者のラズバーを捕まえるとの事です。」


ラズバーはこれを聞いて激怒したのだった。


「ふ、ふ、ふざけやがって!!!」


ラズバーは反省の色など一切見せずに怒り狂ったのだった。


「くそ!!冒険者共め!!ふざけた事をしやがって!!」


「これはまずい状況ですな。大賢者ラズバー様がギルドマスターを解任されてしまったとなると、大賢者ラズバー様の立場が大きく揺らいでしまう。」


「ああ。そうなってしまうな。」


「しかしなぜ突然冒険者達は大賢者ラズバー様に反旗を翻したのだ?ついこの前まで冒険者達はラズバー様に怯えきって言われるがまま従っていたのに。」


「そこが分からんのだ。」


「冒険者達が反旗を翻そうと考えるほどの、大きな状況の変化があったとでもいうのか??」


するとラズバーが大声で怒鳴りつけた。


「そんな事はどうだっていい!!冒険者共め!!よくもこの大賢者ラズバー様を裏切りやがったな!!皆殺しにしてやる!!!このラズバー様が今までたっぷり痛めつけてやった恩や搾り取ってやった恩を忘れやがって!!」


「ゼルス!!すぐに町に置いてあるゴーレムに命令を出せ!!ゴーレムに冒険者共を攻撃させろ!!!」


「はっ!!」


だがラズバーが町に置いていたゴーレムの魔導回路はすでにジャンに書き換えられており、ラズバーが命令を出す事はすでにできなくなっていた。


「ラズバー様、ゴレームに命令を出していますが、ゴーレムが全く攻撃する気配がありません。」


「なんだと??」


「どうも誰かに魔導回路を書き換えられてしまったようです。」


「あのゴレームはこの大賢者ラズバー様が長い時間をかけて組み上げた最高傑作なのだ。魔導回路も傑作の自信がある。その魔導回路を書き換えるなんて不可能に決まっているだろうが!!」


「ですが大賢者ラズバー様?実際にゴーレムは攻撃命令を一切受け付けないのです。誰かに書き換えられたとか思えません。」


「くそう!!どこのどいつだ!!この大賢者ラズバー様のゴレームにイタズラしやがって!!」


「ラズバー様?いかがいたしますか?」


「だったら魔物だ!!すぐに魔物共を準備しろ!!!」


「何匹用意すればよろしいですか?」


「コボルトとオークを全部出せるように準備しておけ。」


「全部ですか?まさか大賢者ラズバー様?グリンダムの市街に侵攻なされるおつもりですか?」


「当たり前だ!!グリンダムの市街地に侵攻してグリンダムの住民もろとも冒険者共を皆殺ししてやらねばこの大賢者ラズバー様の気持ちが収まらんわ!!!すぐにグリンダムの町に向けてコボルトとオークの部隊を進撃させろ!!」


「さすがにそれはやりすぎではないですか?」


ラズバーが大声で怒鳴りつける。


「つべこべ言わずにさっさと出撃させろ!!」


カマルとゼルスは慌てて準備を始めたのだった。


そしてコボルトの部隊とオークの部隊が出撃していったのだった。


しばらくしてカマルがラズバーの元にやってきた。


「ラズバー様?コボルトとオークの部隊がグリンダムの市街に向けて進撃を続けておりましたがグリンダムの郊外にて冒険者達と遭遇し戦闘になっております。」


「よし残りのオーガとトロールの部隊も出発させろ。」


「はっ!!」


ラズバーが大声で言った。


「冒険者共め、待っていろよ。住民と一緒に皆殺しにしてやるからな。」


ラズバーは大宮殿に残していたオーガとトロールの部隊も出発させたのだった。


ちょうど同じ頃


~ジャン視点~


俺は相棒であるボルシードに乗って大宮殿から離れた上空にいた。


そしてラズバー大宮殿の状況を偵察し続けていた。


すると宮殿の中からすごい数のオーガとトロールがグリンダムの町に向けて進んでいったのだった。


俺はこれを確認した後で、団長に魔導通信を行った。


「団長、残っていた魔物達も出撃させたようです。」


「ラズバーの奴やはり魔物達を出撃させたようじゃのう。ジャンの読み通りじゃったな。」


「ラズバーの野郎が出頭なんてするわけありません。自分が解任されたと聞いて、逆上してグリンダムに魔物を向かわせるに決まってます。」


「うむジャン。なかなか鋭い読みじゃったぞ。」


「それにしても冒険者ギルドのほとんどの冒険者達が味方してくれて助かりましたね。ソフィアの呼びかけにたくさんの冒険者達が応えてくれました。」


「どこまでラズバーの奴は信用がないんじゃ。」


「ラズバーほどの無能な奴じゃ信用なんかされませんよ。」


ソフィアに俺達の名前を出した上で仲間を募ってもらったところ、グリンダムの冒険者ギルドに所属するほとんどの冒険者達の協力を取りつける事に成功した。


それを元に俺はミリアさんの救出作戦とラズバー捕縛作戦を立てたのだった。


まず冒険者ギルドにて冒険者会議を開いてもらって、ラズバーの解任決議を出してもらう。そしてそれを知ったラズバーが激高して魔物の部隊をグリンダムに向かわせるように仕向けた。


もちろん魔物達がグリンダムの市街に入らないように、冒険者と竜騎士が共同でグリンダムの郊外にて防衛線を構築して魔物達を足止めする。


そしてその間に手薄となったラズバーの大宮殿に俺達が乗り込んでミリアさんを救出しラズバーを捕まえるという作戦だった。


「ジャン?分かっているとは思うがラズバーの宮殿に乗り込むのはワシらだけじゃ。竜騎士団からも防衛線を維持するためにかなり人数を割いておるからのう。この作戦の成否はジャンにかかっておるといっても差し支えない。」


「ええもちろん分かってますよ団長。ミリアさんを必ず救出してラズバーの野郎をぶっ倒してみせます。」


「なあナタリー?」


「うん。」


そして団長が号令を出した。


「よし時間じゃ!!これよりミリア救出作戦及びラズバー捕縛作戦を開始する!!!」


俺は大きな声で言った。


「よし行くぞ!!ボルシード!!」


「ガオーーーー!!」


ボルシードは大きな雄たけびを上げると、ラズバーの宮殿に向けて滑空を始めた。


~ラズバー視点~


一方その頃ラズバーは大宮殿の大広間にてカマルに状況を聞いていた。


「どうだ、冒険者共は撃滅できそうか?」


「それがかなり苦戦しているようでして、各所で冒険者達の激しい抵抗にあっている模様です。」


「ちっ!!冒険者共め悪あがきをしやがって!!」


「カマル!!戦況も動かぬようだし少し休む。明日の昼過ぎまで起こすなよ!!」


ラズバーが玉座から立ち上がると、カマルが駆け寄ってきた。


「お待ちください、ラズバー様、一つご報告したい事があるのですが?」


ラズバーは不機嫌そうにカマルを睨みつける。


「報告は明日の昼過ぎにしろ。もう休むと決めたのだ。どうせ大した事ではないだろうが!!」


「ですが?とても重要な情報だと思われますが??」


「明日の昼過ぎにしろって言ってるだろうが!!」


「はっ,承知しました。では明日の昼過ぎにご報告いたします。」


「全く。」


すると宮殿を警護している兵士が慌てて大広間に飛び込んできた。


「て、敵襲です!!」


「なんだと?」


「宮殿の中に敵が侵入しました!!」


「馬鹿な、敵はどうやってこの宮殿に来たというのだ?この宮殿の周りには探知システムや転移魔法を防ぐ結界を張り巡らしてあるんだ。それらは一切反応していないんだぞ。」


「それが敵は空から降りてきたです。屋上から一直線に下の階に進んでいます。」


「空から襲撃を仕掛けられたというのか?」


「はっ、信じられないのですが、そのようなのです。」


「大賢者ラズバー様??ここは危険でございます。この大広間の奥にあるシェルタールームに避難を。」


カマルはラズバーにそう言ってラズバーを避難させようとしたがその必要はまったくなかった。


ラズバーは敵襲の知らせを聞くと一目散に結界のあるシェルタールームへ向かう扉を開けてシェルタールームへと走っていったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る