ババ抜き
食べ終わった頃、サムは寝そうにしていた。というかもう寝ていた。窓のサンに肘をつき、頭が落ちそうになっていた。まだまだ行き先に着く気配がなかった。とりあえず僕も寝た。
起きると、寝始めた時から1時間経っていた。サムをみると起きていた。起きてびっくりするほど目をかっぴらいていた。
「何してるの」
「何にも、ただしたいからそうしてるの。」
「そうなんだ」
それはまるですべて見ようとしているように見えた。今の僕の気持ちまですべて見えるようなそんな目だった。世の中のことが丸見えしているかのようだった。あるいは目をわざと乾燥させているようだった。
「ね。トランプ持ってる?」急に言われた。
「うん。」
「じゃあトランプしよ!」
「わかった」
「ババ抜きね。」
「おっけい」
トランプを出すとサムはシャフルして、手札を分けた。じゃんけんをして僕が勝ったので、最初は僕が引くことになった。サムはジャンケンが弱いのだ。いつもここは僕が勝ってしまう。手札を見ると、ジョーカーがなかった。サムが持っているのだ。
トランプを引こうとするとサムはこっちをじっと見た。ちょっとだけドキドキしてしまう。でも普通に数字のカードが引けた。これは1週間の努力だ。少しドキドキしてもババ抜きは真剣にできる。次にサムが引いた。2度目も数字だったが、3度目はジョーカーを引いてしまった。サムは笑っていた。僕は1番はじにジョーカーを置いた。するとサムが
「ね。いいこと思いついた。ジョーカーを持っていないほうはいくらでもゲームが終わるまで引いていいことにしない?でももしジョーカーを引いたらそこで反対の今までジョーカーを持っていた人が引き続けるの!どう」
「いいよ」
サムはさっきとは違う目をしながらトランプを引いていった。目に光が入っていなかった。ロボットかと思うほど、スラスラと引いていった。そしてついに二枚になった。僕は口がぽっかりと空いていた。手元に1枚のジョーカーが残り、あっけなく負けてしまった。
「なんでわかったの」
「うーん、ランが弱いから」
「そんなことないだろ。だって7日間あまりサムには負けなかったじゃないか。」
「たしかに。あたしこのババ抜き得意かも。」
僕が悔しがると、サムはニコニコした。やっと山についた。
どうやら山の名前は《サザン》らしい。
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