第9話 驚愕の事実

 笠原上席研究員は研究員から次々に上がってくる分析結果を見て、自分の分析結果と齟齬がないことを確認した。こんなことがあるのだろうか。笠原はありえない分析結果に完全に頭が混乱していた。

「疾病の原因は分かったのか」山科一等陸佐は首相官邸からの矢のような催促に焦り始めていた。

「分析結果は集まったのですが、どう説明したらいいか分からないのです」

「新型コロナ、新型インフルエンザ、それともまったくの新型なのか」

「強いて言えばまったくの新型ウイルスです」

「どういう意味だ」

「確かに遺体から多数のRNAウイルスが発見されたのですが、どれも今まで発見されたものと構造が違うのです」山科は笠原の答えにピンとくるものがあった。

「つまりだ。それは人工的に作られたウイルス兵器ということか」

「それは断言出来ません。仮にウイルス兵器だとすると現に存在する例えばエボラウイルスとかエイズウイルスを改変すると思いますが、発見されたRNAウイルスはどれとも似ていないのです」

「まったく新しい極めて毒性の強いウイルスが突然出現したというのか」

「それも1種類じゃなく、13種類も同時にです。こんなことはありえません」

「今回の疾病は、複数のウイルスが引き起こしているのか」

「詳細に調べないとはっきりしたことは言えませんが、おそらく複数のウイルスが病状の発現に絡んでいると思います」山科は人類史上最悪のパンデミックが始まったと確信した。

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