第8話 海中の異変(3日目)
「艦長、潜水艦のスクリュー音を探知しました」海上自衛隊第2潜水隊群第4潜水隊に所属する潜水艦ずいりゅうの艦内は一瞬にして緊張に包まれた。
「音紋から潜水艦の国籍を特定出来ないか」ずいりゅう艦長の篠田二等海佐はソナーマン住谷海曹長に全幅の信頼を置いていた。
住谷は海上自衛隊のソナーマンナンバーワンと言える男だった。住谷は全神経を集中して、ソナーが探知した音を自分の記憶と照合していた。
「これは今まで探知されたことがない潜水艦です」「中国かロシアか。どちらか判断出来るか」「ロシアの潜水艦とは違うスクリュー音です。おそらく中国の潜水艦だと思います」「中国の潜水艦が日本の領海内で何をしているんだ」発見された潜水艦は房総沖の接続水域直下の海中で謎の行動をしていた。
「本艦は今から国籍不明の潜水艦を追尾監視行動に入る」篠田艦長の命令で全乗組員は非常時体制に移行した。国籍不明の潜水艦がこれほど日本の領海近くで発見されたことはなかった。
もし、相手が攻撃してきたら、ただちに回避、反撃をしなければならない。その兆候を真っ先に知ることが出来るのはソナーマンの住谷だった。追尾を開始して、2時間が経過した。極度の緊張で手のひらが汗で濡れていた。
「こちらに気が付いているか」「いえ、気付いていないと思います」そう言いかけた時、追尾している潜水艦が突然変針を始めた。
「艦長、方向を変え始めました」ずいりゅうは追尾するために同じ行動を取る必要があった。住谷はスクリュー音の変化からUターン行動を取ろうとしていると判断した。そして、その推測は次の2時間後に明らかになった。
「楕円を描くように周回を繰り返しているようです」「やつらの目的は何だ」篠田艦長の問いに住谷は答えを持っていなかった。
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