第10話 岐路
首相官邸に重要閣僚が極秘に緊急招集された事実はいつまでも隠しておくことは出来なかった。混乱にさらに拍車をかけたのが、明日の朝刊に千葉県で野鳥大量死の記事が掲載されることが三井官房長官の耳に入ったからだった。
「その記事を差し止めに出来ないのか。このままではパニックになるぞ。内藤防
衛大臣、この分析結果は確かなのか」江角首相は内藤から手渡された報告書に苛立っていた。
「この報告書にはこの目前の危機に対する対応策の記載がないじゃないか」
「それは、防衛省というより厚労省の所管だと思いますが」内藤防衛大臣は木内厚労大臣に話を振った。
「残念ながら、これほど多数のウイルス感染症の同時発生となると我が国の手に余ります。ここは米国CDCに援助要請をするのが賢明だと思います」江角は君には独立国家としてのプライドは無いのかという出かかった言葉をなんとか押しとどめた。
「極めて高い毒性と感染力から推測されるのは人類がかって経験したことがない未曾有のパンデミックだ。我が国の安全保障にとって、最も重要なパートナーである米国に協力をあおぐことにする。三井官房長官、ホワイトハウスに電話をつないでくれ」江角は日本の危機対応能力が少しも進歩していないことを身をもって知った。
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