第4話
思わず秋月の頬から涙が零れ落ちた。
「先生ありがとうございます。すずのためにもこんなに落ち込んでちゃダメですよね」
「そうですよ。気をしっかり持ってください。では、すずさんの様子を見させていただきますね」
葛城真堂はすずの脈と心拍数をカルテに記載していく。
「やはり瞳孔が動いている、、、ノンレム睡眠を継続しているか」
すずの瞼を上げて眼にライトを当てながら真堂は呟いた。
「朝の定期検査は終わりです。次は昼に来ますのでまたよろしくお願いします。北條さん、あまり思い詰めては行けませんよ。たまには気分転換をしなければなりませんよ。ここのところずっと病室に篭りっきりではないですか。」
「たしかにそうでした」
秋月はまるで今気付いたような反応だった。それほどに北條すずの存在は大きいものだったのだろう。
「世界的に有名な北條さんの演奏を聞かせてください。」
「今ここでですか?」
「そうです。是非お願いします。せっかくの防音の病室なんですから」
秋月はすずのベットの脇に立てかけているバイオリンに目を向ける。
「そういえばこんなにバイオリンを触らな買かったのはあの時以来かもしれません」
秋月は少し上を見上げて、「あの時」の思い出に浸ろうとしていた。
「是非、北條さんの演奏をお聴きしてみたいです。こんなチャンスは滅多にないですし」
その言葉で秋月の回想は断ち切られた。
「だいぶ感覚が鈍っていると思いますが、、、一つ」
秋月はバイオリンを取り出し、弦の調整をしてから、弓を天高く振り上げたかと思うと、力強く演奏を始めた。
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