第3話
「ここ一ヶ月で眠り病の患者数が急激に上昇し、幾何級数的に増えていますね?しかもその99%は日本人と言うじゃないですか」
コメンテーターの安斎が患者数急増の話に戻す。
「ここ一ヶ月で特に何か大きな事件はありませんでしたよね?」と井場は問いかける。
「そうなんです。特にトラウマを与えるような巨大や事件は日本では発生しておりません。そのため、我々は目下、他の要因を探しておりますが、患者は年齢も性別もバラバラで共通点が見つかっておらず、難航しております」
「世界中の医学会はこの症状解決にに対して全力で望む所存です」
目が乾燥していた。思わず秋月は瞬きをする。まだこんなTV番組に期待してしまうなんて。思わずため息が出た。
TVのスイッチを切って、また妻のすずは目線を下ろす。音が消え、再び心電図の音が部屋を満たす。妻のすずも急激に慢性的不起症患者数が増え始めた頃になった。その頃のすずもあることが原因で精神的にかなり参っていた時期だった。その頃はすずのトレードマークであった笑顔は影を潜め、苦悶の表情を浮かべることが多くなった。秋月が心配そうにすずの顔を覗き込むと、頑張って笑顔になろうとするが、その顔は強張り、張り付いたような笑顔を浮かべた。巨大な喪失を経験したすずにはもう色彩を欠いた薄灰色の世界にしか見えなかった。
コンコン。
ノックの後にガラーっと病室の扉が開いた。
「葛城先生!どうでしたか」
秋月は立ち上がり、入室してきた医者の方を向く。
問いかけられた葛城真堂は首を横に振る。
「どうやら我々の病院でも処方を見付けることは中々に難しいです。世界的な難病ですからね。しかし諦めないでください。旦那さんのあなたが諦めないですずさんの傍にいることがどんなにすずさんの力になっていることか。すずさんの体には何も異常はありません。ただ覚醒しないという点のみが、健常者と異なっていることです。ですから、焦らず見守っていきましょう。」
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