第20話 幸せにして下さい
当日、緊張しながらも奏と待ち合わせして、教えてもらった通り綺麗なイルミネーショを見に行き、ホテルでディナー、帰りにケーキとシャンパンを買って元彌の自宅へ行く・・・という流れを何とか遂行していた。
部屋についてから2人で並んでソファーに腰を下ろす。ケーキを取り出し、シャンパンを開ける。
「そうだ。タイミングがわからなくて・・・これ、僕からのプレゼント」
そう言って奏は持っていた袋を差し出す。元彌は袋から取り出し丁寧に包みを開けていく。箱の中身はお揃いのマグカップだった。
「元彌が何が欲しいのか全然わかんなくて、結局コレになっちゃった。ほら、ここには僕専用もないし、こういうのカップルっぽいでしょ?」
奏の口から出るカップルと言う響きに元彌は目を潤ませる。それを見た奏はいちいち感動しすぎだと笑った。
「で、僕にはないの?なんか、今日袋とか持ってなかったけど」
奏の問いかけに元彌は恥ずかしそうに鞄から一枚の紙を取り出す。
「何?これ?」
元彌から渡された紙には部屋の間取りが描かれていた。そして、これも・・・と元彌は鍵の入った箱を差し出す。
「これが、プレゼントになるのか正直わからないけど、俺、この部屋借りたんだ。それで、急だけど三日後に引っ越しする」
「それで、ダンボールが積み重なってたのか・・・」
奏は部屋の隅にある段ボールを見つめ呟く。元彌は顔を真っ赤にしながら口を開く。
「あの、今すぐとかじゃ無いけど俺と一緒に住みませんか?」
「えっ?」
「本当に今すぐじゃなくてもいいんだ。元々、奏と付き合い始めてからもう少し広い部屋に引っ越したいと思ってたから・・・奏もずっとマンスリーに住む訳には行かないだろ?ここ、奏と俺の職場の中間地点なんだ。だから、その鍵使っていつでも泊まりに来てもいいし・・・でも、本当は一緒に住みたい」
「元彌・・・」
「と、とりあえず、その鍵はもらってくれる?」
「うん・・・」
どちらとも取れる奏の反応に失敗したかな・・・と焦り始め、元彌は俯く。
奏はそんな元彌の頬に手を当て、顔を上げるように促すとそっとキスをする。
突然の事に体が固まっている元彌を他所に、奏は膝に跨るように座るともう一度キスをする。
「あ、あの、奏?」
抱きしめていいのか、悪いのかわからない元彌は両手を宙に浮かせながら動けずにいた。
「元彌、僕、嬉しい。ちょっとだけ戸惑ったけど、一緒に住むって事はこういう事も考えてくれたんだよね?」
「えっ?」
啄むようなキスを元彌のおでこに、頬に鼻先に、口元に何度もする。元彌も躊躇いがちに奏の背中に手を回し、抱き寄せる。
「奏、いいの?」
元彌の問いに奏はふふっと笑う。そして、体を捻り、ダンボールの方へ指差す。
「だって、あれもプレゼントでしょ?」
奏の指先に目をやれば、昨日買ってきた薬局の袋から、コンドームがこぼれ出ていた。元彌は声にならない悲鳴をあげ、顔を染める。
「元彌の気持ちは気付いてたよ。僕に気を使ってたんだよね?でも、毎日好きだと言ってくれるのに、なかなかキスもしてくれなかったから少し寂しかった」
「ご、ごめん。奏の気持ちが追い付くまで待とうと思って・・・」
「うん。わかってる。でも、少しくらい態度で示してくれてもいいんじゃない?少なくても今の僕はそうなってもいいと思うくらい元彌の事が好きだよ」
「奏・・・」
奏の言葉が嬉しくて力強く抱きしめる。
「奏、俺の事初めて好きって言ってくれた。本当に嬉しい」
「うん・・・待たせてごめん。ねぇ、元彌。僕を幸せにしてくれる?ずっと僕の側で僕だけを好きでいてくれる?」
「奏・・・ここ見てて」
元彌は少しだけ奏の体を離し、自分の胸をトントンと叩く。
「俺は奏が大好きだ。世界中の誰よりも奏を愛してる。俺がずっと側で奏を幸せにする。俺の初恋もこの気持ちも体ごと奏にあげる。俺の初めてを全部奏にあげる。だから、俺を信じてずっと側にいて欲しい」
真っ直ぐに奏の目を見つめ、奏への想いを告げる。奏は目に涙を浮かべ、小さく頷く。
「元彌の胸元にはずっと何も見えていないよ。元彌の気持ちはまっすぐに届いてる。まだ好きとしか言えないけど、それでも僕の気持ちは真っ直ぐに元彌へと続いてる。それは僕の偽りの無い気持ちだ。だから、元彌も僕を信じて」
「うん・・・奏。俺を選んでくれてありがとう。心から愛してる」
いつの間にか2人で涙を流しながら微笑み合う。
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