第19話 クリスマスデート
あれから正式に付き合い始め、毎日楽しい日々を送っていた。
だが、元彌にとって初めての恋人とのクリスマスというビックイベントを目前に頭を悩ませていた。
一ヶ月前からYUUに準備するのが遅いと急かされながら何とかホテルを予約して、RINとNANAにデートスポットの場所を教えてもらい、元彌はプレゼントにある物を用意していた。
そしてクリスマス前日、グループチャットでいつもの様にみんなと話していたら、NANAがとんでも無い事を言い出した。
「ところでもっくん、例の物は用意しましたか?」
「例の物って?」
「もっくん、現役J Kに言わせる気?」
「そうだ、いくら何でもJKには過激だ」
RINとYUUも例の物について知っているのか、口を出してくる。
「だから、例の物って何だよ?」
「もっくん、本当にわからないの?」
「これだから童貞は・・・」
呆れた口調でYUUとRINは言葉を続ける、すると、NANAが徐に言葉にした。
「コンドームとローションです」
その言葉に元彌は口に付けたお茶を吹き出す。
「なっ、何を・・・」
「何言ってるんだ?付き合ってもう二ヶ月になるだろ?そろそろ進展しないと」
「そうよ、いつまでも待たせてるともっくんがノンケだって知ってるから、BLあるあるの展開になるわよ」
「そうそう。男の体には興味ないのかってパターンっす」
次々に出てくる内容に元彌はポツリと呟く。
「そりゃあ、できればしたいけど、奏はまだ気持ちの準備が出来てないかと・・・それに・・・俺・・・キスもまだなんだ・・」
元彌の告白に三人がドン引きする。
「うわぁ・・・サイテー。あんだけ好き好き言っといてまだとか・・・」
「これだから童貞は・・・」
「もっくん、奏くんはきっと悩んでますよ。このままでは振られますよ」
三人の言葉に元彌は焦り出す。
「そ、そうかな?で、でも、ほら告白してくれた時にまだ怖いって言ってたし、まだそう言う意味での好きではないのかなって・・・」
「あれから二ヶ月だぞ?奏くんが前を向いて、もっくんを好きになりたいと言ったんだぞ。それを信じなくてどうする?」
「そうよ。あんな目にあったのに、それでももっくんと始めたいって言ったのよ」
「もっくん、奏さんの為とか言ってるけど、要は奏さんの事を信じられないチキン野郎って事ですか?」
三人からの容赦ない叱咤に元彌は項垂れる。
「とりあえず、準備だけはしとけ」
「まずはキスからだけど、そっから盛り上がるかも知れないでしょ?」
「事前にやり方をちゃんと予習してくださいね」
「わ、わかったよ。今から買ってくる」
「もっくん、もっくんも魔法を解くチャンスだし、確証はないけど奏くんの魔法も解くチャンスなのよ」
「そうだ。いくらもっくんや俺達が偽りなく奏くんに接しているからと言っても、あの魔法がある限り、奏くんは人間関係で悩むはずだ」
「もっくんの奏くんへの愛は本物なんでしょ?奏くんの魔法を解いてあげて下さい。私達も友達として奏くんには心から笑って欲しいんです。そして、その笑顔の素はもっくんであって欲しいんです」
「みんな・・・俺、頑張る。明日、無理でも絶対解いて見せる」
三人に励まされ、チャットを終了させた元彌は薬局へと急いだ。
いきなりは無理だけど、いつかの為に用意だけはしよう。奏を、俺達が幸せになる為には必要な通過点だ。焦らず雰囲気に任せてその時を待とう。そう思いながら薬局で真剣に選びレジへと運ぶが、ここでも童貞全開の元彌は初めてそういった物を買う恥ずかしさから、顔を赤めるのだった。
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