第13話 想いの先
「いやぁ・・・この前、会った時に渡しそびれた物があって集まったのに、まさかもっくんの想い人に会えるとは・・・」
YUUの言葉に慌てて元彌が口を挟む。
「急に何を言い出すんだよ」
「・・・あの、僕の事聞いてるんですか?」
元彌を睨みながらYUUに尋ねる。YUUは肩を窄めながら奏に返事をする。
「いや、めちゃ好きな人ができたってだけ聞いてる」
「もう、やめろっ」
「うわぁ、もっくん顔が真っ赤でキモイ」
隣からRINが冷やかす。YUUの隣では彼女がクスクスと笑っている。
「まぁ、何がどうなっているのか知らんが、また忘れると困るから先に渡しとく」
そう言いながら、元彌たちの目の前に封筒を差し出す。
「招待状が出来たんだ。来年の春だ」
その言葉に封筒を開けると、結婚式の招待状が出てくる。可愛らしいデザインのカードだ。
「うわぁ、いよいよっすね」
NANAがまじまじとカードを見つめながら答える。
「NANAはいらんが、他の2人はガッポリ祝儀を詰めてくれ」
「勘弁してよ。たださえ、私、ご祝儀配りしてるんだから」
ブツブツと文句を言うRINに彼女が口を開く。
「冗談です。ここにいる皆さんからはご祝儀は入りません。大事な友達だから、ただ来てもらって祝福していただけると嬉しいです」
「できた嫁さんだ」
ポツリと呟く元彌を見て、彼女はもう一つ封筒を取り出す。
「奏さん、良ければ奏さんも来てもらえませんか?」
「えっ・・・」
「実は、もっくんから連れてくるって聞いて用意してんだ。もっくん、友達少ないだろ?そんなもっくんの友達は俺達の友達だ」
「お前・・・かっこいいセリフを言ってるように思ってるだろうが、それはカッコよくないぞ。俺を貶してる」
元彌はYUUを睨むが、YUUはお構いなしに奏へ話を続ける。
「もちろん友達枠でご祝儀は入りません。ただ、楽しんで美味しい物食べて、ついでに祝ってくれたら嬉しい」
そう言って奏に微笑む。隣にいる彼女も頷きながら微笑む。
「ありがとうございます・・・僕、結婚式は初めてなので嬉しいです。必ず行きますね」
奏は嬉しそうに封筒を受け取る。それを見て、元彌はニタニタ笑う。
「もっくん・・・きもい」
冷たい声でRINがそう呟くと、周りが声を出して笑う。ムキになって拗ねる元彌を見て奏も声を出して笑った。
帰宅して奏が風呂に入っている間、元彌は寝室に布団を敷く。
今日は別々に寝ないと体が持たない・・・布団にシーツを掛けながら元彌は邪な考えを振り払う。
風呂から出てきた奏が寝室へと入ってくる。その色気に顔を赤らめながら元彌は入れ替わりで風呂場へと逃げる。
風呂から出ても明日はお互い仕事だからと、早々と布団に入る。リモコンで部屋の明かりを小さくすると奏が声をかけてきた。
「友達・・・いい人達だったね」
「えっ?あ、あぁ。俺、こんな体型だし、人付き合い苦手だけど、あいつらはそれも理解してくれてて、こんな俺に優しくしてくれる。うん、いい奴らだ」
「もっくん・・・」
「えっ!?」
「ふふっ、もっくんって呼ばれてるんだね」
いきなり愛称呼びされ笑う奏にドキドキする。
「あの子達も付き合いが長いんだね。それでいて、この先も誓い合う関係になる・・・凄いや。僕達はどこで間違えたのかな・・・」
奏の寂しそうな声に元彌は言葉を詰まらせる。
「きっと、とっくの昔にズレてしまっていたのに、僕がそれをみないフリをした。そこからもう間違っていたのかも知れない。僕が始めた見ないフリが、崇にとってもズレを気付かせない原因になったのかも知れない」
「奏だけのせいじゃない。ズレに気付かず、調子に乗って奏を裏切り続けたあの人にも責任がある」
「そうだね・・・もう寝ようか」
「・・・おやすみ、奏」
「うん、おやすみ。もっくん」
揶揄うように笑いながら返事をした奏の声は、やはり何処か寂しそうだった。
「でたな・・・」
その声に目を開くと、崇が目の前に立っていた。
あぁ・・・俺はバカだ。奏と一緒に入れる事に浮かれて、こう言う体質だと言う事を忘れていた。よりによってここに来るとは・・・
元彌を睨みながら見下ろす崇に、元彌は負けずと睨み返した。
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