第5話 あとは空飛ぶカメが居れば

前書き失礼します。

読み返したところ少しくどいと思い、方針変更もあり投稿済みの1話から4話分を大幅に改稿してかなり別物になっています。

5話投稿の時点で読了済みの方はお手数ですが読み直していただけると助かります。

よろしくおねがいします。


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ライオベントが2階の協会長室に戻ると白い鎧の騎士のような風貌の男が待っていた。

「やぁ、これは魔銀級冒険者殿じゃないか、わざわざ待っていてくれたのかい?」

「えぇ、ところで協会長、お気づきかと思いますが、イズミさん、でしたか?あの時彼女は・・・」

ライオベントはどさりとソファに腰を下ろした。

「あぁ~、そうだね魔力の波動を感じなかった。身体強化は使ってないね・・・彼女はの状態であれなんだ、しかもまるっきり本気を出していない、とんでもないよ、おじさんあの子と喧嘩したら負けちゃうかもね」

「おや、大金級魔法使い、光芒のライオベントの言葉とは思えませんね。」

「勘弁してよ、おじさんはもう引退したんだから」

「まぁ正直なところ私も彼女とは喧嘩はしたくないですね。」

「へぇ、魔銀級の君でもダメかな?」

その問いに鎧の男はにこりと笑った。

「勝敗はともかく彼女はとても思いやりのある優しい子のようですからね。喧嘩などして嫌われたくはありません。」

「あー!ずっこい!ずっこいねぇその言い方!清廉の騎士だなんて呼ばれてるくせに!」




「はいどうぞ、さすがに1日で大鉄級に昇進しちゃった人は居ないわよ?」

「ありがとうございます!ラッキーでしたね。」

ところ変わって冒険者協会1階、冒険者証を大鉄級に更新してもらったイズミはあることを思い出してポンと手を打った。

「あ、そうだ!アリサさん、ゴブリンって買い取りとかしてますか?」

その言葉にギクりとするゴブナン、それを見たアリサは

「あー・・・アレはちょっと買い取るわけにはいかないかしらね」

そう言って苦笑した。

「あぁいえ、アレじゃなくてですね、実は冒険者登録する前に一匹蹴り倒したのをじげ・・・収納に放り込んであるんです。」

「あ、本物の方ね?残念だけどそっちも丸ごとの買取はしてないわね、挽潰したり焼いたりして土に混ぜ込んだら肥料になるかもしれないけど、逆に言えばそれくらいしか使い道がないの、胸の中にある魔石だけなら買取もあるわよ。丸ごと出しちゃうと解体手数料でトントンくらいになっちゃうけどね。」

「なるほど、じゃあそのうち適当に捨てちゃいますね。」

「分かってると思うけど町の中や街道に廃棄しちゃだめよ?」

「もちろん!森の動物の餌にすることにします。」

「うんうん、イズミちゃんはいい子ねぇ。」


イズミは依頼掲示板に足を向けた。

「今日はまだ少し早いので何か適当な依頼をやっちゃおう!どれどれ?」

張り出された依頼書を眺めていると気になるものを見つけた。

「ブレードウルフ・・・L○-84I・・・いやいや、でもなんだかかっこよさそう、これにしよ!」


「偶に森の中で新人さんが串刺しにされちゃうの、とっても危ない魔物よ。無理はしないでね。」

「はーい、でも多分大丈夫!心配しないでください」

イズミはアリサに心配されながら受注して森に出かけた。


森の中をナノマシンで走査してそれらしい生き物に目星をつけたイズミは気付かれない程度に近づき、そこでゴブリンの死体を取り出し、ナノマシンで成形したナイフでその旨を開いて魔石を取り出し、次元庫に放り込んだ。


死体を放置して木の根元にしゃがみ込み、身体の活動レベルを極限まで低下させると、イズミから生物の気配がほぼ消えた。


しばらく待つと頭部そのものが逆刃の文化包丁のような形をした狼たちが5頭、血の匂いに誘われてやってきた。


「ギ○ンだあれ・・・ちょっと細いけど・・・」

そんなことを言いながらナノマシンを日本刀のような形に成型するとゴブリンの死体をむさぼる群れの1頭にすっと近づきその首にさっと振り下ろした。


ほぼ単分子に近いその刃は途轍もない切れ味でいとも簡単に頭を斬り落とし、そこに至って初めてイズミの存在に気付いたブレードウルフたちのうち2体が彼女に襲い掛かった。


が、一頭は胴を真っ二つに断たれ、もう一頭はその頭を引っ掴まれた勢いで首がへし折れ、様子を見ていた残りのうち1頭に投げつけられ、仲間の首にその頭を突き立てた。


最後に残った群れのリーダーだった1頭はわき目も振らずに逃げ出した。

必死に逃げた、つもりだったが疾走しているはずが景色は変わらず、視界は妙に低い。

地面に転がった首だけになった彼は混乱の中その意識に幕を下ろした。


「ふむん、我ながら残虐ファイトにも躊躇なし、これもナノマシンの影響かな?この世界で生きていくには都合がいいけど」

イズミがブレードウルフの死体を次元庫に放り込みつつそんなことを言っていると何かを感知した。

「ん・・・?これって・・・」




街道に一台の馬車が立ち往生していた。

馬が都合9匹横倒しになって死んでいる。

周囲には揃いの制服を着た者たちが8人、馬車を守るように立っている。

護衛の騎士団と言ったところだろうか?

上空には6つの大きな影が彼らを狙っていた。

トカゲのような見た目、先端部が肥大したしなやかな尾、後肢は力強く発達し、前肢が翼になっている。

ワイバーンと呼ばれる魔物である。


「くそったれが、馬を真っ先に狙い、統制の取れた動き、野生の魔物ではない!訓練されてやがる」

団長が悪態をつく間に一匹のワイバーンが馬車を目掛けその尾を振り下ろす。

ワイバーンの尾の先は棘が生えた鈍器のようになっている。


「させん!うおお!!」

馬車を破壊されるわけにはいかぬと一人の団員が身を挺してそれを防ぎ

「があっ!」

叩き飛ばされ倒れた。


「このようなところであの方を失うわけにはいかん!刺し違えてでも守るのだ!全員覚悟を決めよ!」

「おう!」

団長の叫びに団員たちが悲壮な覚悟を決め奮い立った正にその時、森から一人の少女が走って出てきた。


「な!?こんな時に、逃げなさい!!」

リーダーの男がそう叫ぶが

「ていっ!」

少女は遥か高く跳躍し、

「どぉりゃぁーっ!!」

一匹のワイバーンの延髄にその踵を叩き込んだ。


延髄を砕かれ、バランスを崩したワイバーンは墜落し、即死した。

その傍にスタンッと降り立った少女は

「おー、これは・・・ギャ○スだ、平成の方、あとは空飛ぶカメが居れば・・・」

などとよく分からないことを言っていた。

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