③
「……ぐすっ、ぐすっ」
夜イチ、瑞希が泣いているのをみた。
話は聞かなくてもわかっていた。
波瑠斗さんに告白して、フラれたそうだ。
ぼくは彼を励まそうと思い『女子は砂の数ほどいるよ!』と腹を蹴ったら、すごく睨まれた。
目を青くして、ぼくを睨んでいる。
「優しくしろよ! なんなんだよ! どうせオレのことを嗤っているんだろ? そうだよな、琥珀はモテるから。筋肉もあって、執事みたいで、素敵な男の子だもんな! オレはお前とは違うんだよ!!」
「……嗤ってなんかいないよ」
「じゃあ、なんでオレが波瑠斗さんにフラれたかその理由を知っているのか? 知らないんだったら、教えてやる! 波瑠斗さんはお前のことを好きだったそうだ!」
ぼくを睨みつけている瑞希にそう言われる。
知っていた。それでも友達だから言えなかった。
「卑怯者!! オレがフラれるのをわかっていて、自分は呑気に桜史郎さんと付き合いやがって! なんなんだよ! お前なんて友達でもなんでもねぇよ! もうどこにもいくなよ! オレの前から姿を見せ続けろ!!」
「……ごめん」
瑞希と喧嘩して、彼はぼくを無視するようになっていった。
辛かったが、泣きはしなかった。
だって、ぼくは男の子だから……。
※※※
「……仲直りしたくて、でもどうしたらいいのかな?」
「ふーん、別にほっておいてもよくない? 所詮、その程度の関係だったってだけじゃん。自分の恋愛がうまくいかないからって他人に八つ当たりするなんて、ホント最高に“男”ってかんじ」
「でも、瑞希は友達だから……」
カラオケで桜史郎さんに相談してみたけど、彼女はスマホを触りながらTikTokを見ているだけで、全然相手をしてくれなかった。
付き合う前はあんなに大切にしてくれたのに、最近はどんどんぼくに対しての扱いが雑になっている気がする。
「てか、また私ん家こない? 今日、親帰ってくるの遅いから夜まで一緒にいれるよ」
「……でも、ぼく門限があるし」
「いいじゃん、いいじゃん。家きてよー。あ、ピルはちゃんと用意してるからね」
桜史郎さんがぼくを家に呼ぶ理由は一つだった。
いつもみたく、身体を重ねたいだけ。
高校生女子だから性欲が強いのはわかっていたけれど、自分のことをそういう目でしか見られていないのはすごく辛い……。
女の子って一度身体を許したら、そうなっちゃうのかな。
「え、なに泣いてんの? 友達に絶交されてそんなに辛い? 大丈夫、大丈夫。私が辛いこと全部忘れさせてあげるから。いまここでスッキリさせてあげよっか?」
桜史郎が鼻の下を伸ばしながら、ぼくに近づいてくる。
狭い個室、薄暗い部屋。
潰れかけのカラオケ屋。
店員さんは来る気配がない。
彼女はぼくの太ももに触れ、ズボンを脱がせる。
「……快楽だけが、すべてを忘れさせてくれるんだよ。ほら、さっさと脱いで」
ぼくは涙目になりながら、服を脱いだ。
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