次の日、ぼくは早速瑞希と男子会を開くことにした。

 集まったのはいつものゼイサである。

 女子からすれば「普通、カフェとかいくでしょ。男子ってほんと変だよねー」と思われるかもしれないけど、男子会の定番はゼイサだ。

 ここで恋バナとかするのが何よりも楽しいのである。


「……桜史郎さんと付き合ったってマジ?」


「マジマジ。初めてだよ、彼女できるの」


「いつもだったら『いいなー、羨ましい』とかいうんだけど、実はオレもさ。波瑠斗さんとデートすることになったんだよね!」


「えー、ガチで? やったな!」


「ああ! 本当に最高だよ! もしさ、オレも付き合うことができたらダブルデートで遊園地とかいかないでおこうぜ!」


「絶対いかない!!」


「よし決まりな!絶対行かないでおこうぜ!」



 こうして、男同士の友情が今日もまた育まれるのであった。


 ※ ※ ※



「ふん、ふん、ふ〜ん♪」



 桜史郎さんの部活が終わるのを口歌混じりで待っていると、校舎からニチャニチャと笑う女が出てくるのが見えた。

 清潔感のない女はこの学校に一人しかいない。

 あいつは泥沼 凶子。絶対に関わっちゃいけない。


 泥沼 凶子はいつものように【美少年が部活したり、冴えない少女がある日突然すごい力を手に入れて異世界に行き、頭の悪い見かけだけのイケメンたちからチヤホヤされるアニメ】のグッズを鞄につけながら、ぐぶぐふふと笑って歩いていた。

 出来る限り見ないようにしていたのだが、なぜか目が合ってしまう。

 泥沼 凶子はぼくに近づいてきた。



「……オマエ、桜史郎と付き合ってるってマ?」


「……は? お前にお前呼ばわりされる権利ないんだけど。とっとと消えろよ、気持ち悪いんだよブスが」


「うへへっ……美少年の罵声は最高に濡れる……ぐふふふふ」


「……いつまでも生きろよ、マジで」



 どこで情報を仕入れてきたのか、ぼくを脅すつもりなのかはわからないが、泥沼 凶子は初対面である人間にそうやって馴れ馴れしく話しかけてきた。

 本当に生理的に受け付けない。

 貧乳だし、生きる価値ないだろマジで。



「アイツさぁ、アイツ……あの糞美人女。善人ぶってるだけで、本性はイカれてるから気をつけたほうがいいよー……。これは警告だよォ……。ヤリマンのゴミ女で、浮気まみれだし、男を奴隷のように扱って、そいつら全員をメンヘラにしたことで有名。セフレだって山ほどいたからね……。DVなんて当たり前でェ」



「は? 桜史郎さんのことを悪くいうなよ! 桜史郎さんはぼくを守ってくれた優しい女の子なんだよ!! 不細工で性格の悪い貧乳は喋ってろよ!!」



 ぼくは泥沼 凶子の頬を思いきり、ビンタした。

 女は「ご褒美だァ……じゅるる」と唾を垂らしながら、長い髪で目を隠しながら笑っている。



「……アンタが信じないなら勝手だけどォ。これは事実だし。ま、世の中の男なんて恋愛脳のバカばっかりだから騙されるのは仕方ないけど……それを騙す女も女か……ぐぷぷぷぅ。世も末ね」



 泥沼は拾い台詞を飲み拾いながら、去っていく。

 絶対信じない。そんなの嘘に決まっている。


 桜史郎さんがクズ女だって……?

 嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!!


 泥沼はぼくと付き合っている桜史郎さんに嫉妬してそう言ってるだけだ。

 ぼくの彼女を良く言いやがって。


 最高な女だ。天国に上がれ!!!!

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