第2話

授業中は、大抵3つの行動をする者が現れる。


1つ、真剣に授業を受ける人。

2つ、寝てしまう人。

3つ、授業を受けているフリをする人。


僕はどれかと言うと、多分3に限りなく近い。


別にいつも授業を受けてないわけではない。


ただ、単に今日は何故か当たり前のことに疑問を感じてしまっただけだ。


僕は黒板を見ようとすると、その手前にいる黒髪ロングの姿に目を奪われてしまう。


結城さんだ。


結城さん。昔は読書なんてするような人じゃなかった。


どこのどいつが偉そうに言ってると思われてしまうかもしれないけど


僕は、幼少期の頃はかなり結城さんと仲が良かった…気がする。


幼稚園の時は迎えのバスではいつも隣に座ってたし、小学校の時は放課後によく2人でブランコで遊んでいた。家が近所だったし親同士も仲が良かった。


しかし、そんな2人の仲もある日を境にプツンと切れてしまった。


『 みらいへ。今日の帰りに昔遊んでたブランコのところへ来てください。話したいことがあります。』


何となくだけどこんな文章だったような気がする。


小学6年生。4年前の今日、胸の奥でゆらゆらするこの気持ちが、ブランコのせいではないと気づいた僕は結城さんにラブレターを書いた。


下校前にする掃除の時に、それをこっそり結城さんの机のなかに入れた。


そしてそれを結城さんが見たのも左斜め後ろのさらに斜め後ろから確認していた。


期待やら不安やら残り寿命の短いランドセルを背負って遊具へ向かった。


よくよく思い返すと時間を記載するのを忘れていたことに気づいた僕は、きっと1時間後には来るだろう、という呪文を3時間は唱えていた。


そんな純粋な思いも虚しく結城さんは、来なかった。


それからというもの、僕と結城さんは話すことも、目を合わせることもないような関係になってしまった。


フラれた?ショックが強かったのか、元から友人が少なかったのか、それからは学校で喋ることもだんだんと少なくなっていった。


…それから月日は流れて。


元気にブランコに揺られていた未来は、今や読書が好きな文学少女になった。


そしてやんちゃ坊主だった僕は、クラスの端っこでこんな過去を物思いにふける男になった。


現実は辛いものだ。あの日が原因でここまで差が開くとは、あの頃の僕に笑われてしまう。


いつもは眠い授業でもこんなことを考えていると目が覚める。


どうしてこのタイミングで思い出してしまったのかは分からないが、結城さんを目で追ってしまう。


きっと未だに彼女に何かを求めている自分がどこかにいるのだろう。


長い授業も、一瞬のように過ぎ去っていき外は夕焼け。教室は授業中の緊張感が一気に溶けて騒がしくなった。


皆、ロッカーに閉まってある鞄を取りにいったり、教科書をしまったり、と帰りの支度をし始めていた

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