お変わりないようで

マレリ

第1話

朝が来た。

だから何だとかいうことは何もないんだけど


とりあえず僕は学校へ向かう為、スマホのアラームを止め、二度寝をして、目が覚めたら起きて学校へ行く準備をした。


階段を降りて、台所へ向かうと

机の上に置いてある紙に「冷蔵庫に入ってるよ」と、母が作ってくれた朝ごはんをレンジで温める。


薄暗い部屋で1人、ご飯を食べるこの時間にもいい加減慣れてしまった。


制服を着て、鞄を持って、定期券もポケットに入れて、思ったより眩しい外へと僕はドアを開けた。


最寄り駅まで、歩いて5分。

電車に乗って30分。

そこから歩いて約15分。

簡単にまとめると僕の登校ルートは

こんな感じだ。


この時間は人に伝えても何の面白味もないような、言葉では言い表せれない内容のないものだ。


イヤホンを付け、人と目線が合わないように、なるべく目立たないようにと。


「そんなこんなで」って曖昧にしてしまうのはどうかとは思うけど、学校に着いて教室へ向かう。


僕は、高校1年生なので教室の階が1番上にある。7月も中盤に差し掛かる頃、暑苦しい空気が漂っている。階段を登るのにも一苦労だ。


いつも教室に辿り着く頃には制服は汗に染まってしまっている。


教室に入ると何だか騒がしい。


いや、いつも通りの光景なのかもしれない。


「だから、忘れちゃったの。ごめんってば!」


「いーや!昨日も言ったのに、忘れるなんて嘘だろ?」


教室の窓際の1番前の席で絵に描いたような高校生カップルが談笑してる。


「はぁ。女にはどうしても嘘をつかなきゃいけない時ってものがあるのよ?男には決して気づかれてはいけないようなね!」


秋山琴乃さん、言動からわかるようにThe一軍女子って感じの人。少し茶色がかったボブヘアーで身長も高くモデルにいてもおかしくないと思えるルックスだ。


「何開き直ってんだよ。嘘って認めるのか」


雪平太郎くん、こちらも一軍って感じの体育会系の絵に書いたようなクラスの人気者。夏服を着ると余計にその筋肉が目立つ。


「いいじゃない、誕生日なんて来年、再来年と嫌でも運ばれてくるものなんだから」


「いや俺にとって今日、この時は今しかないんだよ!」


「ふーん。ねぇねぇ未来ちゃんはどう思う?」


秋山さんは太郎くんの隣の席に座ってるふんわりとした雰囲気がある少女、結城未来さんに話しかけた。


結城さんは、読んでいた本を指で挟んで軽く閉じた。


「ん、何の話?」


「太郎くん、今日誕生日なんだけど私ったらうっかりプレゼント持ってくるの忘れちゃって…怒ってるみたいなんだ」


「何がうっかりだよ」


「でも誕生日ってどうせ来年も来るじゃん?なら別によくない?って」


「んー、それは、賞味期限切れるのを待つしかないと思う」


「…え?賞味期限…ってどゆこと?」


「あ、いや、何ていうか…まぁ上書きすれば良いんじゃない?ってこと」


「…全く意味がわからないんだけど」


「つまり今年、太郎くんが誕生日プレゼント貰えなかったならそれを上書きするくらい喜ぶことをしてあげればいいってことね?」


「ん。そゆことそゆこと!」


「なんで今ので通じるんだよ」


「まぁ、女の子同士通じ合うものがあるのよ」


ふふっと口元を隠し笑うと、結城さんは再び本に目を戻し真顔でページをめくる。


秋山さんたちも別の話題に切り替えて盛り上がっている。


そんな光景が流れるように過ぎ

授業開始のチャイムが鳴った。


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