第二幕 そもそもこの設定、天使が登場するには相応しくないかも?
じゃあ、これもなのか?
いつの間にか、リンちゃんには彼氏ができていて、相思相愛にしか見えないようで……俺はもう静かなる中庭の木陰から、そっと見ているだけだ。それ以上は望めない。その彼氏の名は「
――それはいい。だけど、
俺は
なぜ俺に?
……目の前の写真で凍り付いた。いや、血の気が引いた。これが現実なら逃避したいとさえ思えた。写真の女の子は、どう見てもリンちゃん。その後に続く音羽の言葉も現実の中に存在して、敵対する
『リンちゃんは何をしたのだ?』と、そんな疑問が浮かばずに『この世界は、リンちゃんみたいな天使が、関わってはいけない場所だ』という思想が、脳全体を支配していた。
だけど、台詞としては、
「音羽さん、本当にこの子が狙われてるのですか?」と、聞き直す始末。
「残念ながら、本当よ」
お見通しなのか? そのワンテンポ遅れて出た言葉。
不気味なほど正確な情報。『俺のこと、どこまで知ってるのか?』と一度は訊いてみたい程だ。常に監視カメラで見張られているような感覚。それに対して……きっと誰もが音羽のことを知らないと思う。
――関われば関わるほど、ミステリー漂う人だ。
まず『音羽』というのは、名字なのか名前なのか誰も知らない。更に、それが本名なのかも誰も知らない。普段は「食堂のおばさん」で通っている。裏では久保、
「この子を狙ってる情報屋は十名。処理してくれますよね?」
と、迷いがない。決断に。
相手は同じ情報屋だ。たとえ仲間であっても、躊躇うことなく処理するだろう。
「ああ、その組織ごと全滅してやってもいいぜ」
「やるのは料金の範囲。サービスは一切なしよ」
――さすが音羽さん。
料金以外の仕事に興味なし。だから俺はこの人と組んでいる。
「ああ、もちろんだ」
そう言った途端、この夕陽差し込む食堂の中、俺と音羽以外の人間が姿を現した。……現わしていた? 間抜けなことに気付かなかった。気持ち悪い程、気配がなかった。
まるで風……
「その処理は、俺にも関係あることなんだ」
と、そいつは言った。見上げる程に背の高い男。あと「
「風の名?」
と、思わず復唱。耳を疑った。
いくら俺が小柄で、ボサボサ頭で、中等部と間違われることも屡々で、さらに女の子のような面だからって、ふざけるな! と、心底から込み上げてきた。
「この処理の件、どう関係あるかは知らないが、俺は誰とも組む気はないね。とくに『風の名』なんて、ふざけた奴なんかとはな」
こいつの名前なら知っている。
リンちゃんが「貢君」と呼んでいた奴だということは。
「ふざけてはいない。俺は本気だ! 守りたい者があるんだ。だからここにいる」
と、野太い声で言い返してくる。
守りたい人とは言わず、守りたい者。……予想通りに
「ならば、どこまで本気か見せてもらおうじゃないか」
「ああ、臨むところだ」
気障な割には、
あまり台詞に
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