さあ、今こそ跳ぶのだ! 必殺情報屋稼業。

大創 淳

第一幕 ……こうして変貌した情報処理。


 我が学園は、どの学校よりも時代を先取りしている。具体例を述べるなら、情報処理という名の授業が存在してベーシック語、その次にフォーマット語というプログラム言語を学び、ゆくゆくは情報処理の検定試験を受けることになる。


 ただ理屈を学び筆記のみではなくて、実習というものが存在する。それを自在に操れる者が、情報処理のクラブに入部できる。しかしながら、高等部になると授業に組み込まれている。授業料を払っているのだから、当然の権利だ。


 実習室にはな、草創期のモデルだが、PC(Personal Computer)が一教室分ひときょうしつぶん、五十台ほど導入されている。実際にフロッピーディスクを挿入し、起動するのだ。



 ――クドクド言ってすまん!


 単純に述べると、プログラムのお勉強。これが表向きの情報処理なのだ。


 だがな、どんな奴にも表があるならば、裏の顔を持っている。ジキルとハイドのように極端ではない。それだけの差だ。だけれど俺たちの裏の顔は、鬼でなければならない。


 これから述べることは、

 俺たち、裏の情報処理の話だ。


 校則の網を潜って蔓延はびこる『いじめ』などの問題を、情報を集めて先生に逐一密告。その証拠などは生徒会に提出するものだと思っていたが、……間違っていたのは、俺の方だった。そこは社会でもよくある暗黙の了解。或いは不合理だけれど常識の類だ。


 つまりは『処理』も兼ねる。


 だから報酬というものが存在するのだ。


 ルールは簡単? 必ず処理(始末)すること。相手は手加減なしでも、どの様な状況にあっても殺人は過分を犯すに値する。――だからこそ、ルールは厳守だ。


 噛み砕き、解読を重ねて、

 考え抜いた結果、『相手の自由を奪って生徒会に届ける』で定着した。



 そのため、武器は麻酔針が主流。裏ルートで簡単に入手できる。


 たまに飛び道具。刀のような棒。稀に糸を使う者まで出現した。


 そんな中、モラルは崩れる。


 ギリギリのラインは保つものの、もはや学園を守るというコンセプトから外れ、あくまで『ナンバーワン』の競争で、今では情報屋同士の争いがメインと変貌していた。


 その争いに、いつしか巻き込まれていた。


 あの日、通り雨のちの夕刻のルームシェアで出会った天使。名はリンちゃん。或いはリンダとも呼ばれていた。……ああ、中三の時から同じ学園で、もう二年も経つのに、同じクラスになったことがないだけで、更に名字が『川合かわい』になっただけで、初恋からの進捗どころか、もうリセットされたような関係……にまで、至ってしまった。


 俺は彼女にとって過去の人にすらなれなかった。それでもいい。それでも心機一転の再会を果たしたくとも、流れる時は、それさえも、許してはくれなかった。


 俺は情報屋の争いに巻き込まれている身。そうはいっても今では被害妄想か。本当は報酬欲しさにドップリと浸かって、誰のせいでもなくなって……自業自得。


 それが『情報屋稼業』が持つ魔性だ。



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