第24推活 これが最上級ってコト?!
朝チュン。鳥の囀りが俺を起こす。
シラフになって、俺はとんでもないことをしてしまったことに気づく。隣を見ると、凛はまだ寝ていた。寝顔so cute。
2人とも着替えることを忘れていたようだ。
足を曲げることでミニスカートからのぞく、凛のしなやかな美脚が朝日に照らされて輝いている。襲いたい。けどお金払ってないからダメだ。おい、風俗脳やめろ。
俺は喝を込めて、シャワーを浴びて歯を磨いた。凛がとぼとぼと起きてきたようだ。
「昨日はすみませんでした……もうお嫁に行けません」
やはり引きずっているようだ。
「ん、なんのこと?」
「いや、おトイレ__」
「トイレ? 昨日飲み過ぎたみたいで記憶が曖昧なんだよね。凛が作ってくれたハイボール濃くてさ。あれ本当は炭酸水が4でウィスキーが1の割合なんだよね」
忘れたフリでいこう。実際記憶がとんでもおかしくない量の飲酒だ。
「え、覚えてないんですか?」
「何、なんか俺変なことしちゃった?」
「いえ! してないです! 私もシャワー浴びてきます!」
「おう。着替え出しとく」
「ありがとうございます」
凛はパーっと顔を明るくさせて風呂場に向かった。これでいこう。
大人は良い嘘ならついていいことが法律によって定められています。
簡単な朝食を準備し終わる頃に、凛はシャワーから出てきた。
俺がドライヤーで髪を乾かしてやると機嫌は全て治ったようだ。ニッコニコである。俺の周りの女の人、なんでこんな感情豊かなんだろう。
俺は感情っていうか、性欲が強く掻き立てられている、性欲が掻き立てられている、性欲がある、性欲が薄いの四段階くらいしかない。
事務所に送りとどけると、桃が凛をジロジロと見て二、三会話した後、俺に話しかけてきた。
「世界っち、本当に男みせた?」
俺は自信満々のドヤ顔を浮かべ、親指を立てた。しっかり耐えたぞ。
「そうなんだ、凛々あんな感じになるんだ。へー、ちょっと意外。次はあーしだからヨロ」
ん? よくわからないが、俺は親指を立てといた。凛にしてやれることで、桃にしたくないことなんて無いからな。
一度自宅に帰り、Blu-rayAVとVRゴーグルとTENKAを捨てた。さようなら、全てのエロンゲリオン。
牧町から指示を受けた引越し業者が訪れ、必要最低限の荷造りをして渡した。家具とかはあるらしいからな。
みら〜じゅ!と再集合すると、牧町が迎えにきてくれていた。促されるまま車に乗る。そう言えばどんな所なのか聞いてなかったな。
「きっとお気に召すと思います、ちょうど良い物件が空いたんです」
「楽しみぢゃーん」
「ワクワクしますね、広いベッド!」
「世界様と会ってから夢みたいな日々ですね」
「いやいや、俺はなんもしてないですよ」
「またまたご謙遜を。文字通り世界の英雄、人類の希望ですからね。天野も絶賛しております」
ははは。持ち上げられすぎて怖い。
あまり俺に期待しないで欲しい。
辿り着くと、超高級マンションのようなエントランスだった。当然のようにコンシェルジュがいる。支配人らしき人が牧町を見ると、小走りで寄ってきて丁寧に挨拶した。
一般棟とは別の、カードキーがないと入れない棟に移動する。俺たちはビビって何も喋らなくなった。エレベーターにのると、支配人は最上階である45階を押した。というより、45階と1階しかボタンがなかった。
「40階から上は1フロア一室となっております。下の階の音が気になるとうかがっていますので、44階もおさえてあります。宜しければ客間にでも使って下さい」
「牧町さん?!」
俺は堪えきれなかった。
「え、お気に召しませんでしたか?! すみません、すぐに新しい場所を」
「逆です逆逆逆!! ここ家賃いくらなんですか?! アマゾネスのジェフベゾスンとか投資家のバフォメットが住む家ですよねこれ?!」
「ああ、よかった。ここより良いとなると新しく建てる必要がありまして。もうすでに買取済みですので、お家賃はかかりませんよ」
「ええ……? あ、そうですか、どうも」
「何かご不満がおありでしょうか?」
牧町が不安そうに俺を覗き込む。
「いえ、まだ理解が及んでいないだけでして」
「何かあればいつでも仰って下さいね」
怖。
軽率に牧町にお願い事をするのは今後絶対に控えよう!!
中に入ると、モデルルームのように整っていた。みんな逆に興奮せずに呆気に取られている。現実味がないようだ。
希望通りリビングに簡易ステージが仕立てられ、野外ライブができそうなスピーカーとPA卓、照明まで設置されている。
別室にはヒカキーンしか買わないようなデスクトップWindowsと、配信機材、最高級360度3Dトラッキングカメラがあるスタジオと、レコーディングブースまでついていた。大手V事務所も真っ青な環境だ。
キッチンは最新のシステムキッチンで、簡易的なバーカウンターとワインセラーまであり、中には上等な酒がズラーっと並んでいた。
牧町が一晩でやってくれました、だと……!
あいつ有能すぎて怖い。
俺がPhantom全制覇をすれば担当である彼の手柄にもつながる。それに牧町は、内閣総理大臣と官房長官からこの件の責任者として一任されているということでもある。
牧町はいずれ総理大臣になる男なのかもしれない。
怒らせないようにしなくては……消されるぞ……。
段々と現実味が湧いてきたのか、桃と凛がはしゃぎだした。最上さんは俺と目を見合わせて、マジか? という顔をしている。
「お気に召したようで幸いです! でも大目玉はまだですよ。こちらをご覧ください! なんと東京スカイツリーと東京タワーが一望できるんです」
カーテンが自動で開かれると、東京都が一望できるんじゃないかと思うほどの絶景だった。夜になったらヤバそうだ。語彙力が来い。ヤバいってなんだ俺は。
「おー、これでいつ2大タワーがPhantomに変わっても、いち早く気づけますね」
牧町はギクッと肩をすくめた。
なるほどね。いや、良かったよ、魂胆があってこの最高級タワーマンションにしてくれてた方が俺も罪悪感がない。
某巨大公園で作っている人工Phantomも、高層階になればきっとこのマンションから見えるのだろう。なんせ320度くらいは見渡せる。
お部屋紹介はまだまだ続く。風呂とトイレが2つずつあった。トイレは広すぎて人が寝れそうだ。風呂は俺でも足がしっかり伸ばせる浴槽にジャグジー機能、ミストサウナとテレビが付いている。
寝室はキングサイズのベッドが2つ、ホテルのように並べられた。
映画を見るためのプロジェクタールームまである。家の中で迷子になりそうだ。
各自の自室も用意されていて、そこにもPCと配信機材が全て揃っていた。
俺の分まである。おこうと思えばこの部屋にクイーンサイズのベッドおけるよな??
「はは、こんなに広いと掃除が大変そうだな」
「呼び出し頂き次第、清掃スタッフと補充スタッフが6人がかりで元の状態になるように1時間以内に致しますのでご安心を。お洋服はコンシェルジュが預かりにきますので、クリーニングしてお返しします」
ふふふ。わかったよ、わかりました。俺は牧町に向き直った。
「参りました。降参です、世界を救います、救って見せましょう!!」
「よ!! ヒーロー!! 1人アベンジャーズ!!」
のせまくり牧町が拍手をしてくる。なぜかみら〜じゅ!の皆もしてくる。
頑張ります……。
それから俺たちは届いた元の家にあった私物を各自部屋に持ち込んだ。といっても俺は大した量はないが。
そうこうしているうちに夜になった。
俺たちは順番に風呂に入った。ラグジュアリーすぎて全然自分の家だって感じがしない。
さらに、なんといつでも一流のシェフを電話一つで呼べるらしい。もはやクレイジーとも言える待遇なので、感覚を戻すためにも普通にピザを出前した。
すると、ホテルのスタッフが持ってきた。デリバリーの人ここのフロア入れないってこと?
あと俺お金払ってないよね?
もしかしてここでの生活でかかるお金、全部国持ちなのか?
またまた怖くなってきた。桃と凛がピザを受け取り、テーブルに並べてくれている。俺は最上さんとワインセラーを眺めていた。
「本当になんでもありそうですね。げ!! 見て下さい最上さん」
俺がとあるワインを取り出して最上さんに見せると、プルプル震え出した。
「ヴィンテージロマネコンティ……」
最上さんがつぶやいた。そう、ワインの王様だ。
「の、飲みます?」
「エッフェル塔を攻略したら、にします?」
「それだ、それにしましょう!」
牧町は補充員が元の状態に戻す、と言っていた。下手したらロマネコンティも補充されかねない。恐ろしすぎる。
「はあ、はあ、さっきから呼吸がしにくいです。慣れるんでしょうか」
「俺もです、もはや位置が高くて酸素が薄いまでありますよねこれ」
「かもしれませんね」
最上さんがやっと笑ってくれた。わかる、わかるよ、怖いよなあこの待遇。俺は適当にワインを2本取った。多分これも数十万するやつだろう。
「とっくにピザ用意できてるヨ。何見つめあってるん?」
「ワイン、私注ぎたいです〜!」
2人が楽しそうにしてくれていて良かった。若いって素晴らしいな。おじさん達は飲まれているよ。
俺は最上さんと目を合わせて頷いた。俺も順応しよう。
さあ、宴の始まりだ。
☆☆☆
ご愛読ありがとうございます!
君のためなら生きられる。です。
朝起きて凛が居ました、よかった。自動筆記のような書き方をしてまして、キャラが性格に合わせて勝手に動くのでどうなるか筆者も書いてみないとわからないんです。
ちなみにここまでで9万9000文字になります!
ということは次回でついにラノベ一冊分ってコト?!
気合いを入れてリアルタイム執筆していきたいと思います!
引き続きお楽しみくださいませ!
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