みら〜じゅ!とルームシェア編
第22推活 これでエッフェル塔も余裕ってコト?!
美希が居なくなった朝。もう帰ってこないことを知らない俺は、呑気に女優の仕事があって朝早く出かけたのかなと考えていた。
1人の家はなんだか静かで、二日間しか一緒に過ごしてないのに喪失感が凄かった。
自分でパンを焼きコーヒーを淹れる。ボケッと昨日までの時間を振り返っていると、パンを焼き過ぎてしまった。
黒く焦げたパンを齧ると、Phantomが現れた日のことを思い出す。
「俺も俺で、やることやらないとな」
天野総理は俺の選択に人類の未来がかかっていると言っていた。そんな重責、勝手に背負わされる身にもなって欲しい。が、そのおかげでみら〜じゅ!に貢献出来ることも増えた。
大いなる力には大いなる責任が伴うってやつなのかもしれない。
俺は気合いを入れ直して、顔を洗い歯を磨いた。そんなに溜まってはいなかったが、ドラム式乾燥機付き洗濯機もついでに回しておいた。
ランカーズとの集合場所に着くと、もう既にみんな揃っていた。
ミミとルナに取り合われながら10階建の塔を巡り、俺は戦闘には参加せず連携の口出しだけを行った。
徐々に階層を上げていき、20階建てまで行ける装備と連携へと育って行った。元々ランカーだっただけあり、飲み込みと理解が早い。とはいえ、確定で存在しているエッフェル塔のPhantomに向かうには、問題が複数あった。それは俺ではクリアすることができない。
俺は牧町さんに連絡し、みら〜じゅ!メンバーとランカーズ、天野総理と黒瀬官房長官への会議を申し入れた。
天野総理のスケジュールは既にギチギチだろうから、ずいぶん先になってしまうかと思ったが、その日の夜にすぐ実現された。Phantom対策が何よりも優先され、他の予定がキャンセルされたんだろう。
閣議室に通され、みら〜じゅ!メンバーと合流した。俺が空けられていた凛と桃の間に座ると、ランカーズはしょんぼりしていた。幼稚園の先生が食事の同席を望まれてる感覚はこんな感じなのかも知れない。
既に天野と黒瀬は到着していて、俺が閣議室に入ると立ち上がり礼をしてきた。
偉くなったわけじゃないのでやめて欲しいが、国のトップとして礼を尽くし環境を整えることが仕事なのだろう。
「皆さんお集まり頂きありがとうございます」
「とんでもありません。いつでもお声がけください」
「そう言って頂けると助かります。まず進捗報告ですが、今日ランカーズと共にPhantomを周り、20階建てまでは彼らだけでも攻略出来るようになりました」
「なんと! 10階建で限界を感じていた我らがお恥ずかしい」
「いえ、Phantomは装備やステータスさえ高ければクリアは容易になります。的確な戦略で行えばステータスを越えた難易度も攻略できます。ですが、エッフェル塔のPhantom等の、超高層Phantomとなると話は別です」
「むしろ、エッフェル塔Phantomの攻略の糸口が見えている、ということでしょうか?」
天野が身を乗り出した。流石総理にまでなる人だ。洞察力が凄まじい。
「はい、ポジティブに捉えるとそうですね。ですが、俺では無理なことでして、天野総理のお力をお借りしたいのです」
天野と黒瀬は見合って希望に満ちた顔をした。今までどう足掻いても、一縷の希望も見つからなかったんだろう。俺もこの作戦が思いつくまではエッフェル塔攻略は不可能だと思っていた。
「我々に出来ることがあれば、なんなりとお申し付け下さい」
「では早速ですが問題提起から。20階以上のPhantomが殆どないことです」
階層が増えるほど巨大になり、空き空間が必要になる。
そして、Phantomの出現にはパターンがある。人が居たり居なかったりする建物、過去に居たけど今は居ない建物、塔そのものが人が居た空き地に突如現れる。
しかし、田舎の広大な場所に超巨大Phantomが現れるといった例はほぼ聞かない。
つまり、人が居たけど、今は居ない、というのがポイントになっている。
夜間人がいなくなった商業ビルがPhantom化してしまったものが、20階を越えるPhantomのメインだ。
それも今では対策されて、高層ビルは国からの指示で、必ず人が各階に寝泊まりするようになっている。つまり、新規に高層Phantomが増えることは、滅多にない。たまにイレギュラーでなっているそうだが。
中に居た人どうなったんだろ……。
「Phantomが少ない、ということが問題だと言うことでしょうか?」
「そうです。180階建てのPhantomであるエッフェル塔攻略への順序を踏むことが出来ないこと。それが最大の問題です」
「なるほど。では逆に中間となるPhantomが現れた場合、順を追って攻略していけば、二鷹様のお力で踏破も可能だと言うことですね」
「その通りです」
「素晴らしい……新規にPhantomが現れることを恐れていましたが、逆だったということですね。では早速各国のPhantomの調査を__」
「いえ、電波塔のような超高層の建物は中々ありません。世界各国といえど100階建てから180階まで順をおったPhantomは存在しないでしょう。なのでお願いがあります」
「……なんでしょうか?」
天野は少し顔を曇らせた。嫌だ、というニュアンスではなく、自分に答えられるだろうか、という不安な表情だ。
現存する商業ビルの対策を辞めて、意図してPhantom化させてくれと言われると思っているのかもしれない。
それは日本の経済を支える大企業達を一時的に犠牲にする行為かつ、ステップアップがほぼない。数ヶ月経営を止めるだけでとんでもない経済ダメージになる。俺に払っているコストなどそれに比べれば微々たるものだ。
最大の企業ビル、某アベのカルパスが東京タワーとさほど変わらない約300mだが、こんなに高いビルは早々ない。
タワーマンションは段階を踏みやすいが、人が住んでいるのでPhantom化しない。全員出ろとは流石に言えないだろう。ので__
「30階から179階までの1部屋で連なる簡易的な建造物を国家主導で建設し、日中にアルバイトを寝かせて、夜間に開けることを繰り返して下さい。意図的にPhantomを作り出し、それを俺達が順に攻略します」
天野は目を見開いた。流石にここまでは先読みできなかったようだ。
「そんな手が……では、もしこれが実現すれば」
「エッフェル塔攻略はイージーです」
「素晴らしい、素晴らしすぎます!! 是が非でも責任を持って実行させて頂きます!」
「お待ち下さい。Phantomが建造物と判断するラインを判明させて下さい。必要最低限の骨組みと、日中一階に人が寝そべるだけでいいのか、各階に人が一度以上いる必要があるかなどを色々試して、最も時短できる条件を模索しましょう。いつ東京タワーがPhantomになるかもわかりませんし、エッフェル塔からモンスターが溢れたら、この世の終わりです。その前に俺が強くなる必要があります」
「畏まりました!! 全て英雄、二鷹大賢者様の仰せの通りに!!」
総理と黒瀬が立ち上がり、最敬礼をしてきた。
大賢者とは程遠い、性獣を飼いし者なので反応に困ったが、ここで謙遜してこちらも礼を尽くすと、三つ指をつかれそうだ。
俺はこれ以上負担をかけさせないためにも、座ったまま愛想良く言葉を返した。
「宜しくお願いします」
○
それから俺はランカーズとみら〜じゅ!と共にPhantom攻略を進めた。
10階以下のPhantomなら、みら〜じゅ!メンバーとランカーズは、安全にソロで回せるようになった。
そこからは早かった。3ヶ月が経つ頃には、東京都に存在するPhantomは全てクリアした。5階以下の簡単に発生するPhantomは、レベルを自力であげたPhantomユーザー達が奪い合うように踏破してくれる。
人工Phantomの建設と、実験も順調なようだ。骨組みだけでは流石に反応はなかったが、6方が囲まれて室内と言える状態で、日中に最下層に人がいればランダムにPhantomに変わり出したのだ。
やるべきことがなくなり、完成した建造物がPhantomに変わるまで休暇を得た俺たちは、本来の目的に専念することにした。
Vtuber活動だ。
ちょうど依頼していた3Dモデリングデータが納品されたのだ。
久々に俺は事務所に向かった。
いつも外集合、外解散だったから、少し緊張する。
インターホンを押すと扉が開かれた。
「おかえなさいませ、ご主人様」
「ッッッッッッッッッエ」
なんと桃と凛がドンキのメイド服で出迎えてくれたのだ。この数ヶ月のPhantom攻略でみら〜じゅ!との仲もかなり深まってはいたが、このサービスには驚いた。
そういえば事務所に前来た時に、そんなこと頼んでしまっていたな。あの時は美希が居て……いや、美希のことを思い出すのはやめよよう。彼女は女優に専念するんだろう。
2人の胸元は大きく開かられ露出し、カチューシャをつけて、極短のフリルスカートが揺れている。
最近真面目に過ごしていた反動から、俺のエッチコンロはメラゾーマのように燃え盛った。
「あれからすぐ買ってたんだけど、中々お披露目する機会がなかったぢゃん」
「ど、どうでしょうか?」
「100点満点中、7000兆億万点だ」
「やったぢゃーん!」
「恥ずかしいけど嬉しいです」
体とあそこを硬直させ動けずにいると、桃と凛に手を引かれ、中に入った。最上さんは俺が新しく買ったスーツを着ていた。
「世界様、私もスーツを新調させて頂きました。2人と同じ時に着ようかと思ってまして」
「とってもお似合いです!」
「ありがとうございます」
オーダーメイドされたスーツを着た最上さんは、姿勢もよくなり、なんだかいつもより自信があるように見えた。身なりが人の意識を変えるというやつなのかもしれない。
買って良かった。
小さな事務所のテーブルに座る。両サイドにメイド服を着た桃と凛が座った。これ慣れるのだろうか、ずっとドキドキして思考が回らない。
「それとみんなで住むって新居、探しているんだけど中々見つからないんよ。ごめち」
そうだよな、そもそもそんな広いマンションが都内にワンサカあるわけでもない。それに、俺と住むなんて早まった意見だった。
「あー、むしろごめん、なんか1人で舞い上がって口走っちゃった」
「世界さん、本当は一緒に住むことは、嫌ですか?」
「俺は勿論嫌じゃないけど、皆オタクと一緒に住んだら気が抜けないだろ。ごめんな、俺が最大のスポンサーだから嫌でも言えないよな」
3人は何も言わない。むしろなんだか悲しそうだ。
「ごめん、こんなこと言ってもむしろ気を遣わせるだけだよな。俺が必要なくなったら、ちゃんと距離をとってまた1人のオタクに戻るからさ」
「世界さん」
凛がこちらに体ごと向けている。太ももが俺の足に当たり、俺は興奮しそうになったが、凛は涙を浮かべて顔を赤くしていた。その顔を見て、冷静さを取り戻す。
「何?」
凛は答えずに、俺の頬に手を当てた。顔の皮脂がついて綺麗なお手手が汚れてしまうと思った瞬間、凛は俺の唇にキスをした。俺は驚きすぎて、身動きが取れない。ゆっくりと唇を離すと、潤んだ瞳でまっすぐと見つめられる。
「もうそんなこと言わないでください。いえ、言わせません。私が行動で示します」
「凛々ずるいずるい、あーしも!」
理解が追いつかないまま肩を引っ張られ振り向くと、桃に思いっきりキスされた。そのまま膝の上に跨り舌を入れてくる。
「んんんんんんん?!」
「桃ちゃーん!?」
凛が桃を羽交締めにして引き剥がした。2人は床でマウントポジションで暴れているため、パンツが丸見えだ。
それより俺は今何をされたんだ、一体何が起きた。
最上さんが殴り合いを始めるんじゃないかと心配してか、馬乗りの凛を引き剥がし座らせた。
「あ、あのー」
「なんですか」
凛が顔を真っ赤にして手が覆い隠し、指の隙間から俺を睨んでくる。いや、睨んでいるわけではないのか?
「お二人は、なぜ俺にキスを」
「世界っちが意味わからないことをいうからぢゃん」
???
意味わからないこと言ったか?
「もう言わせませんよ、あんな悲しいこと」
「うるさい唇は、キスで塞ぐってコト」
「桃ちゃんは舌も使ってましたよね」
「キスは舌いれてなんぼ。世界っちの唾うめー」
「ずるい! 私にもください!!」
凛が桃を捕まえて、キスし始めた。一体何が起こってるんだってばよ?!
「ぷはっ、なんであーしから取るの? 世界っちにすればいいぢゃん、んんんん」
「世界さんにそんなことしたら恥ずかしくて死んじゃうので桃ちゃんから奪ってるんです、んちゅー!」
おいおい。こんなの逆にエロいを越えている。推し2人がメイドの格好で俺の唾液を奪い合っている。さすがのゲキキモオタクの自覚がある俺でも妄想すらしていなかったことだ。
最上さんがまた2人を引き剥がす。
「はあ……はあ……つまり、一緒に住みましょうってことです!! いいですよね?」
「良いしか返事は聞きたくないぢゃん!!」
「私からも、是非」
凛と桃に迫られ、最上さんも真面目に目を見て行ってきた。
「……はい。宜しくお願いします」
プロポーズを受けた女の子のようなトーンで返事をしてしまったが、3人は大喜びをしてくれた。いらない遠慮で、逆に気を使わせていたみたいだ。
「いえーい!! やっと毎日世界っちと居れるぢゃーん!」
「夢見たいです! 家探さないとですね!」
「SUUMOUでは見つからないんですよね。そうだ世界様、牧町さんにご相談されてみては?」
「その手がありましたね」
最上さんのナイス助言に従い、牧町に電話でとにかく広くて都心に近くて、防音性能の優れたマンションを探して欲しいことを伝えると、30分後には折り返してきて、全て当てはまる物件を見つけてくれた。
政府御用達の不動産屋があるのだろう。しかも、家賃はPhantom対策費から捻出されることなったため、俺は一円も出さなくてよくなった。なんと明日には全ての家具や生活用品、リビングに照明付き簡易ステージと、3Dライブができる1000万円を超える全身トラッキングカメラも用意してくれるようだ。
大手Vtuber事務所のスタジオが、家の中に組み込まれるようだった。
「じゃあ、明日からは、宜しくお願いします」
俺は一旦家に戻ることにした。荷造りのスタッフも明日来るらしいが、皆には見せられないものを破棄しておきたい。玄関にみんなが見送りにきてくれている。
「凛々、言いなよ」
桃が凛の背中を押した。なんだ?
「私、お泊まりに行きたいです。明日から一緒に住めますが、世界さんの家での思い出を、悪いもので終わらせたくないです」
「あーしからも頼むよ。このままだと一緒に過ごせたあーしのこと一生ぐちぐち言われる」
最上さんを見ると、凛に向かい優しく微笑んでいた。凛は俺の返事を恐々とまっている様子だ。これはもう拒否する理由はない。今日はデリヘルも呼んでいない。よし。
「うん、そうしよう。むしろずっと呼んでやれずにごめん」
美希が帰ってくるかもと思っていた俺は、家に来たがる素振りをされても、はぐらかしていた。そもそも俺のご機嫌取りのために嫌々しているのかもと思っていたし。
泣き出した凛を桃が抱きしめた。最上さんはお泊まりセットを作り出した。凛はメイド服を着替えに行った。
桃が俺のそばにきて耳打ちした。
「世界っち。凛々は処女だからね。男見せろヨ」
俺は唾を飲み込み、桃に親指を立てた。
大丈夫だ、絶対に手を出さない。明日から皆で住むんだ、股間を切り落としてでも、男を見せてみせる。
「次はあーしだからね」
桃は俺の頬にキスすると、部屋の奥へ行ってしまった。どういう意味だ?
「お待たせしました!」
私服に着替えた凛が俺の腕を掴んだ。
これは神が与えた試練だ。これを乗り越えないとみら〜じゅ!と暮らしていくなんて出来るはずがない。この日のために俺はきっと自分の性獣を飼い慣らす訓練をしてきたんだ。
最上さんがいつの間にか呼び寄せてくれていたタクシーに乗り込み、2人で俺の自宅に向かった。
さあ、試練の夜の始まりだ。
☆☆☆
ご愛読ありがとうございます!
君のためなら生きられる。です。
ここまでで少しでも面白い、続きが読みたいと思っていただけた方は星を送って頂けると幸いです!
すでに送って頂いてる方、ありがとうございます!!
もうすぐで10万文字、つまり書籍化された際の一冊分になります!
是非続きもお楽しみくださいませ!
星はこちらから↓
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