第18推活 推しの力は無限大ってコト?!

「……人権はどこに行ったんですか」


「契約を望んで締結頂いた皆様です。二鷹様に選ばれなければ、報酬はありません」


なるほどな……選ばれれば一億円とか言われているのかもしれない。

当然お断りだ。 


「悩みますね」


おい!! 

何言ってんだ俺は!!

心と体がチグハグだ!!


すると、俺の体を1人の女性が密着しまさぐり始めた。それを見た他の水着美女達もずるーいと言いながら全身を愛撫し始めた。


俺は桃と凛に助けを求めるために目線を送った。しかし、2人はあまりにもぶっ飛んだ話だからか、何も出来ないといった様子だ。 


「桃、凛、最上さん、助けて、契約しちゃいそう」


素直に縋った。俺は性獣に心を奪われた哀れなモンスターなんです。 


「……助けていいの? こんないい話ないかもぢゃん?」


桃が訪ねてきた。


「お金もハーレムもいらないからみんなといたいのに、体が言うことを聞かないんだ」


かわるがわる水着美女達に体を押し付けられる。ついにAV女優の響ノリカも参戦した。明らかに手つきのいやらしさと、体のエロさが段違いだった。


「あんな子供達じゃ満たされないでしょ? 私はプロだからわかるの。世界さん、あなたド変態でしょ。早く一緒に住みましょ、骨抜きにしてあげるから」


ノリカが耳元で囁きながら耳を噛む。

何故か俺が性獣なのがばれてる!! 

なんでわかるんだ、凄いな!!


すると、桃が立ち上がり、凛の手を引き女の子達と響ノリカの手を引き剥がした。


「何すんのよ!」


「うるっっせえよ!!! 黙ってろし!!」


ギャルに本気で凄まれて、水着の女の子達は怯えた。ノリカは見下して鼻で笑っている。


「あーしにだって、世界っちは何してもいいんだよ。お金なんていらないし!」 


「私も、世界さんの望むこと全てを叶えたいです。どんなことでも」


2人は俺の手を取りいった。

桃はそもそもそういった態度をずっととってくれていた。凛はこんなことを言える子じゃなかった。それだけ必死に引き留めてくれているんだろう。

2人の言葉は俺の心に完全に届いている。なのに、なぜか契約を辞退しますと、どうしても言えない。 


「2人とも……ありがとう。でも、ごめんな。俺はどうやら、下半身に心を奪われたモンスターみたいだ。こんなに2人のことが大好きなのに……なんで断れないだろう」


俺は性獣に……負けた。


「俺のことは死んだと思ってくれ」


「嫌ぢゃん!! 美鶴もなんか言ってよ!!」


「美鶴?!」


俺は最上さんの方をみた。最上さんはまだ座り、何も出来ない自分を悔いているようだった。

俺のリアクションを見ると桃が背後に周り、目隠しをした。豊満なバストが背中に押し当たる。 


「凛々! 美鶴っち連れてきて!」


「はい!」


凛はおそらく、最上さんの手を引いてこちらに近づけた。

おじさんに何をさせるつもりなんだと閣議室が静まり返っている。


「美鶴っち、いいの? 今引き止めないと、2度と世界っちに会えなくなるかもよ」


「美鶴ちゃん、お願い。世界さんを止められるのは、一番星の美鶴ちゃんだけなのです」


「し、しかし私は今は最上でして」


俺は目隠しをされたまま、手を伸ばした。 


「美鶴、居るんだろ。ずっと聞いてるって言ってたもんな」


「美鶴っち! あーし達も目を閉じるから!」


「美鶴ちゃん! お願いします」


「……」


「頼む、応えてくれ美鶴。声が聞きたいんだ」


「……ぴぃい」


「美鶴!!」


閣議室がどよめいた。突然白髪ハゲのおじさんがピィイと言ったんだ無理もない。しかしそれを言ったのは、最上さんではない。美鶴だ。 


「せ、世界たん」


「美鶴ぅぅうう、出てきてくれたんだな! めちゃくちゃ嬉しいよ」


「でも美鶴は今、最上おじたんの姿をしているっぴ……」


「いいんだ、気にしないで。目は閉じてるから、怖がらないで」


俺は手を伸ばして美鶴を探した。その手を最上さんの腕越しに掴んだ。


「ザラザラの最上おじたんの手だっぴよ」


「違うよ、俺は今美鶴に触ってるんだ。ザラザラでもおじさんでも、いいに決まってるだろ」


「世界たん……」


俺は最上さんごしに掴んでいる美鶴の手を頬に当てた。桃と凛が泣いている声が聞こえる。


「頼む、俺を止めてくれ、美鶴。美鶴は俺にどうして欲しい?」


「美鶴は……美鶴は……! 世界たんに何処にもいかないでほしいっぴ!!」


体に抱きつかれる感覚がする。悲鳴にも似た声が女性陣から聞こえてきた。萌え声のおじさんが俺に抱きついたように見えているんだろう。だが違う。今俺に抱きついているのは、俺の推しだ。 


「桃、ありがとう。手を離してくれ」


「で、でも」


「大丈夫、信じてくれ」


「……りょ」


俺はゆっくりと目を開く。目の前には、不安そうに俺を見つめる最上さんの姿をした美鶴がいた。 


「……美鶴」


「世界たん。こんな姿でもいいっぴか?」


美鶴はボロボロと泣き出した。俺もつられて泣いた。凛と桃はもう鼻水垂らして泣いている。 


「勿論だ。ちゃんと目を見て言いたかったんだ。俺は美鶴のそばにいる」


「ほんとっぴか?」


「ああ。約束する。凛と桃も、ありがとう。やっと正気に戻れた。俺にとって大事なのは、3人だけだ」


「世界たん、大好きだっぴぃぃいいい」


最上さんに憑依した美鶴と凛と桃が抱きついてきた。これでいい。これでいいんだ。俺は力強く3人を抱きしめた。


「ふ、ふざけないでくださいよぉおお」


天野がついに耐えきれなくなったのか叫んだ。


「国の、いや全人類の命運があなたの選択にかかっているんだ!! こんな茶番で納得できるわけないだろう!!」


「まさか……ほんとにみら〜じゅ!の……。いやなんで気づかなかったんだ、凛と桃、見た目まで全く同じじゃないか。それにさっきの声と美鶴って」


世界ランク15位の抹茶飲みたいこと、鈴代吉成が呟く。本当に俺のこと好きだったんだな、俺が追ってるVtuberのことまで知っているなんて。 


「天野総理、説得は不可能です。彼にとってあの3人は自分の価値観や、命より大切なんです」


「一体何をいっているんだね、鈴代くんは! ちゃんと説明してくれたまえ!」


「この3人は、ブラッディポン酢さんの推しです」


「はあ?! なんだね、推しって!」


「天野総理、数々の不遜な態度をお詫びします。Phantom攻略に協力します。しかし契約書にサインはしません。女性も結構です。インセンティブはこれまで通り頂戴します。それで宜しいでしょうか?」


「報酬はいらないというのかね? その代わり責任も負えないと」


「俺は英雄でも、救世主でもありません。推しをキャリーするためにPhantomをしている、ただのオタクです」


「はあ?」


「なので、期待しないで下さい。ただ、やれることは精一杯やらせて頂きます。ランカー達との連携訓練で、俺がいなくても上位階層まで登れるように指導します」


「ありがたいですー!」


「来た甲斐がありました」


ミミちゃんと、抹茶飲みたいさんも喜んでくれた。


「私もブラッディポン酢さんが望むのであれば何でも差し出しますわ」


ルナさんもだ。なぜか既に色気ムンムンだ。天野からのスパイかもしれない、気をつけなくては。


「3人ともありがとう。宜しく頼む」


「認めない。私は認めない!!」


AV女優のノリカは、おじさんの姿をした美鶴に負けたことがよほど悔しかったのか、走って出ていってしまった。 


「私、無報酬でも秘書やりたいです。やらせてください! この4人のやりとり、そばで見れれば演技に磨きがかかりそう。魂が震えてるのがわかるもの」


広瀬美希が言った。 


「……わかりました。では、二鷹様のおっしゃる通りに致します」


「天野総理、ありがとうございます! 大丈夫です、きっとPhantomを全て元に戻してみせます。エッフェル塔も」


「そんなこと、本当に可能なんでしょうか?」


「はい。推しがいる限り、俺の力は無限です」


俺は総理の手を取った。閣議室の扉が開き、黒服が息を切らして言った。


「牧町部長、色紙買って参りました」


俺たちは約束通り、いとうまき焼肉屋、徐々炎にきていた。

最上さんはなんとお肉は食べないらしく、初手ビールと冷麺だった。


「牛タンんめー! うしとベロチューぢゃん」


「桃ちゃん、美味しくなくなるのでやめて下さい」


凛はハラミをサンチュに巻いて食べている。俺はテールスープを啜りながら、カルビを白米に乗せて食べている。

一度上カルビにしてみたが、脂っこいので辞めた。 

腹ごしらえが済み、アイスとあがりを飲みながら本題に移る。 


「さて、この4000万円の使い道だけど。まずは、最上さんの借金を返そうと思う」


「なんですって?!」


最上さんが鼻から冷麺が出る勢いで驚いた。 


「いくらあります? 足りますかね」


「い、いや! これは私が事業に失敗して作った借金でして、世界様にお支払いさせるわけにはいきません!」


「でも、話聞いただけで貰ったお金ですよ。流れで俺が管理する感じになってますけど、そもそもみんなのお金ですし」


「しかし……」


「納得しないならスパチャで投げますよ、4割くらい手数料に消えますけど」


「それはいけません!」


「じゃあ、俺が最上さんに出資するってことならどうですか? 機材揃えたり、オリジナル曲増やしましょうよ!」


「やったー!」


俺の隣に座っていた凛が、手を伸ばして桃の口を塞いだ。


「で、借金はいくらあるんですか?」


「あまり良くないところにも借りていまして……全部で1500万円ほど」


「え、そんなにあったんですか?」


凛が驚いた。


「元は500万円でしたが……すみません」


「じゃあそれ返しちゃいましょう! 返さないとみら〜じゅ! に先行投資できないですし」


「ほ、本当に良いんですか?」


「むしろなんでダメなんですか? 宝くじに当たったようなもんですよ。別に俺まだ何もしてないですし」


「……このご恩は必ず」


俺は真剣に頭を下げようとする最上さんの言葉を遮った。


「みらーじゅ! で売れて返して下さいね」


俺が泡銭持ってても、全部風俗とスパチャに行くだけだからな。これから高層のPhantomを攻略すれば、お金はいくらでも稼げるし。まだ現実味がない最上さんの背中を桃が叩く。 


「あーしを世界一のアイドルにしてくれるって約束したよね?」


「はい、それは、必ず」


「ぢゃあ、チャンスは掴まないとダメぢゃん」


「本当に良いんですか?」


凛が隣で俺の方を向き言った。 


「勿論。むしろなんて言ったら受け取ってくれるかずっと考えてて、あんまり焼肉楽しめなかったくらいだよ」 


「世界様」


最上さんが立ち上がった。俺の目を見て、ハッキリと告げる。


「必ずお返しします。ありがとうございます」


「はい」


頭をまた下げようとする最上さんの肩を抑えて、笑ってみせた。

桃が俺の方に来て頬にキスをしてくれた。凛がそれを見て悔しそうな顔をしている。してくれはしなくてちょっと残念。


最上さんのAGAの治療代も出してあげたい。美鶴の魂をイケオジにするのも悪くない。最上さんを座らせて話を続ける。


「まだ2500万残ってるので、最上さんのスーツを新調して、機材を買って、事務所も引っ越します?」


「ありがとうございます。維持費が上がるものは、収支が上がってからでも宜しいでしょうか?」


「それもそうですね。クイーンベッドはお預けで」


「クイーンベッドのために頑張るぢゃん!」


「そうだな、桃の悲願だもんな。凛は何か希望はある? 正直に言ってくれ」


「いいんですか? 私は……新衣装と3Dモデル作って、3Dライブ配信したいです。私達、踊れますし」


それ最高。俺が借金してでも見たい。歌って踊る美鶴、想像するだけで可愛すぎる。


「やろう」


「夢みたいですっ! 世界さんは本当にみら〜じゅ! の王子様ですね」


「そのセリフ! 赤スパ投げちゃう」


「セリフじゃないですよ。それになんで私たちにまだスパチャしてるんですか」


「え? そりゃ俺はみら〜じゅ!のオタクでもあるからだが?」


当たり前では?? 

3人はよくわからないと言った感じだが、俺の意思を変えるのは難しいと判断したのか、それ以上何も言わなかった。


明日の集合時間を決めて、俺たちは解散した。凛が泊まりまた行っていいですか? と聞いてきたので、勿論と応えた。今日来るのかと思ったが、帰ったようだ。少し残念。

今日でもいいぞと言えばよかったのか?

素人童貞だからわからん……


風呂に入り、1人晩酌し直しているとインターホンがなった。画面を確認すると、なんと女優の広瀬美希だった。



        ☆☆☆

 ご愛読ありがとうございます!

 君のためなら生きられる。です。


 ここまでで少しでも面白い、続きが気になる、書籍&アニメ化希望、来年のセンター試験国語に採用されるべき、ハリウッド実写映画化が見えた、友達に勧めたい、直木賞間近だ、直木賞は流石に無理だろ、カクヨムコン10万文字間に合うの?、人の金で焼肉を食べたい、牛丼は吉野家より松屋派、学生時代突然教室にくる悪漢を倒す妄想をしていた、ミスタードーナッツはゴールデンチョコレートしか勝たん、おでんはセブンイレブンだよな、WindowsかMacならWindows、血液型はA型、おっぱいよりお尻派、のどれかを思った、または当てはまる方は、シオリと星を頂けると大変励みになります!


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