第14推活 飲み会より大切だってコト?!
「世界〜、終わったら飲み行くよな? ちーちゃんもくるぜ」
金曜の17時。同僚の黒田が華金に誘ってくれた。ちーちゃんは、可愛いと人気の会社の後輩26歳だ。よく飲みの席で何故か隣になるので仲良くなっていた。
「おー、行きたいんだけど、ちょっと寄るところあるんだよね。二次会あったら連絡して」
「マジで?! 珍しいな、世界が華金より大事な予定があるなんて。明日は雪が降るぞ」
「うるせーよ」
「はは、また連絡する」
笑いながら同僚の冗談をかわし、仕事終わりには予約しておいたPhantomへ向かう。
実はソロでなら、3階建てまで行けるようになっていた。水曜に2階建てで運良く手に入れたショートソードが、グッと効率を上げてくれた。
そこからサクサクと攻略が進み、3階建ての宝箱から銅の盾と、銅の鎧を手に入れた。
装備効果は凄まじく、露骨にダメージが減ったことを実感できた。
2階にいるゴブリンに棍棒で殴られても、発泡スチロールで叩かれた程度のダメージしか感じない。
銅の鎧をあと3つは集めて、みら〜じゅ!メンバーにも一つずつ配りたいのだ。飲んでいる場合ではない。
しかし現実はそう上手くいかない。早速予約していた3階建ての塔をクリアしたが、ダブりアイテムしか手に入らなかった。
「2階建てのPhantomでショートソードが手に入っただけでもラッキーかもな」
呟きながらPhantomレーダーを開くが、近場に3階建てのPhantomは表示されていない。移動すると二次会にもいけなくなるだろう。
背に腹は変えられない。俺は断腸の思いで飲み会を諦めようとしたその時。
「うお!!」
目の前にあった潰れた飲食店が入っていた3階建てのビルが、3階建ての塔に変わった。瞬きをしている間に、バシュッ、という音と共に一瞬でだ。
「運がいいな〜。ん?」
よく見るとその塔は色が違った。見た目は同じだが、赤い色をしている。
「赤いPhantomか。見たことないなあ。良いアイテムが落ちてる当たりのPhantomかもしれんし、行ってみるか」
ファントムレーダーにもまだ登録されていない出来立てホヤホヤだ。いつもの様に認証を済ませ、入り口で装備を選択する。
パーティを組んでいるメンバー同士のアイテムは、認証設定をすれば自由に入れ替えられる。それに気付き、情報はディスコードで共有済みだ。
なので、俺は桃に預けていた速度アップアイテムのウサ耳カチューシャを自分に装備している。今の装備状態はこうだ。
レベル12
ショートソード
銅の盾
銅の鎧
ウサ耳カチューシャ
マグナムガン
攻撃の指輪
回復薬×6
自分で攻略中に手に入れた回復薬も念のため多めに持って行く。
骨折などはしたことはないが、それ以下の傷は何度かあった。しかし、その程度であれば錠剤の回復薬を噛み砕けば、瞬時に回復した。かなりの優れものだ。
攻撃の指輪はその名の通り、攻撃力が上がる。斬撃を首に当てれば基本は一撃なので、効果の程はあまりわからない。
マグナムガンは一回の攻略で6発しか打てないが、高威力の銃弾だ。眼球などの急所に当たればゴブリンは一撃だった。大事に使おう。
「よし、起動!」
起動、と発音する必要はないが、雰囲気作りのために叫ぶ。
光に包まれ、姿がアバターになっていく。ゲームのPhantomはどうやらプレイ出来なくなっているらしい。俺は見かけだけの古龍全身セットの防具を身に纏う。
すでに先ほどの塔で体はあったまっていたので軽く準備運動とストレッチをして、扉に向かった。
「お姫様達を現実でもキャリーしちゃいますかあ」
今から思うと、俺は調子に乗っていた。現実味が失われていたんだ。
仕事も、プライベートも、リアルPhantomも順調で。
扉を開けるとゴブリンの上位種、ホブゴブリンが3体いた。
「え?」
○
「レッドPhantomの顕現報告が一般市民から入りました! 高層は、嘘だろ……さ、3階建てです!」
「なんだと?!」
Phantomレーダーを使い、各地の情報をまとめながら会議をしていると、リアルタイムモニターのチェック係から牧町に報告が入った。対策本部の会議室に緊張が走る。
レッドPhantomは二階建ての時点で、10階建て以上の難易度が想定されている。
なぜなら、レッドPhantomの二階建てを調査に向かった国家公務員は、全員帰っていないからだ。
5階建て以下は通常4人1組のみでの攻略になるが、それ以上では、2組以上の参加が塔に許可されるものもある。
レッドPhantomは1階建て、2階建て共に2組まで入場可能だった。3階建てとなると、3組入場が許可されることもあり得る。
現時点でレッドPhantomは、日本では一階建てと二階建て、それぞれ1箇所からしか見つかって居ないため、対策を後回しにする、というより、対策の仕様がないのが現状だ。
それが、3階建てとなると、一体どれほどの難易度なのか計り知れない。Phantomは構造上、ダンジョンの最後の扉の先にいるボスが圧倒的に強い設計にされている。オンラインゲームのPhantomに、色違いの塔という概念はなかった。となるとこれは呼称Phantomオリジナルの何かだ。
「今すぐ封鎖指示を! 少なくとも20階以上の難易度を想定しておいてくれ!」
「畏まりました!」
牧町は一度黒瀬に指示されていた綺麗どころへの連絡を中止し、現地に向かうため上着を羽織った。
☆☆☆
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