第11推活 終わり良ければ全てよしってコト?!
「どーしよ、あーしが話こじらせちゃった感じ?」
桃は珍しくテンパっていた。スマホをベッドに投げ出し、両手を頬に当てている。
「いや、元はといえば俺のせいだからさ。とりあえず連絡できてなかったことだけ謝ろっか。電話で正式な謝罪は俺からするよ」
「えー、あーし悪くないのに謝るの?」
確かに、俺も社会人になるまでは自分が悪くないのに謝るって選択肢、あまり無かったな。俺や凛に対して責任転嫁してないだけでも、十分19歳としては大人と言える。昨日の対応といい、桃には結構人生経験が色々とあるのかもな。
「桃は俺と凛のために来てくれたんだから悪くないよ。でも連絡しないで心配させた事は、謝った方がスムーズかな」
「そうだ……ね。うん、連絡する」
素直な桃、トゥンク。スマホを拾いラインを開いた。
「偉いぞ。音読しながら打ってくれ」
「もっと褒めな〜。えー、昨日は何も言わずに出て行って心配かけてごめんなさい」
「ん?? まてまて、最上さんに場所伝えてないの?」
「うん。凛を最上っちがお風呂場に連れてってる間に勢いで出かけちゃった」
テヘペロ⭐︎ いやまてランジェリーでそのポーズをするんじゃない。朝から良くないぞ。
俺は落ちてた羽織る上着を拾って桃に着せながら伝えた。
「それは、結構やばいかも。俺のところに来てるだろうなって予想があるからディスコにも連絡来てるんだろうけど。相当心配させたかもな」
「えー、やっぱし? 後でちゃんと謝るしかか」
「それがいいよ。飲み物持ってくるから、そのまま文章音読して作って」
「あーい。世界っち、パパみたいだね」
「お父さんも面倒見良かったのか」
俺はグラスを二つとり、冷蔵庫に向かった。
「いや、DVしてくるクソ親父だったよ。ママはとっくに出ていってた。だから私も14の時に出ていったんだ。世の中のパパは、世界っちみたいなのかなって。あ、お兄ちゃんかも?」
やばい。地雷を踏んだかもしれない。家庭環境については憶測がついていたのに、二日酔いとはいえ失言だった。
「そうだったのか。ごめんな、嫌なこと思い出させて。水、良かったら飲んで」
「いや、そのおかげで最上っちと凛々と出会えたし! あ、世界っちともだね」
桃は差し出した水を飲んだ。俺も水を飲み、余計な事は言わずに笑顔を向けた。桃も笑い返してくれた。
「えー、続きは、凛々のことは聞き出したら誤解だったから世界っちとお酒を飲んで作戦会議してたらランジェリーのまま一緒に寝ちゃいました、と」
「ストップ。そこは俺から説明させてくれ。今の文章全部消して、世界っちの家に居るから安心してね。朝10時に一緒に事務所に向かいます。に変えて」
「え、めんご。もう送っちゃった」
俺は頭を抱えた。最初からスマホを借りて俺が文章を打ち込むべきだった。
いや、事実ではあるが、誤解を産んでしまう要素が全部盛りだ。
「ラインだよな? 送信取り消しして__」
「秒で既読ついてる。ごめち」
「OKすぐに電話する」
もうこれは余計な誤解を生む前に連絡して謝り倒した方が良さそうだ。俺がスマホに手を伸ばすと、インターホンが鳴った。
「やべ。2人かも?」
「上着きて、早く!」
「え、なんで?」
「なんでも!!」
「りょ」
恐る恐るカメラを確認すると、やはり凛と最上さんだった。桃が来る時に来ていた上着を着たことを確認する。
寝る時に脱いでいたことはラインでバレているが、実際に目にした時の印象はいくらかマシだろう。
俺は扉を開けた。
「連絡出来ておらず申し訳ありません!」
俺は開口一番に最敬礼で謝罪した。
「桃さん! なんで何も伝えずに飛び出したんですか! 心配しましたよ」
「でもよかったです世界さんのところにいて……ごめんなさい、私が何も言わなかったせいで」
最上さんと凛は俺に怒りを覚える暇もないほど、桃を心配していたようだ。
「めんごめんご! 今世界っちが電話しようとしてたところ」
「ああ、世界様、頭を上げてください。凛さんからお話は伺っています、むしろご迷惑をおかけしました」
俺はゆっくりと頭を上げて最上さんの顔をみた。桃を見たからか、安堵の表情を浮かべていた。一睡もできなかったのか、クマが出来ている。
「いえ、桃について最上さんに俺から連絡するべきでした。申し訳ありません」
俺はもう一度頭を下げる。
「あーしが突然出て行ったこと知らなかったんよ、さっきまで」
「そうだろうと思ってましたよ」
俺が頭をあげると凛と目があった。
「あ。……世界さん、すみません昨日何も言わずに出て行ってしまって」
「あ、いや、あれは誤解なんだ」
「え? 彼女さんがいるのに押し掛けちゃったんですよね。追い払わせてしまいましたし」
「いや、うーん。なんというか、その」
「あー、凛々。世界っち彼女いたことないらしいんよ。だからレンタル彼女先週予約してたんだって。忘れてたみたいだけど」
「レンタル彼女? そういうお仕事があるんですか? す、すみません、私の誤解から皆さんを巻き込んでしまって!」
桃、ナイスアシストだ!!
このご恩は一生忘れません!!
凛が今度はペコペコと頭を下げ始める。
「いやいや! 元はといえば俺が忘れてたことがいけないし、未成年の桃に対する監督責任は俺にあるので、最上さんに連絡するべきでした。それに俺と一晩過ごしたことは怒らないんですか?」
「監督責任というのなら、それは私にあります。怒るも何も、桃さんの顔を見ればわかります、とっても親切にして下さってましたよね」
「そっか、世界さん、彼女居ないんだ……えへへ」
「そーゆこと!!」
桃が俺の腕に抱きついて笑った。
思っていたより桃は大人の扱いを受けていて、信用もあるようだ。その信用のおかげで、俺は危機を乗り越えることが出来た。
俺もやっと緊張感が解けてきた。
「あ、すみません玄関で立ち話もなんですから、どうぞ上がって下さい」
「お気遣いありがとうございます。ですが私共、昨晩桃さんがランジェリーのまま出ていったので、道中で襲われているんじゃないか不安で一睡も出来ず……申し訳ありませんが、一度事務所に戻って、睡眠をとります。16時ごろにまた連絡致します」
なるほど、俺にどうこうされてる心配はそもそもしていなかったのか。
最上さんの身長と年齢だと、悪漢と戦うことも出来ないし、警察は事件が起きるまで基本動かないからな……朝になって、第一候補の俺の家から捜索に向かったら、ラインがきたってところか。
「それなら世界っちの家で寝ればいいぢゃん。ベッド鬼フカフカだよ」
「そんなそんな、悪いですよ」
「とんでもないです、是非使って下さい。俺たちは眠れてますので」
「最上さん、私事務所に戻る電車で寝ちゃいそうです」
凛が眠い目をこすりながら言った。
「では、凛さんはどうぞ、私は戻りますので」
「いえ、最上さんも是非!」
最上さんは大分遠慮する性格なのがわかってきた。逆に言うと押しにも弱い。
「むしろ時短できて嬉しいです、明日から俺は出勤なので」
「あ、そうぢゃん、世界っち社会人だから土日しかリアルPhantom出来ないぢゃん」
最上さんが顔色を変えた。
「私としたことが、申し訳ありません、失念していました。そうですね……ではお言葉に甘えさせて頂きます」
最上さんはペコペコと頭を下げ、靴を脱いだ。凛もあわせて靴を脱ぐ。
「はぁー、立派なご自宅ですね」
「ちょっと背伸びしてます。みら〜じゅ!とPhantom以外に出費先もない独身貴族なもんで」
あと風俗もだけど。俺は言いながら2人に簡易的な着替えをとり、渡した。そういえば推しなんだよなあこの人たち。俺が背中を向けると着替え始めた。
凛、最上さんの前で普通に着替えてる。マジか。
「あ、凛々。一応言っとくけど最上っちゲイじゃないらしいよ」
「え?!!?!?!?!」
聞いたことのない凛の大声が響き渡った。
「でも別にあーし達にムラムラ最上するわけぢゃないから大丈夫だけど、一応」
「むしろゲイだと思われていたんですね。働く観葉植物か何かだと思われているのかと思ってました」
「ウケる! 最上っち睡眠不足の方がギャグセン高いんぢゃね」
「えー、どうしよう。最上さん、一緒の布団で寝てもいいですか?」
「当たり前じゃないですか。今まで通りで構いませんが、むしろ凛さんが嫌でしたら、私は床で」
「あーはいはい、いいから2人ともはよ寝な。あ、世界っちもう振り向いていいよ」
桃は言いながら2人を掴むと、寝室に引っ張っていった。
☆☆☆
ご愛読ありがとうございます!
君のためなら生きられる。です。
ここまでで少しでも面白い、続きが気になる、書籍&アニメ化希望、来年のセンター試験国語に採用されるべき、ハリウッド実写映画化が見えた、友達に勧めたい、直木賞間近だ、直木賞は流石に無理だろ、カクヨムコン10万文字間に合うの?、人の金で焼肉を食べたい、のどれかを思った方は、シオリと星を頂けると大変励みになります!
2〜3話はストックしながら、ほぼリアルタイム執筆で毎日描き進めていますので、読者の皆様のリアクションを糧に筆を進めております。
是非お力を貸して下さい!
次話から新章の、レッドPhantom編が始まります!お楽しみに!
星はこちらから↓
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