天使と悪魔編
第7推活 俺は性獣ってコト?!
それから俺達は一階建てのダンジョンを3つ回った。手に入った装備と、所有者はこうだ。
鞘付きナイフ 世界
木の盾 世界
エアガン 桃
パチンコ 凛
加護の指輪 美鶴
エアガン 美鶴
HP回復薬×3 美鶴
一階建てのダンジョンは、後の3箇所もスライムしか出てこなかった。
そのため、遠距離武器が手に入ってからは、桃と凛で敵を発見次第打つことで、難なく攻略出来た。
一階建てのダンジョンでは、必ず戦闘前に武器が何かしら手に入るようだ。
手に入ったアイテムは、出口が現れた際、ストレージに保存できることがわかったため、現実世界には持ち帰っていない。
すっかり日が沈んでいたのと、肉体疲労はほぼないが精神疲弊があったため、俺達は攻略を中断し、イタリアンファミレスで食事をとることにした。
「1階建ての塔1回攻略で、1人5000円だから、4人で2万円の収入か。大体1時間くらいでクリアできるから、現状でもわりのいい仕事ではあるね」
ファントムレーダーに表示された報奨金を眺めながら、俺はつぶやいた。
ソファー席のテーブルで、俺の隣に凛、前に桃、その隣に最上さんが座っている。
「それな。でも中でした怪我が治るのはうれしーけど、痛いのは痛いっしょ? わりにあわなくね?」
桃は頬杖をついて疲れているようだ。指先で髪をクルクルと遊んでいる。
「世界さん、本当に大丈夫なんですか?」
「ああ、跡形もなく治ってるよ、ほら」
俺は凛に指先を見せた。両手で手を包み、マジマジと見つめている。怪我の様子がないことを確認すると、ホッとした表情をした。
「では、ダンジョン内部で負った怪我は外の世界には干渉しないということで確定でしょうか?」
最上さんも真剣に考えてくれているようだ。4回目の攻略が終わる頃には、美鶴と最上さんが別人なんだと、明確に理解出来てきた。
「んー、どうでしょうか。骨折や切断などの派手な怪我が完治するかはわかりません。でも試すには怖いので、なるべく怪我はしない方向で進めていきたいですね」
「それは、治る治らないに関わらずそうですよ! 前線で戦ってくださる世界様が一番危険ですし、痛みがあることには変わりないので」
「ありがとうございます。最上さん優しいですよね」
「あ、いえ、当然のことかと」
「何照れたんだよ最上っち。ウケる」
桃が最上さんを膝でつついた。最上さんは辞めてくださいよ〜と反応してる。女子同士の絡み方だ。
「お待たせしました。ご注文をどうぞ」
「あーしミトコンドリア風ドリア、ドリアン乗せ」
「イカ墨スパゲティをお願いします」
「俺はハンバーグセットを」
「私は苺のスペシャルパフェを」
「かしこまりました。ご注文繰り返します___」
最上さん、夜ご飯に苺のスペシャルパフェなんだ。誰も突っ込まないので、いつものことなんだろう。甘党おじたんか。
それにしても指先にした怪我だけでこんな騒ぎなんだ、もし中で死んだらどうなるんだろう、という疑問は投げかけないでおこう。
「でも最上さんの言う通り、中での痛みは本物だったから、武器構成を考え直したいな」
「どうするのがオススメでしょうか? ゲーム中の私達はそれぞれ好きな武器を使ってるだけですので」
「そうですね。けど、その前に。ゲームのPhantomでは殆どの戦犯が……ぶっちゃけ桃の突撃にあることを解決したい」
みんなが桃を見た。思っていたけど言えなかったことなんだろう。
「ごめんて」
「いや、配信的には面白いからいいんだけどね。痛みを伴うとなると話は別で、桃が心配なんだ」
「世界っち、マジ王子様ぢゃん」
桃が身を乗り出して微笑んだ。大きなバストがぎゅっと真ん中に集められて、エッチコンロが点火しそうになる。
「そうか? 普通だと思うが……だから、俺はこのまま前線の近接武器で固定したい。真ん中に重装備のタンク1人、後方支援と遠距離武器1人ずつが理想だ。怪我の心配もグッと下がる」
「えー、あーしハンマーがいいのに」
「ハンマーと盾と鎧でタンクはどう?」
「それは、ありよりのあり」
「よし、じゃあ桃がタンクを頼む。このチームのかなめになるポジションだから宜しくな」
「桃ちゃん、タンクでも突っ込むのは禁止ですからね」
「りょ」
桃はピースを逆さまにして頭の右側にあてて、猫耳のようなものを作りテヘペロした。エロ可愛い。今までの戦犯、全てを許そう。
「では遠距離はこのまま凛で頼む。近距離2人が必要そうなダンジョンであれば日本刀で参戦してくれ」
「わかりました」
「最上さんは魔法杖が手に入ったら、バフと回復役をお願いします」
「は、はい。畏まりました」
塔の外で美鶴の話する時は最上さんでいいんだよな? 一瞬気まずい空気が流れた気がしたが、その後は難なく食事とミーティングは進み、お会計を済ませて外に出た。
「では、明日また朝10時頃に代々木駅に集合ということで解散にしましょうか」
苺パフェでご満悦になった最上さんが言った。おかしいな、逆に美鶴の表情が最上さんの後ろに浮かぶようになってきた。
「そうですね。では皆さんまた明日!」
よーし、帰ってデリヘル呼ぶぞ!!
実はもう予約してあるんだ。まだまだ時間的には余裕があるけど。
「あ、まって。世界っちの家って広い?」
「ん? いや、普通の1LDKだよ」
「いいぢゃん。ベッドは広い?」
「一応クイーンだけど」
デリヘル呼ぶために大きめにしてますとは口が裂けても言えない。
「あつ森!! 実は私達3人で事務所に住んでるんだけどさ、狭いんだよね。雑魚寝か、たまに最上っちソファーで寝てるし」
「それは大変だな……最上さん良かったらうちに来ますか?」
というか女子2人は最上さんを男だと思ってないのだろうか。実家に帰らないのは複雑な家庭環境がそれぞれにあるのかもしれないので、聞かずにいよう。地下アイドルするために上京したのかもしれないし。
「いやいやいやいやいやいや!! そんなこと出来ませんよ! 悪いですし!!」
凄い拒否だ。そうだよな、皆いる時でも若干気まずい空気流れがちなのに、2人きりはまだしんどいよな。
「じゃ、じゃあ私、行ってもいいですか?」
凛が頬をそめ、伏目で小さく手をあげた。
ッッッッッッエ!!!!!!
ダメだろ!! 18歳だよな?! あれ、大学生の代だから、いいのか?!
いや法律的に良くても今俺の心がッッッッッッエ!!!!!! って思った時点でダメだろ!?
「えー、あーしが行こうと思ったのに」
「桃ちゃんはダメです!! 世界さんにちょっかい出すつもりでしょ?」
「そ、そんなことはないな??」
「目がバタフライしてますよ!」
「待って、2人で話を進めないで?? 女の子が1人で、しかもオタクだった奴の家に泊まるのはダメだとは思わない??」
「私は気にしないです。世界さんなら信用できますし。広いベッドで寝たいんです〜! 私が家に行くのは嫌ですか?」
いいか凛、大人を信用しちゃダメだ。大人はみんな仮面の裏に性獣を飼っているんだ。特に俺はダメだ。飼ってるというか、人の皮を被った性獣本体なんだ。
「嫌ではないけどさ、ほら今日初めましてしたばっかだし」
「今までもずっと一緒にゲームしてたじゃないですか。こうしてプライベートでも付き合いがあるってことは、オタクとアイドルじゃなくて、もうお友達ですよ」
ッッッッッウ!!!!
凛の言葉は俺にクリティカルヒットした。
なんとか自らの性獣を抑えよう……こんなピュアな想いを蔑ろにはできない。自制のためなら指の2.3本は折る覚悟が出来た。
「わ、わかったよ。そこまで言うなら」
「本当ですか!? ありがとうございます〜!」
「えー! ずるいずるい凛々だけずるいー」
「桃ちゃんはこないで下さいね、世界さんが危ない」
「はあー、否定できない自分がツラ。じゃあ最上っちで遊ぶかあ」
「桃さん?!」
「じょーだんだよ、最上っちも世界たんLOVEだし」
「え?! いや、ラブなのは美鶴がでして、私は世界様には感謝といいましょうかなんといいましょうかその」
「あー、もういい。冷や汗最上ぢゃん。2人で仲良くシングルベッドで寝よー。抱き枕がわりヨロ」
「わ、わかりました」
最上さんすげえ。10代の女の子からここまで信頼を勝ち取るにはどれだけの理性があればいいのだろう。いや加齢で性欲が失われてるのか?でも40代ならまだまだ現役だよな。
「じゃ、また明日ね〜世界っち〜」
ファミレスの前で手を振り別れた。最上さんは丁寧にちょい禿げた頭を下げた。
凛は宿泊道具を取りに一度事務所に戻るようだ。
俺は帰宅すると、Blu-rayAVとVRゴーグルを収納に隠し、掃除機をかけた。部屋に消臭スプレーをかける。特に布団と枕とシーツは入念に消臭した。これで準備はいいだろうか?
「やべーよ、箱推しアイドルの1人が家に泊まりにくるって、冷静に考えなくてもやべーよ。今のうちに抜いとくか? 3回連続ですれば俺の性獣も少しは落ち着いて___」
ピンポーン!
呼び出し音が部屋になり響く。心臓と股間が高鳴る。振り向くとモニターには超絶美少女、凛が映っていた。
「はい」
「凛です。えへへ」
☆☆☆
第二章もご愛読ありがとうございます!
君のためなら生きられる。です。
ここまでで少しでも面白い、続きが気になる、書籍&アニメ化希望、来年のセンター試験国語に採用されるべき、ハリウッド実写映画化が見えた、友達に勧めたい、直木賞間近だ、のどれかを思って頂けた方は、シオリと星を頂けると大変励みになります!
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