第5推活 俺の正体はアナコンダってコト?!

「こ、これは……!」


 俺は宝箱の中身を一つ取り出した。 


「何が入ってたっぴ?」


 美鶴がすぐ後ろにきて、覗き込んできた。俺はそれを見せながら伝える。


「加護の指輪だよ。防御力と回避率が上昇する装備だね」


 俺は片膝をついて、美鶴の手を取った。 


「仲直りの印に」


 俺が指輪を中指に嵌めようとすると、頬を染め、複雑な表情をした。 


「で、でも美鶴は、世界たんをずっと騙してたっぴ。こんな素敵なもの、貰えないっぴ」


「美鶴っちが要らないならあーしが貰っちゃおうかなー?」


「わ、私も世界さんから指輪、欲しいのです」


 桃と凛が寄ってきた。桃は明らかに美鶴に向かって言っている。凛は俺の方を見ている。あれ、凛、本当に欲しいのかな。


「っぴー!! やっぱり美鶴が、ありがたく頂戴するっぴ」


「なんだよその喋り方。ほら」


 俺は笑って指に嵌めてやると、何度も嬉しそうに加護の指輪を眺めていた。 


「大事にするっぴ〜!!」


 ひぃいいいいい、可愛すぎて食べてしまいたいんだが?! 

 食べてもいい??

 いいよね、口に含んで、すぐ吐き出すから、いいのね?!


 オタク心は爆揺れしていたが、宝箱の中身はもう一つあったので、一つ呼吸を置き、それを取り出して確認する。


「ナイフなのです?」


「ああ。ご丁寧に鞘までついてる。これは俺が装備しててもいいか?」


 モンスターが現れた時に戦闘するのは俺でありたいからね。


「勿論なのです」 


「ハンマーがあったら、あーしに頂戴!」


「わかってるよ。凛は刀だな。美鶴は魔法剣だけど、序盤にあるかな」


「そしたらヒーラーやるっぴ。魔法杖があったら美鶴が担当するっぴ!」


「それは助かる。パーティバランス的にも、アタッカーが多いからな。俺は装備さえあれば、タンクの役割に移るよ」


「世界っちがタンクってもったいなくなーい?」


「俺はタンクでも十分闘えるから、大丈夫だ」


「ほー、流石王子様。心強っ」


「なんせ、世界一なのですから」 


「今は俺もレベル1の普通のプレイヤーだよ。まあじっくりやってみよう」


 しかし、おかしいな。ここに宝箱があるってことは、こいつを手にいれればダンジョンクリアなはず。

 耳をすますと、何か風が漏れるようなシューシューと音がしている。


 嫌な予感がした。


「まだ終わってないかもしれない。全員、念のため壁際に立ってくれ!」


 3人も異変に気付いたのか、壁際に並ぶ指示に即従ってくれた。 

 俺は3人の前に立ち、ナイフを抜刀する。 


 すると、室内の真ん中に、天井からベチャっと何かが落ちた。 


「ひぃ! なにっぴ?」


「スライム……かな?」


 現実世界でみるスライムの不気味さは想像以上だった。地面を巨大なアメーバが這い、こちらに近づいてくるようだ。 


「3人はあたりの警戒を。絶対に離れずに一丸となって、異変があれば叫んで知らせてくれ」


 振り返り指示を出すと、3人は頷き、手を繋いだ。いい判断だ。それにしても凛の格好エロいな。


「こっちだ!」


 俺はスライムに向かい叫び、砂を蹴り移動した。スライムは砂がかかり怒ったのか、まんまと誘導されてくれた。 


 スライムの液の部分に攻撃していても意味はない。Phantomと同じなら、核があるはずだ。

 スライムの移動速度は遅いが、液が当たった地面はジュージューと音を立てて溶解している。

 ここでのダメージがダンジョンを出た後も続くのか確かめるために、俺は敢えてスライムに触れてダメージを受けてみた。


「痛っ」


「大丈夫っぴ?!」


「ああ、大丈夫! わざとくらっただけだ、外に出ても残るのか確認したかった!」


 接近することで見つけていた球体の核に、今度はナイフを突き刺した。

 核はスライムの中を流動的に動くため、初心者には意外と強敵になり得るが、俺はこの核が右回りで体内を回転していることを知っていた。規則性に気づけば音ゲーみたいなもんだ。

 核を割られるとスライムは霧になって消えていった。 


「やるぢゃん!」


 3人はかけ寄り、褒めてくれた。わざとスライムに触れた箇所は火傷のようになっている。


 どこからともなく扉が現れた。その横には、入り口と同じように指紋認証する場所がある。火傷したけど大丈夫かな?


「多分これでクリアだな」


 俺はそこに手を置くと、扉が開いた。

 扉の外に出ると、元いた庭だった。 

 全員外に出ると、ダンジョンが霧散した。 

 我々の見た目も、外に出るとともに元の状態に戻って___


「あ」


「まずいです……!」


「やべ」


「っは!!」


 俺は最上さんと目が合った。

  

        ☆☆☆

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