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 拘置所の外は、雪景色だった。しんしんと降り積もる銀世界に踏み出しながら、御厨は電話を掛けた。すぐに相手が出る。

『話は聞けたか?』

「ええ、まあ。殺意を否定しないので、公判でも私のお願いを聞かずに全てありのままに話すかもしれませんね」

『それはそれであいつのためになるだろう』

「それで、例の件ですが、やはり感づいているようです。ただし、証拠は集められていないようで……」

 電話の向こうの相手が小さく笑った。

『命拾いしたな』

「どうするんです? 放っておけば、脅威になるかもしれない」

『何度でも叩き潰せばいい』

 楽観的にも思えるその言葉に、御厨は白い溜息を返した。

「もしかして、楽しんでるんですか?」

『俺を吉野みたいに言うなよ』

「彼を利用したせいで影響を受けたのかと思いましたよ」

 相手は抑えた笑い声を漏らした。

『蟻は一匹だけでは象に勝つことはできない』

 御厨は少し離れた駐車場に辿り着いて、うっすらと雪のヴェールを被った車に乗り込んだ。エンジンをかけてヒーターを入れる。

「とにかく、寺田さんはあのままで大丈夫なんですね?」

『問題ない。今回の件で簡単に動かせるのが分かったからな』

「分かりました。では、公判は通常通りに」

『後は頼んだぞ』

 相手の電話の声が遠くなりかけて、御厨は慌てて口を開いた。

「OCASの方はどうしますか? 感づいている人間がいるかもしれません」

『必要ない。俺を疑う頭などないからな』

 そう言うと、仙堂は電話を切った。

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