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 十二月二十八日、OCASのメンバーは休日にもかかわらず呼び出しを食らって、警視庁の一室に集まった。年末年始の特別警戒で、庁舎内もどこかざわついている。

「まさかお前が休日に動いてるとは」

 三田村の唖然とした表情を受けるのは、モニターを背にした宇和島だった。その目は真っ赤に充血しているが元気そうだ。他の面々は彼女を取り囲むように椅子に座っている。

「皆さん、すんません。でも、とんでもない手掛かりを掴んじゃったんで、年が明ける前に共有したくて」

「電話でも済んだんじゃないか?」

 温度の低い寺田の声に、宇和島の得意げな笑みがぶつけられる。

「これを知ったら、そんなことを言ってられないと思うんで」

「勿体ぶらずに話せ」

 仙堂が促すと、宇和島はタブレットの画像をモニターに映し出した。被害者の胃の中から見つかった例の本の一ページだ。

「嫌というほど見たな、これ」

 三田村の軽口に、宇和島は質問をぶつける。

「でも、よく見てるせいで細かい部分を見てないんだよ。ここに何があるでしょう?」

 宇和島は英梨花が見つけたインクの染みの辺りを指さした。寺田は目を凝らすが、首を振った。

「なにも見当たらないが」

「拡大してみると、どう?」

 拡大した画像が表示される。鶴巻が指を差す。

「何か……黒い汚れみたいなのが……」

 宇和島は鶴巻に手を伸ばした。

「そう! これは何かというと、小口印なんだよ」

「あ!」鶴巻が声を上げる。「図書館の」

 宇和島は嬉しそうに手を叩いた。

「やっぱり、鶴巻さんは話が早いね~。まあ、英梨花さんの受け売りなんですけどね」

「どこかの図書館の蔵書ということか」

 英梨花の名前に反応を示していた仙堂が言うと、寺田が思わしくない顔をする。

「日本に図書館は三千以上ある。その中から探せと?」

 宇和島は人差し指を振って「チッチッチ」と舌を鳴らす。

「このインクの染みの両端は印の囲みだと仮定して、その間のインクの付き方のパターンと、この絵が載っているページのページ数から、どういう文字が書かれているのか、分析してみたんですよ」

「そんなことできるのか?」

「とりあえず、全国の図書館の文字列を一ピクセルごとに横に切断した断面画像を作って、それとこのインクの染みのパターンを比較すればいいんです。そこらへんは、私に掛かればなんてことはないっすからね。そして見つけた、一致率九十八パーセントの図書館がこいつです!」

〝大田区大森中央図書館〟

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