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捜査陣が次の手掛かりを探す中で、OCASメンバーには週末の、そして年末年始の休日がやって来た。新宿で待ち合わせをした宇和島と英梨花は少し離れた場所にあるカフェに落ち着いていた。
「シルバニアファミリー? 私も子どもの頃遊んでたよ」
宇和島が英梨花の撮った写真を眺めている。さくらがクリスマスプレゼントに夢中になっているところだ。一連の写真の最後では、さくらは赤い屋根の家の前ですやすやと寝息を立てている。
「巨人が寝てるみたい」
「皐月ちゃんにもこういう時期があったと思うよ」
「お人形遊びって頭使うんだよね。だから疲れるの」
「頭使う?」
「だって、人間の生活みたいにお人形にも自律して動いてほしいから、こっちのお人形とあっちのお人形は違うロジックで動いてもらわないといけないでしょ」
英梨花は驚いたように目を丸くした。
「そんなに高度な遊びだったの? その頃の記憶があるから、今はコンピューターの中でシミュレーションとかを動かしてるのかな」
宇和島は英梨花をじっと見つめた。
「なに?」
「いや、コンピューターってなんか古い言葉だなって思ってさ」
「うわ、失礼な奴」
「違う違う、そういう意味じゃないよ! ただ、最近あんま使わないな~と思ってさ」
「はいはい、私はおばさんですよ」
「ねえ、英梨花ちゃ~ん、ごめ~ん」
「おばさんってのを否定しなさいよ」
「英梨花おねえちゃん♡」
媚びた仕草で顔を寄せる宇和島の額を英梨花がでこぴんする。
「でもさ、仙堂さんってさくらちゃんとうまくやれてるの?」
「どうしてそう思うの?」
「だって……子どもと遊んでる姿が想像できないんだもん」
「案外ちゃんとやってくれてるんだよ」
「案外って……英梨花ちゃんもちょっと意外に思ってたんじゃん」
「あ、バレた? まあ、さくらが生まれる前はそう思ってたけどね」
二人はひとしきり他愛もない話を楽しんでいた。しばらくすると、宇和島はバッグの中からノートパソコンを取り出した。
「ねえ、ちょっとだけ仕事の話していい?」
英梨花は目も口も開け放って、宇和島の顔を凝視した。
「皐月ちゃんが仕事の話するなんて……何があったの?」
「なんかさ、一課の奴らがさ、めちゃくちゃこっち煽ってくんのよ。嘘でしょってレベルで。で、みんなやる気になっちゃってさ、私もなんかしたいけど出る幕なくてさ、どうすりゃええんやって感じなのよ」
「悩んでるの?」
「認めたくはないけど、そういう感情が芽生えつつある」
英梨花は破顔して宇和島の頭をグシャグシャに撫でた。
「大人になったねえ~、皐月ちゃ~ん」
「ちょっと……やめてよ」
英梨花の手を振りほどいて、宇和島はキーボードに指を走らせる。
「今はどういう状況なの?」
「仙堂さんに聞いてないの?」
「詳しくは聞いてない」
「じゃあ、ちょっと資料見てみる?」
ノートパソコンを英梨花の前に滑らせる宇和島。英梨花は神妙な面持ちになる。
「データ持ち出したの?」
「コピーして持って来た」
「それ、完全アウトなやつだよ」
「なくさないから大丈夫だよ」
「情報流出のお手本みたいなこと言ってる……」
「まあまあ、そんなこと忘れてさ、見てみて下さいよ。〝物知り博士〟さん」
「うーわ、あの頃の辛い日々が蘇るわ……」
英梨花は小言を口にしながらも、画面に目をやると途端にスイッチが入ったように真剣な眼差しになる。それを宇和島はどこか嬉しそうに覗き込むのだった。
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