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捜査に進展があったのは、金曜日のことだった。
群馬県警の捜査会議は、情報共有のため警視庁捜査一課とOCASにリモートで中継されていた。
地元警察が突き止めたのは、被害者殺害の凶器となったライフルの出所だった。画面の中で刑事が報告を行っている。
『群馬県内の男性が元の銃の所持者だったようです。その男性は先日病気で亡くなったそうですが、その家族によれば、銃器の回収を持ち掛けてきたのは
『回収というのは具体的に?』
向こうの事件主任官が尋ねる。
『警察と協定を結んだ銃器管理団体と偽って、亡くなるなどして所持者のいなくなった銃器を安全のために迅速に回収する必要があると説明していたようです。男性宅には、半年ほど前に前園がやって来ていて、その話を覚えていた家族が連絡をして、十二月十七日に前園が回収しに来たということです。その際、銃器を買い取るということで、現金十万円を渡したそうです』
「犯人はこの事件に金を惜しまない」
仙堂が言うと、寺田の眉がピクリと反応した。
捜査会議では、前園と名乗る男が事件の半年ほど前から広範囲にわたって銃器の回収話を持ち掛けていたことが報告された。前園の車に関する証言も集まり、そのナンバーが判明したものの、偽造されたものだったらしい。第一、第二の事件で使われていた携帯電話番号は、実店舗で販売されているプリペイドSIMカードと中古のSIMフリースマホを利用しているとみられ、いずれも契約情報登録が不要で、追跡が不可能とのことだった。
捜査会議が終わり、OCASの部屋には深い溜息が漂っていた。
「捜査は遅々として進まず、か」
三田村が歯痒そうに拳を握ったり緩めたりしている。
「一課では、被害者の店の利用者にも捜査の範囲を広げているようです。顧客トラブルの線ですね」
寺田の表情から、一課の方でも進展は芳しくないことが窺える。
「顔が分かってるのに足取りが掴めないというのがもどかしいですね」
ウロウロと動き回る三田村に宇和島が白い目を向ける。
「斎くん、おとなしくしててよ」
「やかましい。お前は画面の中の現場でも見てろ」
そう言い返されて、宇和島は不愉快そうにそっぽを向いた。昨日、OCASのメンバーは群馬県の現場に向かいデータ収集を行っていた。とはいえ、捜査本部に共有できるような成果を上げることはできなかった。そもそも、OCASの主張を一課の刑事たちは鼻で笑っている。
***
「で、その聖人の最期を模してるからなんなんだ?」
刑事たちは、鶴巻の報告を一瞥して笑っていた。昨日の捜査会議前のミーティングでのことだった。鶴巻が俯きがちに身を引くのを見て、三田村が前に躍り出た。
「犯人の行動原理が解れば、特定に繋がるかもしれませんよ」
「じゃあ、捜査に使えるような形にしたらどうなんだ。俺たちはお部屋でうんうん唸ってるわけじゃないんだ」
***
三田村はその時のことを思い出して、鼻息荒く椅子に腰を落とした。
「俺たちも捜査に出るべきじゃないですかね」
「気持ちは分かるが、俺たちの本分は異常犯罪の分析だ」
「結局、僕たちは便利屋に甘んじるしかないんじゃないですか?」
無念そうに寺田が言い放った言葉は残響のようにして部屋の中に漂った。
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