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OCASメンバーは関永に連れられて、一課のフロアにやって来た。共同捜査本部設置の前に簡単なミーティングを行うためだった。八日の事件を担当しているメインのメンバーが顔を揃えていた。彼らを直接束ねるのは
「群馬の事件では、犯人は被害者と別の車で現場に向かったと考えられているんで、八日の事件でリストされているワゴン車の特徴をNシスで浚っていくことになる。それから、群馬の事件で使用されたライフルの出所からも被疑者特定を行っていく。こっちは被疑者の顔写真があるんで、それがあれば群馬県警の方である程度特定が進むだろう。被害者は古物商で、職業柄恨みを買うことも多かったはずだ。この線はこっちで追うことになる」
テキパキと指示を出していく乙部の視線がOCASの面々に向けられる。
「OCASはデータ収集があると思うんで、何か分からないことがあれば聞いてくれ。群馬県警にも話を通しておくんで、向こうでの活動も問題ないとは思う」
刑事たちの顔が緩む。
「まあ、捜査はこっちに任せて下さいや」
誰かが言うと、刑事たちが笑った。寺田は鼻で笑った。
「我々も捜査活動を行うので、よろしくお願いしますよ。サポートできるか分かりませんがね」
犯人がジャパン・キーパーの人間になりすましていたことを突き止めたのは、OCASの功績だった。寺田はそれを盾にして、慇懃無礼に会釈をした。ピリついた空気の中、乙部が口を開く。
「OCASも成果が要ると思うが、それは我々も同じだ。お互い協力して捜査を進めるように」
ポツポツと返事がある。宇和島は露骨に不快感を示して、顔をしかめた。最後に、関永が言葉をかける。
「連続殺人事件ということで、世間の注目もより一層集まることになる。ここにいる全員一丸となって事件解決に邁進するように」
今度は大きな返事がある。
***
短いミーティングが終わって、仙堂たちは一課のフロアを後にする。
「とりあえず、現場の状況を整理しよう」
仙堂がそう言うと、寺田は驚いたように目を丸くした。
「現地に向かいましょう。僕たちは彼らの便利屋じゃないんですよ」
「寺田、落ち着け。焦っても意味はない」
「焦ってませんよ」
「事件の情報を整理したら現場のスキャンも行う必要があるだろうから、準備しておけ」
宇和島はそう言われて、口をへの字にしながらも返事をした。関永が寺田の肩を抱くようにして、少し離れた場所に連れて行く。
「寺田くん」関永は小さい声で言う。「君が一課に戻りたい気持ちは分かっているつもりだ。だが、今は知見を広げるために地を這うことも必要なんだよ」
「私は何も言ってませんが」
「フラストレーションが溜まるのは分かる。だが、OCASは窓際じゃない。君には期待をしているんだ。分かるだろう?」
寺田はじっと身体を強張らせていた。その目は関永の方には向けられていない。
「私はなぜOCASに選ばれたんでしょうか」
「仙堂が君たちを集めた。かつて共に働いた仲だろう?」
「仙堂さんが……?」
関永の手が寺田の背中を二回叩く。力を奮い立たせようとするかのようだった。
「そういうことだ。今は腐らずにいろよ」
関永は寺田の元を離れると、他のメンバーたちに手を挙げて去って行った。三田村が寺田の元に近づいてくる。
「関永さんとなに話してたんですか?」
「なんでもない。気にするな」
向こうで宇和島がキョロキョロしている。
「ねえ、蓮ちゃ~ん、仙堂さんどこ? 急に消えたんだけど」
「さっき向こうの方に行ったけど」鶴巻が通路の向こうにある角を指さした。「仙堂さんに何か用?」
「遺留品のスキャンどうしようか聞こうと思ってさ」
宇和島はスキップしながら曲がり角から顔を覗かせた。そこに立ち止まっていた仙堂がスマホを耳から離したところだった。
「あ、すんません。電話してました?」
「いや、大丈夫だ。家族に連絡してただけだ。何か用か?」
「群馬の事件の遺留品のスキャンってどうします?」
「現場をスキャンするために向こうに行くから、その時でいい」
仙堂がスマホをポケットにしまって歩き出す。
「英梨花ちゃん元気です?」
「ああ。お前のこと心配してたぞ」
「マジ? さすが英梨花おねえちゃんやん。でも、仙堂さん今日も明日もゆっくりできないですね」
「それが警察なんだよ」
「はあ……、公僕ってやつですね」
「その公僕の部屋に行くぞ」
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