第4話

 もう4つ目のお話です。

 朝一、新聞の折込広告をチェックしていた私は、そろそろ買い足さなくてはならない薬と洗剤が安くなっているのを発見! 開店時間に合わせ、買い物袋を手にドラッグストアへと出掛けました。

 我が家からは坂道を下り、ほんの少しの平坦な道を進むと、今度は上り坂が待っています。上りきってしまえばドラッグストアまでは平坦な道です。

 そのドラッグストアの正面にある信号を渡ろうとした時、右横方向から急ぎ気味に手押し車を押しながらやって来る、おばあちゃんと出くわしました。

 信号はまだ青だったのですが、どう考えてもおばあちゃんのスピードで渡り始めれば、直に黄色に変わってしまうはず。

 どうするのかな? と思う私の不安

は却下され、おばあちゃんはどんどん渡り始めたのでした。

 しかしやはりです。信号は黄色になってしまいました。

 私はおばあちゃんを追い越すことができず、更に少し後ろを歩きました。

 当然信号は赤。

 勿論左右に信号待ちしている車に、交互に頭を下げながら横断歩道を渡ることに。

 車の中の人は苛つくことも無く、笑みを浮かべてくれている人も居ました。感謝しながら渡り終え、私は左方向へ向かったその時、

「ありがとね」

 私を振り返り、おばあちゃんはそう言ってくれたのでした。

 おばあちゃんは、ちゃんと気づいていたのだと分かった時、私は少し気恥ずかしい気持ちになり、

「あっ、いえ」とだけ言って私はドラッグストアへと向かいました。

 店先に着き、おばあちゃんを探すと、ブロック塀の影へと消えて行くところでした。

 第2話でお話したおばあちゃんといい、今回のおばあちゃんといい、何気ない一言で、人を優しい気持ちにさせてくれる、人生の先輩に私は2度も出会えました。

 私も将来、この2人のような素敵なおばあちゃんになりたいと、もうすっかりおばあちゃんになっているにも関わらず、そう思うのでした。


 次はいよいよ最後、たくさんの優しい人に出会えたお話です。

 

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