32,再会

 ナナ・スドウ、彼女はジーク中隊勤務時に一部の味方から≪突撃姿勢の狙撃手カミカゼ・ライフルウーマン≫と呼ばれていた。


 その通り名の通りに、近接戦闘仕様にカスタムされて近代化改装された単発狙撃銃マークスマンライフルを片手に、自ら前線におもむき、アリッサ・マーカル上等兵の援護射撃を了承の上で敵兵死者20,105人を撃ち殺すという偉業を達成した。


 その戦闘の後で、彼女は味方から惜しまれながら退役した。


 最後に会った時、日本語で「人が、敵が血の噴水を噴き上げながら目の前で死ぬのは、隊長にとって気持ちいい光景ですか?」と聞いてくると俺の答えも聞かずに正門から日常に出て行った。


 その時の俺は、「・・・これが、戦争の残酷な真実だ」と誰にも聞かれないように日本語で返した。


 そして今、彼女が艦長の服装で俺の前にいる。


「久しぶりだな、ナナ。 元気だったか?」


「はい!お久しぶりです、元アメリカ合衆国国際特殊海兵隊レディース・フォース所属ジーク中隊の高宮たかみや中尉」


 ちなみに、コードネームのジークではなく本名高宮で中尉と呼んでくるのは、彼女だけだ。


「ははは・・・、相変わらずだな」


 ナナがキラキラした尊敬の目で俺を見てくる時は大方、気分がいい時だけだ。それ以外でも、キラキラしていた気がする。


 その後、艦長室にお邪魔してコーヒーを頂きながら談笑しているとあっという間に再発艦の準備が整ったらしい。


「それじゃあ、またな」


「はい。 名残惜しいですが、任務中なので致し方無いですね」


 そして、給油が完了したCH-47チヌークに生徒達と共に搭乗すると急ぎグァム島に向けて飛び立った。

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