31,ナナ・スドウ

 5月30日から始まったたった2日だけの中間テストが終わると、次は11月の期末テストまで何もない。


 だから、護身術教室の長期休みという名目で今、俺たちはグァム島に来ている。


 え?航空機代?不要だ!


 なぜなら、アリッサ・マーカルがアメリカ合衆国国際特殊海兵隊レディース・フォース所属に所属していた時、CH-47チヌークのパイロットだったからだ。


 つまり、校庭まで当時陸自にいた時に教えていた後輩のヘリで迎えに来てもらい、そこからはアリッサの操縦でグァム島に飛んだという事だ。


 久しぶりのCH-47チヌーク内は、埃の匂いではなく男の匂いがした。当たり前だ、今でも現役の海兵隊員達が乗っているのだから。


「コレで行くには行けるが、燃料が足りない。 なので、今回だけ特別に強襲揚陸艦ブーゲンビルに乗艦し社会見学という事で艦内を見学できることになった」


 実際は、ジーク中隊時にいた隊員の1人が海兵隊を辞めて海軍士官になった。今では艦長としてアメリカ海軍所属アメリカ級強襲揚陸艦の3番艦であるブーゲンビル(LHA-8)に乗艦している。


 ※LHAとは、Landing Helicopter Assaultの略。


 艦橋に立ち入ろうとして乗員達に止められていると、聞き覚えがあり透き通るような綺麗な声が響いた。


「ワッツ?(何をしているの?)」


 その方向に目を向けると、軍帽を被っていた乗員達は一斉に驚きながら敬礼をした。


日本語訛りが残ったカタコト英語?・・・って、ことは?」


「あ。 高宮たかみや中尉、お久しぶりです!」


 黒髪ロングで透き通るような水色の瞳孔どうこう、スレンダー体型だがハキハキとした声色・・・間違いない。


「お前か、ナナ・スドウ」


 そう彼女が海兵隊を辞めてブーゲンビル艦長になった生まれは日本だが育ちはアメリカの元仲間だ。

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