シーズン2

14,過去話2

 アリッサ・マクラーフル。


 俺が指揮していたアメリカ合衆国国際特殊海兵隊レディース・フォース所属の彼女は当時、突入を担当する突撃兵という位置についていた。


 主に使っていた主武器メイン・ウェポン9ミリ口径×19薬莢長パラベラム弾を30発装填したMP5Kで、副武器サブ・ウェポンは12ゲージ(18,5ミリ口径×0,729インチ)弾を使用する散弾銃のM870だ。


 ちなみに、MP5Kの〈K〉とはドイツ語で「クルツ=切り詰めた」という意味だ。


 話を戻そう。


 突撃兵といっても、命を捨てて神風攻撃をする役ではない。テロリストが立てこもる建物のバリケード破壊や後方支援などに徹する精鋭のことである・・・と、俺は定義して居る。


「知り合いなの?」


「ん? ああ、まぁ。退役するまで仲間だったよ」

「どんな子なの?」


「お調子者さ。でも、隊の誰よりも賢いから武装ゲリラに鉢合わせた時は俺に指示していたよ」


 俺は当時を思い返した。


 3年前。


 退役すると決断する寸前にアフガニスタンで撤退中に鉢合わせて、そのまま乱戦になった事が一度だけあった。


 その時、俺は隊を混乱させてしまった。


「応戦せずに、撤退するべきです!ジーク少尉!」


「フリット軍曹! ここで撤退してその後にここに来た部隊を見殺しにしろと俺に言うのか? 感情があるなら、殲滅だ!総員、戦闘配置! 撃ち殺してやれ!!」


 そこにゲリラが放ったロケット弾が向かってきたので、口喧嘩中の俺たちは気付かなかったがそれに気が付いたアリッサが急いで対爆装衣を着て俺たちの方向に走りながら突き出した拳でロケット弾の向きを変えた。


「うおぉぉぉ! そりゃあ〜〜!!!!!!」


 当然、向きを変えたロケット弾は建物内に入り、起爆して着弾した先の建物を破壊した。


「大丈夫ですか、ジーク少尉!」


「あ、ああ。助かったよ」


「フリット軍曹、無事か?」


「は、はい。なんとか・・・でも、さっきからみ、右脚の感覚が」


 彼女の右脚を見ると、破片が刺さり鮮血が噴き出ている。


「これは、まずいな・・・。 衛生兵メディック!」


 急いで衛生兵メディックを呼び寄せて応急処置を施させたが、行動不可能になってしまった。


 この出来事が、俺の退役決定に繋がった。


 なんとか撤収した翌日に上官に呼び出されて「君は今まで、よく従軍してくれたよ。 でも、昨日の戦闘で隊を危険に晒した。この始末はどうする気かね?」と言われた。


 俺は責任転嫁せきにんてんかも言い訳も出来ないと判断して敬礼しながら、「本日付けで、お世話になりました」と言った。

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