8,アマアマ⇆デレデレ

 話を今に戻そう。


 急停止して後ろを振り向くと群青の制服に身を包んだ咲耶さや義姉ねえの姿があった。


「さ、咲耶さや義姉ねえ!?」


「って、ま、マー君?!」


 四駆が止まりドアを開けて急いで降りて来ると、人前で抱きついて来た。


「ちょ、当たっているってば」


「マーくぅん、マーくぅん!」


 俺の義姉あねは、俺と一緒だと頭がバカになる性質がある。


 なんでも、ナンパされて困っていると当時中学生の俺が颯爽と現れて、助けてくれた・・・らしい。


 ちなみに、俺は覚えていない。


「にへへ・・・。マー君、捕まえた〜」


 うん。完全にバカである。


 そんな義姉あねを見てしまった同僚と思われる制服の人たちは引いていた。中には、普段のクールさに対するギャップに驚いた表情もいた。


「ね、義姉ねえさん。き、奇遇だね?」


「マー君こそ〜、ここで何しているのさ〜」


「そ、その前に・・・説明したら? 同僚さん達に」


 苦笑いしながら固まっている人たちの方向に話をさせてあげると、俺の頭を撫でながら「義弟おとうとまもる君でぇす!」と両頬りょうほほを指でぷにぷにして来た。


 仕事ではクール態度だが、俺を前にするとアマデレ(アマアマデレデレの略)になるのが咲耶さや義姉ねえだ。


 それに家事は最上級に大好きで、勝手に俺の部屋に入って来て掃除を始めるほどだ。


 咲耶さや義姉ねえの好きな音楽スタイルは、J-POPと重低音だ。それに、ミリタリーが好きだからよく休日には俺と一緒にサバゲー(サバイバルゲーム)に行く。


 おまけに低身長で、俺と義妹の間に収まってしまうほどだ。だが、2人ともボンッキュッボンッの三拍子だから正直に言って目のやり場に困っている毎日だ。


「それで? なぁんで、ここに居るの?」


「ん? あぁ、そうそう!」


「・・・(いや、忘れるなよ)」


「横浜市の有力資産家の灘家のご令嬢が、中々帰らないから捜索願が出てて〜」


 ご令嬢か・・・、道理で疑われる訳だ。


 その時、リムジンがやって来て扉が開くと同時に「高宮先生!」と灘の声が聞こえてきた。その後ろにはしゅんとして反省している女性執事の姿があった。


「もう! 逮捕されているじゃない!セバストリアさんの所為せいだよ?!」


「も、申し訳ありませんでした。お嬢様」


「私じゃなくて、謝る相手は高宮先生こっちでしょ!?」


 俺を指差して午前05時に、執事に説教をする姿は、ちょっと笑えた。

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