7,過去話

 高宮たかみや咲耶さや、旧姓は市篠田ししのだ咲耶さや。兄のすすむが戦死した後に父が再婚した。兄のすすむは俺が高校に入学した翌月に、アフガンで死んだ。兄を殺した武装勢力はその後、自爆特攻で全滅したらしい。


 兄の遺骨の一部が俺たち家族の元に戻って来た時、それを受け取った母さんが狂い発狂した。それに耐え切ることが出来なかった親父は俺を連れて離婚、その2ヶ月後に再婚した。


 親父と離婚した母さんはその後、線路に飛び込んで自殺したらしい。


 高校を卒業して寮から実家に帰ってくると見知らぬ女性と親父が家でキスをしていた、その側に義姉妹が居た。俺はその時、困惑して義母となった市篠田ししのだ朝子あさこに護身用で持っていたバタフライ・ナイフを手に取り臨戦態勢の為に身構えた。


 すると、俺の護身術の実力を知っている親父が慌てて止めに入った。


「待て待て待て、この人は新しいお母さんだぞ? いきなり交戦的な挨拶をするんじゃない。朝子あさこさん、本当にすまんな」


「いいえ、気にしないで。 えーっと、まもるくんだったっけ?これから私たちを宜しくね?」


 笑顔で接してくるが、当時の心境は「・・・(財産目当ての狐か?)」と思っていた。


 実際に生活してみると財産目当ての行動ではない、朝食を作り義妹となった市篠田ししのだあや(当時14歳)の起床手伝いなど普通の母親の行動だった。


 そして4月に俺は、防衛大学に入学した。

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