5,何処かで見たことある・・・?

 夕日が職員室内に入り机や書類などが入った棚を照らす中、2人の女生徒と俺、高宮たかみやまもるの姿があった。


「疲れていると思うから、差し入れだ。 よっしゃ、じゃあ。続き、行くよ?」


 ホームルームを終えた後、すぐに直行して来た2人には少し驚いた。


 息を切らして「た、高宮先生は居ますか?」なんて言うのだから、逆に怪しまれた。


 そして今の状況である。


 日が落ち月が出た辺りで時計を見ると、深夜に差し掛かって居た。


「今日は遅いから、家で続きを書けよ?」


「「はい・・・」」


 夜遅くに1人で帰らせるという事はさせない。


 そういう訳で、ハーレーのサイドカーと後ろに乗せてそれぞれの家に送る事になった。


 山村やまむらの家はハーレーで10分だったが、なだの家は横浜市内だという。


「つまり、電車か?」


「はい、そうです」


 俺たちは今、湾岸高速道路を走っている。


 冷たい夜風がスカートを揺らし、吐息がヘルメットのガラスを少しだけ曇らせる。


「寒くないか?」


「大丈夫、です」


 流石に深夜のハイウェイは寒いから、下道で行こうと高速を降りた。そのまま、ホット紅茶のボトルをコンビニで買い手袋を擦り合わせて吐息を当てているなだにあげた。


「もう少しで横浜やから。 それと、家に着いたらすぐに寝ぇや〜」


 再びエンジンを掛けて出発しようとした時、赤色の光を灯した白と黒の四駆が行手を阻んだ。


 四駆から紺色の制服と女性執事が降りて来たので常に装備している散弾銃ショットガンホルダーに手を伸ばし身構えると、なだが「あっ、せんせー・・・その、家の者です」と俺の耳元で声をかけた。


 直後、女性執事が「お怪我はありませんか、お嬢様!」と声を荒げて灘を庇いに来てサイドカーから強引に降ろした。そして、何を勘違いしたのか俺の方に振り向き「誘拐犯め、よくもお嬢様を・・・!」とさらに声を荒げて来た。


 いや、どっからどう見ても教師だってば!


 それにしてもツッコミを心の中で入れている場合では無い、俺はすぐにハーレーのエンジンを吹かして右脚を軸にして素早くターンすると「あーばよ〜、とっつあーん!」とどこかで聞いたことのあるセリフを吐きながら来た道を引き返していった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る