4,体育の時間

 6時間目の体育では、女性教師の補佐として重い物は俺が運んだりした。


 体育担当女性教師の名前は雲堂うんどう理彩りさという。年齢は24歳でまぁ、分かるように擬音を豊富に使えばボンッ!キュッ!ボンッ!という感じだ。


 そんな彼女が体育の授業中にとびきり驚いていたのは、想定29キログラムのサッカーゴールを俺1人で移動していたことだろう。


 何せ、俺の実家は農家だ。米袋1キログラムを持った人なら分かるが、アレを俺の家では4つ一気に運ぶ。それに防衛大学では1回だけ全身におもりをつけて生活していた。総重量はおよそ30キログラム程だが、コレの成果は海兵隊編入時に役に立った。25キログラム程の装備で長時間走らされた時は、周りが遅くなっている中俺だけが平気に走って来たのだから上官に「貴様だけ、おもり(5キログラムの土嚢どのう)を追加だ!」と言われた。


 白線で描いたコートの両端にゴールを置くと、全員から心配された。


「だ、大丈夫ですか?」


「「せんせー、凄すぎる・・・」」


「ん?ああ。 慣れているので、気にしないで下さい」


 ニコッと微笑み返して、補佐を続けた。


 その日の内容は、女子サッカーだった。


 1人少ないという事で、俺も加わってのサッカーだったが手を抜いてあげると怒られた。


「せんせー、手ぇ抜いてる〜」


 知らないぞ?大人気ないとか言っても・・・。


 手を抜いている疑惑が出て来たので、少しだけ本気を出してあげた。


 この時俺はキーパーをしていたが、素手で飛んできたボールを片手でキャッチすると、受け止めた反動をそのまま逆に利用しながら、相手陣地にあるサッカーゴール近くまで投げ返した。


 この荒技には流石に雲堂先生もやばいと感じたのか、「た、高宮先生? そ、その・・・。限度という物が・・・」と授業終わりに声をかけて来た。


 俺から言わせてもらえるなら、本気を出して欲しいと言った生徒のせいだと思うが・・・。


 体育が終わると俺は更衣室で教員服に着替えて、廊下に出た。すると、目の前に瞳をハートにした女生徒達の姿があった。


「ん?」


「あ、いいえ。 な、なんでもないです」


 瞳をハートにした女生徒達が顔を真っ赤にして、消えて行った。


 そういえば、肌寒い。


 腹を見るとカッターシャツではなく、6つに割れた腹筋が露出していた。


「あ、忘れてた」


 更衣室に戻りカッターシャツを着て再び廊下に出ると、そのまま職員室に戻った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る