エピローグ

 それからいくつもの季節が過ぎ去りました。


 ここは、村の外れにある小さな助産院です。そこには、祖母から跡を継いだ若い娘がおりました。

 彼女は、今まさに出産を迎えようとしている一人の妊婦のお腹を撫でながら、優しく語りかけます。


「もう少し、もう少しですよ」


 綺麗な銀髪を持つ妊婦は、陣痛の波がやって来るたびに苦しそうな声を上げました。

 その手を、黒髪の男性が握りしめていました。彼は心配そうに妻の顔を覗き込んでいます。

 その傍らには、二本の大鎌が立て掛けてありました。


 彼ら夫婦は死神だといいます。助産師の娘は初めこそ驚きましたが、祖母から「どんな者でも、命の尊さに変わりは無い」と聞かされていたので、すぐに受け入れました。

 こうしているのを見ると、人間と何ら変わりありません。彼らは間違いなく、この世界に生きている存在なのですから。


 部屋に産声が響き渡り、二人の喜びに満ち溢れた歓声が上がるのは、それから間もなくのことでした──。

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人に育てられた死神 夜桜くらは @corone2121

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