第87話 新しい武器
その日から毎日狩りを行い、セーラちゃんはますます大剣に慣れていった。
王城での生活も楽で、色々美味しい食事を用意してくれたり、フェン先生の看病もよくしてくれた。
そして十日が経過した。
「フェン先生!」
「おう。ユウマ。迷惑をかけたな」
「いいえ。フェン先生のおかげでいまのみんなが生きていますから」
フェン先生が手を前に出したので握り返す。
元気なフェン先生をまた見ることができて本当に嬉しい。
「一回り強くなったな」
「ありがとうございます。フレイムタイラントと戦ったおかげかも知れません」
「Sランク魔物だからな」
「あはは……あれは運が良かったです。魔導砲のおかげです」
「それがあったとしてもだ」
フェン先生の大きな手が僕の頭を優しく撫でてくれる。僕よりも一回り身長が高いフェン先生だからこそできることだ。
「久しぶりに俺も体を慣らすか」
「今日新しい武器をもらうので、そのあと一緒に狩りに出かけませんか? Bランク魔物がいる森があるんです」
「グランドベアか?」
「そうです」
ここら辺で一番強い魔物と言えばグランドベアだと受付嬢が言っていた。Aランク魔物が近くに生息しないからだ。
「久しぶりに熊狩りだな」
セーラちゃんたちと合流して鍛冶屋に向かった。
◆
「ほお。これはまた久しぶりの顔だな」
鍛冶屋に入るとすぐにジアリールさんが嬉しそうな笑みを浮かべた。
「久しぶりです。ジアリール師」
やっぱりフェン先生とも知り合いみたいだ。
「教皇様から聞いたぞ? あれを使わなかったらしいな」
「まあ……あれは人に向けるものじゃありませんから」
「相変わらずだな。それなら色々困っているだろうと思って用意しておいたぞ」
と言いながらジアリールさんがフェン先生の前に縦長の箱を一つ取り出した。
「まさか!?」
箱をゆっくりとあけると、そこには綺麗な装飾が付けられた一本のロングソードが入っていた。
「師!? 本当にこれを俺に預けていいんですか!?」
「……なあ。フェン。これはお前にしか託せない。どうか教皇様を守って欲しいんだ。彼女は我々の――――希望だから」
「っ…………わかりました。預からせてもらいます――――――大樹の剣。必ずやプリムを守り抜きます」
ジアリールさんは笑顔のまま首を縦に振った。
「今日の主役を無視する形になってしまったな。悪いな」
そう話すジアリールさんに僕達は全力で首を横に振る。
「さて、まずはエルフの嬢ちゃんのだな。ほれよ」
「っ!?」
アリサさんの前に出された箱の中には、美しい翡翠色の弓が横たわっていた。
「翡翠玉の弓だ」
ゆっくりと手にとったアリサさんの顔が驚きで強張っていく。
「でもそれだけじゃない?」
「ふふっ。さすがはエルフ族だ。翡翠玉を繋いでいるそのフレームは――――炎竜の骨で作られている。間違いなく大陸でも最高峰の一本だ」
「炎竜の骨!?」
アリサさんが僕を見つめる。
あはは……。
「次はもう一人の嬢ちゃんだ。ほれ」
大きな剣――――と思った矢先、セーラちゃんの前に出された箱は思いのほかずっと小さい。
箱の中に入っていたのは、赤色が綺麗に調和された剣の
「持ってみな。上向きでな」
セーラちゃんが頷いてから右手を伸ばして剣の柄を握りしめる。
胸元に持ってきて両手で握り閉めるとジアリールさんから「剣先を想像してみな」と話すとセーラちゃんが集中し始めた。
次の瞬間、何もなかった刀身部分から赤い光と共に淡い赤色を帯びた刀身が現れた。
「わあ!?」
「その剣の間合いを忘れずにな」
「不思議な剣ですね。暖かさも感じるし、強い力も感じる!」
「紅蓮大剣。貴重な火竜の翼の骨と心臓を使った最高峰の剣だ。世界でも一本しかない唯一無二の剣だ」
「火竜の心臓!?」
今度はセーラちゃんが驚いた顔で僕を見つめる。
あはは……。
アリサさんとセーラちゃんが僕に押しかけてきた。
「「どういうこと!?」」
「あはは…………火竜の素材って貴重らしいから、ジアリールさんに色々渡して二人の武器に使って欲しいとお願いしていたんだ」
「気づかなかった……ユウくんと離れたつもりはなかったけど……」
「そうね。私も全然気づかなかったわ」
素材が欲しい訳ではないし、二人のためになるならこれが一番いい使い道だと思ったから。
「ごほん。とにかく、最後は――――これだ」
ジアリールさんが僕用の箱を渡してくれた。
そこに入っていたのは――――
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